【猫と暮らす日々】後編:「こまおがいるから早く家に帰りたい」と思うようになりました(OZ VINTAGE 鈴木里美さん)
特集【猫と暮らす日々】では、元保護猫のこまおさんと暮らすヴィンテージショップ「OZ VINTAGE(オズ ヴィンテージ)」のオーナー兼バイヤー・鈴木里美(すずき・さとみ)さん宅を訪ね、猫との生活についてお聞きしています。
前編では、猫を飼うことになったきっかけ、こまおさんを迎え入れた当初のことを中心に伺いました。
続く後編では、猫との生活で生じた仕事やパートナーとの関係性の変化、これからについてなどをお聞きします。
前編から読む
抱っこは苦手だけれど慣れてきました。
鈴木さんが元保護猫のこまおさんを引き取ったのは、4年前。すでに4歳の成猫でした。
鈴木さん:
「繁殖用の猫として、おそらくずっとケージの中で生きてきたんだと思います。人間のことは怖がらないけれど、慣れるまではやはり時間がかかりました。
2階の階段をのぼって寝室に上がってくるのも数か月、ソファーに乗るのも数か月。最初の1年は、段階的にこの家に慣れてくれた感じです。
でも、臆病ですが好奇心もあって、けっこう気が強い子だったので、初めての遊びやおやつなど、とにかく毎日いろいろ試して、こまおが好きなことを見つけていきました」
鈴木さん:
「この4年間で、日毎に慣れてきたように感じています。抱っこは嫌がるけれど、ここ1年くらいで、またぐっと甘えてくれるようになりました。
最近はクローゼットの中がお気に入りでよく入っているんですけれど、私が1日在宅で仕事をしているときは、30分ごとにダミ声で叫びながら出てきて、ゴロンとするんですね。『なでろ』という主張で、ちょっと忙しかったりして無視していると、尻尾をパターン、パターンで床に打ち付けてしつこく要求してきます。
なでてあげると気が済むみたいで、またクローゼットに入っていくというのを1日に何度もやっています」
なでて、と自分から寄ってきたくせに、なでるとパンチされることもあるのだとか。
鈴木さん:
「たまにすごい剣幕で猫パンチしてくることがあるので、こちらから無理強いしてなでたり、抱っこしたりはしないですね。
でも、去年はできなかったことができるようになるのは、うれしいです。一緒に寝てくれるようになったことで、こまおも寝室で過ごしやすいように、ベッドも大きなものに変えました。完全に猫中心の生活です」
働き詰めを顧みるように。
仕事柄、海外への出張も多く、動物との暮らしを躊躇する理由ともなっていましたが……。
鈴木さん:
「2018年に実店舗をオープンしてからというもの、とにかく休みなく、夢中で仕事をしてきました。
コロナ禍で店を閉めなければならなかったときは、これまでしてこなかった通信販売を始め、慣れない業務でさらに労働時間が増えたり、それに伴う新たな負担でストレスも抱えていましたが、不安や危機感から倒れるまで働いてしまっていました」
鈴木さん:
「仕事って、やろうと思えばいくらでもやれるじゃないですか。もともと大好きで楽しいことですし、やればやるほど良くなりますし。
朝から夜中まで働いても最初は動けていたんですけれど、何年か経つと、体が思うように動かなくなってしまって。見かねた彼や友人からの助言もあり、そこで初めて立ち止まることを考えました。
そしてこまおを迎え入れたんです。
結果的にブレーキになってくれたんですよね。それまでは家に早く帰る理由も特になかったんですけれど、こまおがいるから何を置いても早く帰りたいと思うようになりました。
以前は見えないなにかに置いていかれないように、自分にがっかりしないように、無理していたところがあったかもしれません。家でこまおとの大事な時間を持つことで、やりすぎてしまう性分を脱せたというか、改められた気がします」
本来の自分を取り戻した感じがありました。
それまで持つことの少なかった穏やかな時間をこまおさんのおかげで持つことができ、パートナーとの関係にも変化が。
鈴木さん:
「家では圧倒的に喧嘩をしなくなりましたね。
以前はやっぱり私に余裕がなくて、相手に厳しくなったり、イライラをぶつけてしまっていたんだと思います。
逆に、彼はあまり感情を表に出さず、ストレスがあってもわりと自分の内側で消化するタイプ。お互い、長く暮らしていると日々に追われがちで、うっかり優しさが不足していくことってあると思うんです。
こまおが来てくれたことによって、私だけでは与えてあげられない癒しや心の栄養、幸福感みたいなものが、じんわりあるんじゃないかと。彼がそういう時間を持てたことはすごく喜ばしいですし、私にとっても同じで、いいバランスになったのかなと思っています」
鈴木さん:
「私も無理していた部分がなくなって、すごくナチュラルに過ごせていて、本来こういう感じだったな、と自分を取り戻した感じがあります。
仕事もより楽しく、愛情を持っています。今の私たちは、会話の中心もこまおです。私が買い付けに行っている間は毎日、こまおの写真を送ってもらうんですけれど、緊張がほぐれたりもうひと頑張りしようと思えます」
インテリアも掃除も猫のため。
インテリアの素敵さにファンも多い鈴木さん。猫との暮らしで、変わったことは?
鈴木さん:
「家具で爪研ぎはしないんですけれど、唯一、ラグではするんです。それも、こまおのお気に入りはIKEAのラグ。
家にあるもののほとんどはヴィンテージなんですけれど、メインに敷いたラグはIKEAの気軽なものです。こまおがこれでだけ思うがままに爪とぎをするので、古くなったときは同じものに買い替えましたし、たぶんこれからも定番になるんだろうなと」
鈴木さん:
「それからカーテンをブラインドに変えました。布ものは毛がつきやすいので。
アレルギーがあるので、掃除もマストです。毎朝、掃除機をかけて、拭き掃除もしています。
毛を掃除するグッズは手の届く範囲にいくつも置いています。黒い服もあんまり着なくなりましたが、代わりにこまおと同じ茶色い服が増えました。それから以前はよく飾っていたのですが、猫にとって危険なので生花は滅多に生けなくなりました。アロマの類も同様です」
こまおさんがやってきたことで、掃除だけではなく、片付けもきちんとするようになったそう。
鈴木さん:
「いたずらをするタイプではないので、家に置いてあるものなどはほとんど変わっていないんですが、以前はもっと雑然としていました。
こまおの写真をよく撮ってプリントアウトもするんですけれど、すごく可愛く撮れたのに、背景が散らかっていたり、よけいなものが写っていたり。そういう見えたくないものをきちんと片付けるようになりました。
家が片付いているほうが、こまおも居心地が良さそうな気がします」
のびのびと猫生を全うさせてあげたい。
4歳で迎え入れたこまおさんも、8歳。猫で言えば、だんだんとシニアと呼ばれる年齢に近づいてきています。
鈴木さん:
「インスタグラムでフォローしていた子たちの不調や悲しいお知らせを見るたびに、飼い主さんの気持ちを想像し、自分たちのことのように胸が痛みます。
こまおは今のところ大きな問題はありませんが、もともととてもか弱い生き物です。決して人ごとではないと思いつつ、ずっとずっと先であってほしいとも思います」
鈴木さん:
「こまおは、私にとって家族であり宝ものです。もちろん人間とは違いますし、生き物としてリスペクトして、なるべくありのままに生きてほしい。
これから先もできる限り寄り添いつつ、あくまでも猫という生き物に対して何が最善なのか、飼い主として冷静でありたいと思っていますし、後悔しないように、一緒にいる時間をどう過ごすのかということを大事にしていきたいです」
大人の保護猫を迎え入れるという選択をした鈴木さんですが、こまおさんのことが、本当にかわいくて仕方がない様子です。
鈴木さん:
「赤ちゃんのときの写真があったらよかったな、と思うこともありますけれど、私のインスタグラムなどを通じて、保護猫に興味を持ったと言ってもらえるとうれしいんです。
かつてのこまおのように不自由な生活をしている子がいることを知ってもらい、ペットショップやブリーダーからだけではなく、保護猫が選択肢のひとつになったらと願っています」
動物と暮らすということは、笑顔が増えたり、特別な栄養が得られたりするもの。もちろん良いことばかりではないけれど、命を全うさせてあげるためにできることをする日々は、自分を成長させてくれるし、心の豊かさにつながっているのだと、改めて感じました。
(おわり)
【写真】井手勇貴
もくじ

鈴木 里美
OZ VINTAGE オーナー。都内のヴィンテージショップで10年以上勤務したのち、出店型のショップ「FUROL」をスタート。2018年に渋谷にて「OZ VINTAGE」をオープン。買い付けから接客までひとりで行っている。
Instagram:
@oz.vintage
Instagram:
@komakomakomao
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