【愛着が宿る革】第1話:自分に合った、革を探しに出かけよう。
編集スタッフ 齋藤
20代も半ばになった頃、そろそろ私も「ずっと愛せるものを持ちたい」と思うようになりました。
流行でも気まぐれでもなく、自分が本当に良いと思えるものを持っている大人に、憧れがあったのかもしれません。
「一生もの」という言葉で思い浮かんだのが、革製品。
スタッフにも話を聞いてみたところ、社会人になる時に買った名刺入れに、30代の入り口で買った靴など、みんな「特別」な想い入れを持って革を手にしているようでした。
今回はそんな「永く共に過ごす喜びをくれる」革を、もっと身近に感じられる特集を全3話でお届け。
▲お店の奥に進むにつれて、少し野性味を感じる、けれども繊細な革の香りがふわり。
伺ったのは、東京都谷中にお店と工房を構える革靴屋「そのみつ」です。
パターンと好みの革を選んでオーダーをし、それから足のサイズを測り、型を作った上で職人が手作りする、というスタイルをとっています。
クラシコムのスタッフにもファンのいる「そのみつ」。その丁寧な姿勢に、私たちが革に感じる「一生もの」というイメージを、強く感じることができました。
革は様々な種類があるのも魅力のひとつですが、だからこそどれにすれば良いのか悩みもの。永く使いたいからこそ、自分に合ったものをしっかり選びたいですよね。
そこで第1話でお送りするのは、革の選び方。
お話を伺ったのは「そのみつ」に勤めて6年という、常木(つねき)さん。
常木さん:
「シーズンで入れ替わってしまうのですが、色違いも含め常に20〜30種類くらい取り扱っています。動物は主に、牛、馬、羊、ヤギなどですね」
さて、そんなにもたくさんの革から、一体どうやって自分に合ったものを選べばいいのでしょうか。
しっとり、すべすべ。肌触りで選ぶ
▲内側も本革というそのみつさんの靴。しっとりとしていて、とても気持ちが良かったです。
ついついデザインで選んでしまいがちですが、靴も鞄もお財布も、肌にふれるものでもあります。そのため、触り心地で選んでみても良いかもしれません。
常木さん:
「革の中でも羊や子牛、ヤギのものはとてもやわらかく、肌馴染みが良いです。そのためパンプスなど素肌で触れるものにはおすすめ。
その反面、牛はしっかりしています。馬も羊などに比べればコシがありますが、牛よりもしなやかさを感じられる革です」
実際に私もふれてみました。
羊の革はくったりやわらかく、素肌に吸い付くような印象。表面もしっとりしています。常木さんが「素肌にはおすすめ」と言っていたのにも納得です。
それに対し牛革はコシがあるため、握った時に楽しい手応えがありました。表面もすべすべとしています。ぎゅっとした力強さを楽しみたいなら、牛革も良さそう。
繊細だったり、マットだったり。表情で選ぶ
常木さん:
「どの革を選ぶかみなさま悩みますが、見た目で選ぶ方も多いですよ。種類によって表情も異なります。例えば羊や子牛はキメが細かいので、繊細な印象。
そして牛革はしっかりとした中にもほんのりと艶がありますね。
馬の革はマットで、落ち着いた風合いです。(ちなみに『コードバン』という馬の臀部を加工したものは、つやつやだそうです)
常木さん:
「それから革の内側を使えば、また雰囲気が変わります。いわゆる『スウェード』ですね。起毛しているため艶はありませんが、やわらかく上品な印象を楽しめます」
扱いが不安なら、丈夫さ重視
デリケートなイメージのある革。繊細な表情をしているものも魅力だけれど、上手に扱えるかな?と、ちょっと不安になってしまうことも。そんな時は丈夫さで選んでみるのもおすすめです。
常木さん:
「牛や馬、ヤギのものは、丈夫なので扱いやすいと思います。
その中でも牛と馬は硬さもあるので、ブーツなどガシガシ履きこみたいものにおすすめの素材。
そしてヤギは薄くてやわらかですが、表面に傷がつきにくく、強度もあります。牛と馬に比べて軽いのも特徴です。
ちなみに初めての方が手に取ることが多いのは、牛革。丈夫で安心ですし、使い込むうちに艶が現れやすいので、経年変化も楽しむことができますよ」
「一生もの」というけれど。永く使うにはどうすればいいの?
▲8年目という牛革のブーツ。つやつやとした光沢が美しく、魅力的でした。
常木さん:
「どれぐらいの年月を使えるかは、持つ人の扱い方次第なんです。例えば雨で濡らしてしまえば堅くなってしまいますし、カビも一度生えると完全には落とすことができません。
そのため対処はしっかりすることをおすすめします。
でも革製品が使えなくなるのは、糸がほころんだり、ソールが壊れてしまったりと、革自体ではなく部品がダメになってしまう時が多いと思うんです。
革へのダメージが少ないのであれば、修理ができます。そのため大切に使えば、一生ものですよ」
常木さんは学生の時に、はじめて革靴を買ったといいます。その靴を今でも大切にしているそう。
常木さん:
「長年使うことによって、自分だけの風合いが出てきたことに、大切に思える一番の理由があると思います。
様子を見て、メンテナンスをして、そうした日々が味わいとなって現れる。愛着が育つということが、10年という長い年月を経てようやくわかってきたんです」
▲常木さんはこの日も「そのみつ」の靴を履いていました。
革の経年変化に憧れて、私も何年か前にキーケースを購入しました。
私なりに日々気持ちを込めて接したつもりですが、傷もあるし、擦れもある。けれど2年くらい経ったのちに、単なる「きれい」とは違う、自分なりの「味わい」が現れてきたように思います。
本当のお気に入りって、最初からあるものではなく、育つものなのかもしれない、この経験は私にそんな気付きをくれました。
長い年月を一緒に過ごすために、見て、ふれて、確かめて、自分に本当に合っているものかどうか、じっくり時間をかけて選んでみても楽しいかもしれません。
続く第2話では「そのみつ」の代表であり、靴職人の園田(そのだ)さんを取材。ものづくりに対する深い想いを聞きました。
ものを生み出す背景を知ることで、また一段と手にしたものに想いが宿るように思います。
20年以上も革とともに過ごす園田さんのこだわりとは、一体どのようなものなのでしょうか。
(つづく)
【写真】木村文平
もくじ
そのみつ
東京都谷中に店舗と工房を構える革靴屋。(工房は外からの見学のみ可能)多彩なパターンと好みの革の組み合わせを選び、足を採寸してからオーダー。約4〜6ヶ月の期間をかけ、職人がひとつひとつ丁寧な手作業で制作してくれる。
http://www.sonomitsu.com/
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