【ノルウェー日記】わたしが移住を決めたとき。ふたつに分かれた、父と母の反応。
ライター 桒原さやか
「海外に移住しようと思っているんだ……」
夫がスウェーデン人ということもあり、いつかは海外に住む可能性があるかもしれないなあと、漠然と思っていました。でも、その時がこんなに早く、そして移住先がノルウェーだとは、一年前までは想像もしていませんでした。
それが一度の旅行をきっかけに、移住を決めてしまったのですから、まわりは本当に驚いただろうなあと思います。
とくに両親には、たくさん心配をかけました。
びっくりするくらい、アッサリしている父。
実家から離れて暮らしていたので、移住のことを両親にはじめて話したのは電話でした。
旅行で訪れた町にひとめぼれしたこと。いつ日本に戻ってくるか決めていないこと。仕事のことやこれからのことを、ひとつずつ説明しました。すべて話をした後、父からの第一声は、驚くくらいアッサリしていました。
「おお、そうか。ノルウェーは良いところらしいな。いつから行くんだ?」
娘が遠くに行っちゃうんだよ?いいの?と、思わず聞き返してしまったほど。父が言うには、好奇心旺盛なわたしが、スウェーデン人と結婚した時点で、海外にいつか住むだろうと覚悟していたのだそうです。
母に話したら、だんだん悲しくなってきた。
移住のことを口にした瞬間、空気がピリッと張りつめたのが、電話越しでもわかりました。寂しいような、なんだか怒っているような。母と話しているうちに、急にいろんなことが現実味を帯びてきました。
移住するということは、親とも友人とも離れてしまうこと。仕事だって一から探さないといけないこと。言葉もうまく話せないわたしは、そもそも海外でやっていけるのだろうか。
移住するべきか答えが出ないまま、ずっと考えていて、その日はよく眠れませんでした。
母からもらった、ゴーゴーゴー!!!
次の日、今度は母から電話がかかってきました。怒っているのかなあと、ドキドキしながら電話をとりました。
「お父さんはね、ゴーなんだって。それでね、お母さんもゴーだから!ゴーゴーゴーだよ!!」
母は一晩考えて、そんな答えを出してくれました。「いいと思ったことをやってみたら?心配してもしょうがないし、ダメだったら帰っておいでよ」と言ってくれたのです。
母のその言葉を聞いて、移住に向けての気持ちが固まりました。
今思い返しても、母が背中を押してくれなかったら、もしかしたらノルウェーに来ていなかったかもしれません。それくらい、母の言葉は大きかったです。
両親にノルウェーに来ないの?と聞くと、父は「行く行く!」と気軽なノリでこたえてきます。かわって母は「ネコがいるから、心配だしなあ。また来年かな」という返事。
照れ隠しなのか、やたら陽気な父と、心配性な母。このバランスが、なんだか二人らしいなあと思います。
いつか両親には、トロムソの町に来てほしいです。
わたしが住んでみたいと思った町を、見てもらいたいなあ。
実家のねこ、みゅーちゃん。母からときどき写真が送られてきます。
ライター 桑原さやか
『北欧、暮らしの道具店』で、お客さま係として6年間働いていた元スタッフ。旅が好きで、冬の旅行で訪れたノルウェーの北極圏にある町、トロムソに一目惚れ。スウェーデン人の夫と共に、2016年6月より移住をはじめている。
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