【懐かしいあの本この本】ノンタン、ピッピ、ねずみくん。子供に贈りたい、あのころ勇気づけられた本。
編集スタッフ 青木
子どもの頃に読んだ本のこと、覚えていますか?
タイトルを聞いただけでも、その頃の情景が浮かび、懐かしい気持がブワッと溢れてしまう。そんな本がだれにも一冊はあるのではないでしょうか。
この特集では、当店のスタッフが子供の頃に読んでた懐かしい本と、それにまつわるエピソードをご紹介していきます。
綴られているのはスタッフそれぞれのエピソードですが、みなさんのエピソードと重なる部分もあるかもしれません。
01. デザイナーほほかべ
『ねずみくんのチョッキ』
「小さくたっていいじゃないか」と思えた。
ほほかべ:
「この絵本は4、5歳くらいの頃、母と一緒に近所の図書館に行ったときによく読んでいました。
子どもの頃から背が低く、そのことに幼いながらもちょっとしたコンプレックスを感じていた私は、小さなねずみくんを見て自分のようだと感じていました。(ねずみ年生まれというのも一因かも。そういえば “トムとジェリー” も大好きで、やはりねずみのジェリーに親近感を抱いていました。)
ねずみくんは小さいけれど、いつだって自信たっぷり。大きな動物たちとも仲良しです。お気に入りのチョッキもサイズが合わないのに貸してあげたり、気持ちはとっても大きいんです。
そんなねずみくんの姿は『小さくたっていいじゃないか』という気分にしてくれました。
お話の終盤、伸びたチョッキを引きずって歩く姿はちょっぴり悲しい気持ちになりますが、最後のページではそのチョッキをブランコにして象と楽しく遊ぶ姿が!
その様子がとても楽しそうで『チョッキを貸してあげてよかったね』と思わず声をかけたくなるんです。
今回このコメントを書くため、久しぶりに読み直したのですが、大人になった今でもシンプルでクオリティの高い絵だな〜と思いました。動物たちの表情もかわいくてたまりません〜」
02. 編集スタッフ二本柳
『長くつ下のピッピ』
ピッピが見せてくれた新しい世界。
「ピッピと出合ったのは、小学低学年くらいでしょうか。仲の良かった友達の愛読書でした。
表紙にうつった女の子は左右で柄ちがいの長靴下をはいて、鼻は小さなジャガイモみたい。“美少女” というイメージからは程遠いのに、すごく憧れたんです。ピッピみたいになりたい! と思って、ファッションを真似して遊びました。
当時、私はものすごく気が弱い子供でした。今の私を知っている人たちからは 『うそでしょ〜』 と突っ込みが入りそうですが……(笑)声が小さいことが理由で先生に怒られていたくらいでした。
だからこそ、破天荒で力持ちのピッピの存在は 『こういう女の子もいるんだ』 というような、新しい世界を見せてくれたんですね。
たとえばピッピは平気でうそをつきます。それを隣の家に住むトミーから指摘されても 『そうよ、そのとおりよ。わたし、うそついたの』 と言い返し、そうと思えば平然と 『うそつくのは、とてもいけないわ』 なんて意見する。そしてその直後には 『わたし、それをときどきわすれちゃうの』 ですって。(岩波少年文庫『長くつ下のピッピ』 p.20)
学校では道徳の教科書を読んで、『うそはダメ』 と耳にたこができるほど聞かされてきた頃ですから、ピッピの言動は予想外すぎて爽快なほどでした。
子供の頃の社会は、今思うと大人のそれよりずっと小さくて、見えている世界も狭かった。だからこそ、時にはこのくらいお行儀の悪い? 女の子との出合いが勇気をくれたのかもしれません。
私もいつか母親になることがあれば、きっと 『お行儀よくしなさいよ!』 なんて言っているでしょうから、こっそり子供部屋にピッピの本でも置いておこうと思います」
03. 編集スタッフ塩川
『ノンタン』
待合室の片隅で少し泣きました。
塩川:
「ノンタンシリーズが大好きで、よく母に読んでもらっていました。お話自体も好きなのですが、たんじょうび編の見開きにある “ノンタンクッキー” を作って欲しくて、よくねだっていた記憶があります。
数年前になりますが、風邪をひいた時ときのこと。病院の待合室でノンタンに目が止まり、懐かしくなって手に取りました。
ストーリーと一緒に思い出したのは、母の絵本の読み方です。
目で読んでいるはずなのに、頭の中で絵本を読んでいる母の声を思い出して、風邪をひいていたこともあり、待合室の片隅で少し泣きました。
『つまんないの』としょげているシーンでは、ノンタンの気持ちに感情移入しすぎて、今でもしょんぼりしてしまいます。ハッピーエンドでほんとに良かったね。ノンタン!」
*****
主人公に共感しながら本を読んでいるうちに、いつしか自分自身の物語になっていくような、そんな感覚になることがありました。
だからお話の最後がハッピーエンドだったり、主人公に対して「よかったね〜」と思うとき、なぜだか自分の背中をポンポンとなでられているような気分になるんですよね。
スタッフそれぞれのエピソードを読んでいたら、久しぶりにその感覚を思い出し、あたたかい気持になりました。
(つづく)
もくじ
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