【間取り図鑑】第1話:築50年の平家を自分好みにリノベーション。こだわりのキッチンを大公開
編集スタッフ 岡本
「この部屋に住んだら、どんな暮らしになるだろう?」
部屋の間取り図を見ていると、生活のあらゆるシーンが思い浮かんで、いつの間にかワクワクしている自分がいます。
白黒のたった一枚の紙から生まれる想像は、ときに時間を忘れるほど私たちを夢中にさせ、思わぬ広がりを見せることも。
本日から始まる「暮らし家さんの、間取り図鑑」は、そんな不思議な力を持つ間取り図と、実際のインテリアを重ねることで暮らしを紐解く、新連載です。
第1弾にご登場いただくのは、手づくりパンの販売をされている「北川ベーカリー」の北川桂(きたがわかつら)さん。
築50年の平家をリノベーションし、夫と5歳になる娘の3人で暮らしています。
東京・調布市にある現在のお宅に住み始めたのは、8年前。
物件探しの段階から「古い家を見たい」と不動産屋へリクエストし、一軒目で出会ったのがこちらの平家だったそう。
今回の特集では、そんな北川さんの間取り図を「キッチン」、「リビングダイニング」、「玄関横のマルチスペース」に分けて全3話でお届けします。
キッチン編
—8畳のひろびろ空間。有効活用するには?—
第1話の主役は、一番のお気に入りスペースだと話すキッチン。
家族の健康を支える場所、そしておいしいパンが生まれる場所に込められた、こだわりをお聞きしました。
シンクの隣に洗濯機を発見。これはなぜ?
中央にあるステンレス作業台の奥に、洗濯機があります。そして写真左側にあるのが、冷蔵庫。シンクまではすこし距離があるようです。
北川さん:
「キッチンは8畳と、この家のなかで広いスペースを占める場所。建築家さんと何度も相談して、一番こだわりました。
その結果、『ふつう』とはちょっと違うかもしれないけど、我が家らしいキッチンになったと思います」
そう話す理由は、ふたつの家電の配置にありました。ひとつめは、部屋の隅、シンクと離れた場所にある冷蔵庫。
家事動線を考えたよくある配置として、冷蔵庫はシンクのすぐそばにあるイメージです。
でも、その場所にはキッチンではまず見かけない洗濯機がありました。どうしてこのような配置になったのでしょうか?
北川さん:
「キッチンは広いのですが、我が家は洗面スペースが狭いんです。だから、洗濯機を置くスペースに悩んでしまって。
でも間取りを見ると分かるように、お風呂場に行くときには必ずキッチンを通ることになるんですよね。高さも幅もぴったりだったので、キッチンワークトップの延長線上に置きました。
洗濯機は洗面所に……という先入観がありましたが、試してみたら想像以上に便利。
料理と洗濯というふたつの家事が同じ空間でできるので、いろいろなことを『ついで』に済ませられるんです。
ランドリーバスケットを設けず、脱いだ服は直接洗濯機へ。家族にとっても分かりやすい動線になってるみたいですね」
北川さん:
「冷蔵庫はシンクと離れたキッチンの隅に。
遠いと料理を作るときに面倒じゃない?と思われますが、部屋の真ん中あたりに大きめの作業台を置いて、必要な食材を一度に取り出しておくんです。
そうすれば、冷蔵庫と調理場を行き来する回数が少なくて済むうえに、材料が並んだ状態なのでスムーズに料理を始められます。
『ふつう』に当てはめない方がラクに過ごせることもあるんだと、柔軟に考えるきっかけになりました」
食器棚が見当たらないのですが……。
食器集めが趣味のひとつと話す北川さん。特にぽってりと厚みがあり、持つと安心感のある民芸の器が好きだそうです。
でも、食器棚は家のどこにも見当たりません。
聞くと、2つの大きなステンレスワゴンが、食器棚も兼ねているのだとか。
左にあるのが少し小さめのもので、右にあるのが、二段式の棚がついた大きめなワゴン。
北川さん:
「仕事柄、自宅でもパンをこねるのでステンレスの作業台は必須。
もともと持っていた大きな作業台に加えて、ひと回り小さいサイズをいただいたので、食器棚を置くスペースがなくなってしまって。
作業台下の棚を食器や食材の収納に使っています」
冷蔵庫から出した食材を置く、パンをこねる、食器を収納する。
一台三役も担う、万能なステンレスワゴンは、意外にもレトロな空間に自然とマッチしていました。
大きい作業台はコンロのすぐ後ろに配置されているので、下ごしらえを済ませた食材を火にかけるのもスムーズですね。
北川さん:
「パン作りを生業にしていますが、我が家のご飯は和食が中心。
季節の野菜や家にある材料を使うようにしているので定番メニューがあるわけではないけれど、家族の健康を支えられる、そんなご飯作りを心がけています」
たとえば私がこの間取りを初めて見たとしたら、単純に「洗濯機が置けない洗面スペース」「シンクと冷蔵庫が遠いキッチン」と捉えて、ついがっかりしてしまいそう。
でもアイデア次第で、“よくあるカタチ”よりも、ずっと自分にフィットした“自分仕様”に変えられる。
この間取りだからこそできる配置をしたことが、結果的に暮らしやすさに繋がっているのだと分かりました。
続く第2話では、そんな北川さんならではの工夫がつまったリビングダイニングをご紹介します。お楽しみに!
(つづく)
【写真】木村文平
もくじ
北川桂
福島県出身、夫と娘の3人暮らし。約5年間、東京・国立市にある「foodmood(フードムード)」の初期スタッフとして、お菓子づくりや接客に従事。現在は、自宅(予約のみ)やイベントなどで、手作りパンを販売している。くわしい情報は、Twitter(@kitapan)でご確認いただけます。
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