【フィットする暮らし】第4話:暮らしと社会。どちらも「自分ごと」だから。
編集スタッフ 松浦
シリーズ「フィットする暮らしのつくり方」は、自分らしく心地いい暮らしをつくっている方を取材し、暮らしのヒントをお届けする読みものです。 vol.16 となる今回は、デンマーク出身の著述家、イェンス・イェンセンさんのお宅に伺っています。
第3話でイェンセンさんは、心地よい暮らしのためには「自分はどう暮らしたいのか」と考え続けることが大切だと語っています。それは 暮らしを「自分ごと」として考え、向き合うことでした。
最終話では、そんな心地いい暮らしのために、私たちが今日からできることについてイェンセンさんと考えます。
「隣の芝は青い」でも自分たちで青くしていくことはできるはず
教育や育児、医療など福祉が充実し、働き方でも世界から注目を集めている北欧の国々。2016年に国連が行った幸福度調査でも、北欧5カ国はトップ10入りし、中でも「幸福の国」とも言われる、イェンセンさんの故郷・デンマークは第一位に輝きました。
制度という部分で大きな違いのある、日本と北欧。「フィットする暮らしのつくり方」最終話は、これまでのイェンセンさんのお話を受けて、デンマークからみる日本の暮らしを中心にお話を伺っていきます。
簡単なことじゃないけど、空気を変えること
イェンセンさん:
「確かに、北欧に比べて日本の制度は整っていないかもしれない。でも、実は皆さんが思っている以上に日本も悪くないじゃないかと、僕は思っているんですよ。例えば育児休暇は、デンマーク以上に制度としては整っているようにすら感じることがあります。
ただ、『長期間休むと、会社に迷惑がかかってしまう』、『先輩もほとんど休んでなかったし、私も早く復帰しよう』という空気はあるかもしれませんね。『休まない方が良さそう』という、目に見えない空気が、制度を使いにくくしてしまっているように思えます。
この目に見えない空気を変えることができるのは、それをなんとなく作ってしまっているのは僕たち自身だと思うんです」
イェンセンさん:
「とはいえ、それは簡単ではないですね。僕もそうでしたが、何かを突然はじめるよりも、“変わろうとしている人”という印象を周りに伝えるのは大事かもしれません」
文化の全く異なる日本でも、その環境に文句をいうのではなく、その環境の中でも自分らしく暮らすための工夫が印象的でした。
他にも変えられることはありますか?
イェンセンさん:
「もっと社会で起きていることに興味を持つことかな? まず、知ること。そして、自分の考えを持つ。そして、若い人も選挙に行くべきだと僕は考えます。
デンマークでは、同僚や友人たちの間でも政治の話をします。18歳で家をでるという風習も、社会に直で接するいい機会。デンマークの多くの若者が、この期間に社会に対しての自分の考えというのを持ちはじめると思います」
「あなたはどう思う?」3年前、私がロンドンに留学していたときによく言われた言葉です。学校の友人とバーに行けば、恋愛の話と同じくらい、政治や自然環境、ジェンダーなど、社会問題についても話が広がります。その度に、「私はこう思う」と自分の意見を答えられないことにショックを受けました。
自分の暮らしは大切にするのに、自分が暮らす「社会」には全然目を向けられていなかった。正直、自分の暮らしに直接の影響はないだろう、とどこかで安心していたのかもしれません。
「暮らしと社会は切り離せない」イェンセンさんの話を聞いて、社会を自分ごととして考えることの大切さを改めて感じるのでした。
「環境を変えたいと思うなら、まず環境を知ることからはじめなければならない」とイェンセンさんは言います。
子育てや教育、働き方など、憧れだった北欧の暮らし。きっと北欧に住んでいる人は、自然とそんな暮らしができているのだと思っていました。
ただイェンセンさんは、たとえ環境が変わっても、時代が変わっても、その変化の中で、どう暮らすかを考え、工夫していく人でした。そんな考えや工夫がその人らしさを作り、スタイルになってゆくのだと思います。
連載の最後は、イェンセンさんご自身の言葉で、締めくくりたいと思います。
イェンセンさんにとって「フィットする暮らし」とは?
いまの暮らしが自分にフィットしているか。あまり考えたこともなかった。 妻と二人でコツコツと家をリノベーションし、自分たちの手で暮らしの空間を作り上げてきた。
時々家具のレイアウトを変え、物を整理する。 家、つまり暮らしというのは完成というものはないと思うからだ。常に、「こうしたら、どうなる」、「こうした方が暮らしが豊かになる」と考えている。
そして、暮らしは自分の力だけでフィットさせることができない。一緒に暮している家族や住んでいる国や地域の環境や天気によって、自分の暮らしを合わせられないといけないこともたくさんある。 例えば今暮らしいる鎌倉は湿気が多く、不自由なこともある。だが、これも暮らしの一部と考えるしかないし、どう向かい合うのかが大切。
ソローの『ウォールデン 森の生活』のような、一人で森の中で小さな家を建てれば、自分にフィットする暮らしは創り上げることはできるかと思うが、僕は周りの家族、周りの環境を意識し、それにフィットする自分を探り続けたいと思う。
イェンス・イェンセン
【写真】木村文平
もくじ
イェンス・イェンセン
デンマーク出身。株式会社デンマーク・
▼イェンス・イェンセンさんの書籍はこちら
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