【フィットする暮らし】第3話:「カーテンはいらない」イェンセンさんにきく、ヒュッゲな空間の作り方
編集スタッフ 松浦
シリーズ「フィットする暮らしのつくり方」は、自分らしく心地いい暮らしをつくっている方を取材し、暮らしのヒントをお届けする読みものです。
vol.16 となる今回は、デンマーク出身の著述家、イェンス・イェンセンさんのお宅に伺っています。
2話目では、家族がよりよく暮らすための、イェンセン家の決まりごとについて教えていただきました。3話目では、イェンセンさんの大切にしている家づくりについてお話を伺います。
家族と過ごすヒュッゲな空間の作り方
デンマーク語で「心地よい時間や空間」を表す言葉、「ヒュッゲ」。
キャンドルを囲みながら、家族や友人とご飯を食べるのもヒュッゲ、ふわふわのブランケットに包まって、一人で本を読むのもヒュッゲ、暖炉にあたりながら、ホットワインを楽しむのもヒュッゲです。
そんな、まったり心地よい時間を大切にするデンマークの人々。やっぱり、北欧の暮らしは素敵だな〜っと思っていると、イェンセンさんがすかさず、
「え、でもそれって日本にもあるよね?」と。
そう、実は日本にもヒュッゲな時間があったんです。
例えば、冬の定番、鍋もの。ひとつの鍋を家族や友人と囲んで楽しむ時間は、ヒュッゲそのもの。「こたつでミカン」もそう、温泉だってヒュッゲな時間だとイェンセンさんは言います。
デンマークの人たちにとって「ヒュッゲ」は、暮らしのなかで大切な時間。それをどうしたら家の中でもっと心地よく過ごせるか?ということを常に考えているようです。
そんな心地よい空間を作る工夫をイェンセンさんに聞きました。
全ては見えなくていい。
イェンセンさん:
「大切にしているひとつは、部屋の明かりかな。蛍光灯は、全てを明るく照らしてしまう。部屋には光も大事だけど、影も必要だって僕は思ってます。全てを見えるようにするのではなくて、見えない部分があるからいい。家にある照明も『影』を意識して選んでいますね」
そういうと、いつも使っているという、手作りのキャンドルスタンドを見せてくれました。火が灯ると、私たちもしばしうっとり。
イェンセンさん:
「人間が洞窟で暮らしていた時代は、こうやって小さな明かりをみんなで囲んで過ごしてたんだろうね。だからか、やっぱりとても落ち着くんだよね」
かつて日本でも、居間の中心には囲炉裏があって、ひとつの火を家族で囲んでいました。部屋の角には、行灯(あんどん)があり、障子に反射した暖かい光が、部屋をほんのりと照らす……。時代の流れで、環境は大きく変わりましたが、火を囲んで感じるものは、今も昔も変わってないのかもしれませんね。
意外と知らない窓の役割
イェンセンさんのお家で、まず気になったのが、「窓」。リビングの大きな窓はもちろん、キッチンや洗面所、お風呂場にも窓があり、外に広がる緑が、まるで額に入った絵画のように空間に馴染んでいます。
イェンセンさん:
「確かに、ヒュッゲな空間を作る工夫の一つは、窓かもしれません。窓の役割には、風と光を空間に取り込むこと。特に、冬の北欧は日照時間も短く、大きな窓は貴重な太陽の光を取り込む、大切な存在です」
イェンセンさん
「そして、もうひとつ重要な役割が、外と中をつなぐことなんです。これって、日本だとピンとこないところかもしれません。
外から中が見えて、中から外が見える。だから、北欧では『カーテンはなくていい』と考える人がほとんど。ちょっと自慢みたいなのかもしれないけれど、窓辺には季節の植物を飾ったり、子供の工作を並べたり、家の中のヒュッゲな空気を街にこぼしている感じ。ヒュッゲのおすそ分けかな?」
北欧の夜の街がどこか温かく感じるのは、窓からみんなのヒュッゲが漏れているからかもしれません。ヒュッゲのおすそ分け。なんだか素敵ですね。
でも、日本に住んでるとプライバシーの問題で、「近所の目がきになる……」というのが本音。そんな時は、大きめの枝を花瓶にさして、小さな窓からはじめてみるのもいいかもしれません。
子供も大人も、「孤独」は感じた方がいい。
デンマークでは 18歳になったら、9割近い若者が親元を離れて一人暮らしをはじめるそうです。
ただ、自由を手に入れると同時に、孤独を感じたり、生活が苦しかったり、家族で暮らしていた時には想像もしなかった壁にぶつかります。その時に、「どう生きるか」という考え、工夫が生まれるのだとイェンセンさんは語ります。
イェンセンさん:
「孤独は感じなきゃダメだと思うんです。
しーんとした空間の中で、自分ひとり。その孤独をどう過ごすか考えてみる。誰かがいつもそばにいる環境だったら、考えられないことです。だから、辛いかもしれないけど、そういう状況に自分を置けるのがチャンスだと僕は思います。
『自分はどう暮らしたいのか』
家族と暮らしてたら考える必要がないかもしれないことだけど、それが自分が生きていくための術になるのだから、とても大切なこと。学生の頃って、これでもかって悩む時間があるけど、今思えばそれってとても贅沢な時間ですよね」
だからこその子供との過ごし方
18歳になったら、家を出て行く。
出て行く子供はもちろん、見守る親も辛抱が必要です。子供が困っていたら、ついつい面倒を見たくなってしまう。それは、イェンセンさんも同じ。「18歳まで」そんな限られた間で、イェンセンさんはどう子供たちと接しているのでしょうか。
イェンセンさん:
「子供たちがどう生きるかは、僕たち親が決めることではない。彼らが自分で考えること。でも、考えるサポートをすることはできると思っています。だから、一緒にいる間は、学校の勉強だけでは学べないこと、生きる上でのヒントとなるものを見せてあげたいです」
部屋には、子供たちの工作や絵がいたるところに飾られています。リビングの中心にあったこちらの絵は、イェンセンさんと子供たちが一緒に描いたもの。水色のペイントをイェンセンさんが、黒と緑は子供たちで描きました。
工作や料理、2話目で紹介した放課後の時間割も、全てはイェンセンさんが子供たちに伝えたい、一人で生きて行くためのヒント、そして「どう暮らしたいか」と考えるきっかけが詰まっているものでした。
最終話では、この日本で心地よく暮らしていくために、今日からはじめられることをイェンセンさんと考えます。
(つづく)
【写真】木村文平
もくじ
イェンス・イェンセン
デンマーク出身。株式会社デンマーク・
▼イェンス・イェンセンさんの書籍はこちら
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