【連載】あの人の暮らしにある「北欧」のこと。no.12:“おふる” をあげる
おふるをあげる、と聞くと「お下がり」を想像します。着られなくなったもの、使わなくなったものを必要としてくれるひとへ。そんな「ものの循環」です。
でも、池田さんの手元にある「おふる」は、ちょっと意味合いが違うようです。
仕事を通じて知り合った、デンマークに住む友人。いつしか互いのパートナーや子どもを交え、家族ぐるみで付き合うようになりました。
こちらからデンマークを訪ねたり、あちらが日本にやってきたり。ひさしぶりに会うときには手土産を持っていくのが常です。ただし、デンマークに暮らす彼らのスタイルは、日本とはすこし違っていました。
あるとき、こちらが贈ったギフトの包装紙を「あなたが持っておいてね」と渡されました。またあるときは別れ際に、身につけていた上着を脱いで渡してくれたこともありました。友人が大好きなモーターレース、F1のジャンパーです。さらに別の機会には、履いていた靴まで。池田さんにはその真意がさっぱりわかりませんでした。
しかし、やりとりを重ねていくうちに、これらの行為はすべて、「分かち合いの気持ち」の表れだと知りました。好きだと感じているものを、大切なあなたにも知ってほしい。わたしが大切に思っているものを、あなたにこそ持っていてもらいたい。
そして身につけているものを贈るのは、家族と同じくらい大切に思っている相手だからこそできることなのだ、とも。
新品や高価なものを贈ることだけが豊かさではない。その感覚は、池田さん自身にも思い当たることがありました。
大切な人に会うときに、なにか贈り物をしたいけれど、いますぐ見つからない。そんなときは、自分たちが大切にしている持ち物の中から相手にぴったり合うものを選びます。
集めている骨董品やお気に入りのアート作品。新たに選ぶのではなく、すでに気に入って選んだものの中から相手を想像して贈ることは、池田さんにとって自然なことでした。
いま、社会人になった息子の部屋には、アルヴァ・アアルトの黒いカフェテーブルがあります。新婚当初から数えて25年以上、長く使い続けてきた家具です。この「おふる」もまた、大切にしているからこその贈り物かもしれません。
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Text : Akari Fujisawa
Photo: Ayumi Yamamoto

池田 宏実(いけだ ひろみ)
料理人。川崎市中央卸売市場北部市場内にある〈調理室池田〉を営む。2018年にオープンした店は、夫である講平さんが全体のディレクションと2階ギャラリーのアンティークの買い付けを、宏実さんが1階カフェを受け持つ。
調理室池田 住所:
川崎市宮前区水沢1-1-1 川崎市中央卸売市場 北部市場関連棟45
Instagram:
@ikeprox
HP:
https://chourishitsu.tumblr.com/
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