【フィットする暮らし】第2話:「ルールがあるから自由がある」イェンセン家の決まりごと

編集スタッフ 松浦

シリーズ「フィットする暮らしのつくり方」は、自分らしく心地いい暮らしをつくっている方を取材し、暮らしのヒントをお届けする読みものです。

vol.16 となる今回は、第1話に引き続き、デンマーク出身の著述家、イェンス・イェンセンさんにお話を伺っています。

第1話で、「家族がどうすればもっと良くなるのか」を常に考えていると語っていたイェンセンさん。 第2話では、そんなイェンセンさんの「家庭」での工夫について教えていただきます。 

 

献立はルーティーンに。夫婦の決まりごと

家の中をぐるりと見渡していると、ふと、冷蔵庫に小さな付箋を見つけました。

イェンセンさん:
「これは、夕食の当番表ですね。FARが僕で、MORがマリコ。隣に書いてあるのは、仮のメニューです」

「1週間の献立と分担を、仮で決めておいたんです。火曜はオムライス、木曜は手巻き寿司……という具合にね。

晩御飯のメニューって毎日のことだから大変。

でもこの『仮の献立』があるだけで、悩む時間がなくなるでしょう。これだけで、ものすごく気持ちが軽いです」

イェンセンさん:
「あと、ここには書いてないけど、日曜の朝はパンケーキって決めてます。生みたての卵をとってきて、ホットプレートで子供たちと作るんです」

大人になった時、「日曜日は、パンケーキだったな」と思い出せるのは、何だか幸せな決まりごとだなと思います。

イェンセンさん:
こうして表は作るけど、毎日の気分でメニューは変わっていきます。今晩は疲れすぎて作れないから、外食にしよう〜って日も、もちろんある。

決まりを作ったからって、絶対守らなきゃいけない!ってことはありません。そもそも、気持ちを軽くするため、自由な時間をつくるために決まりを作ったのに、守ることに必死で、辛くなってしまうのはもったいないですよね

決まりをつくると、どうしても「守らなきゃ」という思いが出てきてしまうもの。ルールをつくることで、自由な時間が生まれるというイェンセンさんの考え方は、一見当たり前のようでいて、私にはとても新鮮なものに感じられました。

 

子供たちの放課後の時間割

「ルールをつくることで自由が生まれる」というイェンセンさんの考え方は、子育てにも同じことが言えるようです。

イェンセンさん:
この紙は、子供たちの放課後の予定表。この日は家で過ごすとか、外で友達と遊ぶとか、ざっくりでいいから予定を書いています」

「Gはゲーム、事は家事を手伝う、Fは映画。子供ってどうしても、今ゲームしていい?とか、聞いてくるでしょ。だからゲームの時間もあらかじめ作っておいてます。

そうすると、子供もいちいち確認しなくてもいいし、子供は子供で『火曜日はゲームの日!』と楽しみに帰ってきます。みんながハッピーに過ごすための、ルールです」

夫婦の家事分担だけでなく、親子でも決まりごとをつくることで、家族みんなの自由な時間が増えたと言います。子供たちも、学校の「時間割」に慣れているからか、自然とこのルーティンを楽しんでいるのだとか。

 

家のルールは「義務」じゃない。家族の自由を作るもの

奥さんのマリコさんも刺繍家として活動しているため、ワークショップやイベントで外にいることも多いそう。家事の分担はどうしているのでしょうか。

イェンセンさん:
「基本は、庭の手入れや外の仕事は、僕。洗濯や掃除は奥さん、というように分けています。あと、食事はさっきのルールを元に、料理をつくる人と、洗い物をする人で役割分担してますね

イェンセンさん:
暮らしは楽しいけど、家事はいつも楽しいとは限らない。そもそも楽しいかどうかとは関係なしに、『やらないと暮らしがまわらない』というものですよね。

だからこそ、自分だけがやってる……と思いはじめると、ストレスの原因だし、そこから喧嘩になってしまったりするでしょう?

それなら、決まりをつくってしまった方が、平等だし、もっと自由な時間が増えると思います。ただ注意したいのは、ルールを義務だと思わないこと。ルールは大きなフレームだと思うようにしてます」

「決まりごと」、「ルール」と聞くと、義務のように感じてしまいがち。ルールに縛られて苦しくなったり、ルールを守ってないとイライラしたり。

でも、ルールはあくまでも大きなフレームだと思えば良い。そこにおさまらない日があっても良い。

そんなイェンセンさんの考え方を聞いて、何だかとても軽やだなと思うのでした。次回は、イェンセンさん家の心地よいヒュッゲな空間の作り方を伺います。

(つづく)

【写真】木村文平

 

もくじ


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イェンス・イェンセン

デンマーク出身。株式会社デンマーク・ヨーグルト代表取締役社長。日本コロニヘーヴ協会・代表理事。Wallpaper*のジャパン・エディターや「Discover  Japan」英語版エディターも務めている。北欧の料理やデザイン、DIY など、手仕事のよさを感じられる北欧のライフスタイルを提案。デンマーク式コミュニティーガーデン「コロニヘーヴ」を日本に広める活動として、2010年「日本コロニヘーヴ協会」を設立。日本の良さを海外に紹介する執筆活動も数多くてかけている。

 

▼イェンス・イェンセンさんの書籍はこちら


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