【チープ・シックのある暮らし】第2話:見ためと動線を大切にした「hamiru亭」のキッチン

商品プランナー 斉木

価格やブランドにとらわれず、好きなモノを選んで、自分らしく使う……そんな「チープ・シックな暮らし」をするためのヒントを探る今回の特集。

ブランディングディレクターとして日々多くのモノを目にする福田 春美(ふくだ はるみ)さんにお話を伺っています。

第1話では、福田さんのモノ選びの基準や、たくさん失敗をすることが、自分らしい暮らしづくりの根っこになるというお話を伺いました。

つづく第2話では、家の中でも特に必要なものが多く、値段もピンからキリまで。そんな悩みのタネのキッチンに、福田さんがチープ・シックなアイテムをどう取り入れているのかをご紹介します。

※登場するアイテムは、全て私物です。過去に購入したものを紹介しているので、現在手に入らないものもございます。どうぞご理解、ご了承いただけると幸いです。

 

ここにコレがあれば……で組み立てる、料理上手のキッチン

真っ白なタイルと作業台、その上に所狭しと吊り下げられた料理道具たち。「hamiru亭」という名前で毎週のように友人たちをもてなす、料理好きな福田さんのキッチンです。

今回聞いて驚いたのは、これだけの料理道具すべてに、「そこにある」理由があるということでした。

日々もっと使いやすくするにはどうしたらいいのかを考え続けている福田さんだからこそ、動線をとことん考えた、厨房のようなキッチン。

今回はそこで毎日使われている、5つのアイテムをご紹介いただきました。

 

時短に効く! 100円均一や築地で買ったタフなバット類

福田さん:
「家に人を呼ぶときは、だいたい5〜6人に10品のコースを出すと決めてます。料理を一番おいしい状態で食べてほしいから、毎回時間との勝負で。

切った食材を並べたり、さっと調味料と和えたりするためには、それに適した深さやサイズのバットがあると時短になるんです」

次々出てくる、大きさも深さも異なる様々なバット。福田さんは特定のブランドにはこだわらず、使いやすさやタフさを重視して、100円均一や築地市場の中で200〜800円くらいまでの業務用を購入しているそうです。

 

IKEA、ニトリ、ノーブランド……丸みが決め手の保存容器

お茶のパックや重曹など、キッチンに常備しておきたいものは、パッケージの色使いなどが気になるので、ほとんど保存容器に詰め替えるという福田さん。

福田さん:
「詰め替え容器も、IKEAやニトリ、近所のスーパーで買えるものばかりですが、決め手になるのは丸み。わたしはどうやらちょっとした丸みが好きみたいで、自分好みの丸みに出会うとコレだ!と思って買ってしまいます」

気づけば集まっている好みの色やかたち。それを客観的に知ることも、モノ選びのヒントになりそうです。

 

見ためも使いやすさもお気に入り! IKEAのキッチンワゴン

福田さん:
「この部屋に引っ越してきたとき、最初に買い足したのがこのIKEAのワゴンです。

この家は備え付けの収納がシンクの上と下にしかなくて。もともと持っていた大きめのIKEAのワゴンだけじゃ足りなくなって、このサイズを入れたんです。

料理も置けるし、料理道具の収納もできて一石二鳥。業務用のような見ためもすごく気に入ってます」

▲大小2つのワゴンが並ぶキッチン作業スペース。左がもともと持っていたもの、右が新たに設けたワゴン

 

求めていた理想のS字フックは、中華街のアレ!?

福田さん:
「この白いバケツを引っ掛けているS字フック、なんだと思いますか? ……実はこれ、中華料理屋さんでチャーシューを引っ掛けておくものなんです(笑)

このバケツは1日の終わりに布巾を煮沸するのに必ず使うもの。だから、下にしまい込んだりせず、ある程度低めの位置に吊るしておきたかったんですが、丈夫でちょうどいい長さのものがなかなか見つからなくて。

中華街を歩いていた時にたまたま見かけて、コレだ!と大興奮しました」

 

拾ってきた流木と石もテーブルコーディネートに欠かせません

福田さん:
「定期的に地元・北海道での仕事もしています。もともとわたしは流木が好きで、それを知っていた友人が、北海道に『流木スポット』があるよ、と教えてくれました。あんまり流れつくから、役所の人が危なくないように一か所に寄せてるみたいなんです。

この流木と石はそこでもらってきたものなんですが、色といい丸みといい最高だなと思いました。相当な荒波に揉まれたのか、色も抜け落ちて、角も丸くなって。

洗剤でよく洗って煮沸したら、流木はカトラリーを置くのに、石はバターを載せるのに使っています。外国のレストランで教わった方法なんですが、大きさも程よいし、石は冷たくてバターが溶けにくいのでいいですよ」

 

答えは自分のなかに。日々のモヤモヤをこころに留めて

100円均一や量販店というモノの海から、「これだ!」というものを見つけたり、本来の用途とはまったく違うかたちで使ったり。

どうやったらチープ・シックなもの選びができるか尋ねると、福田さんは「答えは自分の心にしかない」と答えます。

こんなふうに使ってもいいかな?これを選んでもいいかな?という声よりも、自分の目に心地いいことや、ここがこうだったら使いやすいという気持ちに素直になること。それが自分だけの景色を作るコツだといいます。

はじめから「こういうインテリアじゃなきゃ」と決めるのではなく、部屋という変えられない箱と、自分の好みや動線をチューニングしていくこと。そこに「チープ・シックな暮らし」のヒントがありそうです。

つづく第3話では、思い出の品やアートピース、福田さんの人柄がより浮き出たリビングをご紹介します。お楽しみに。

(つづく)

【写真】岩田貴樹


もくじ

福田春美

アパレルショップの店長、マネージャー、バイイングアシスタントを経て『WR』を立ち上げ、2006年からパリで約3年半暮らす。2010年に帰国後、複数のアパレルブランドの立ち上げやリニューアルを行い、現在は『a day』、『to the north』、様々な企業イベントなどのディレクションを手がける。当店オリジナルアパレルのディレクターも務める。


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