【わたしの腕時計】丸顔腕時計が教えてくれたこと。(「SW11kitchen」店主 渡辺靖子さん)
商品プランナー 斉木
わたしの腕時計
中学校に入学したら腕時計と万年筆を買ってもらう、というのが我が家のお約束であった。
小学生の時に使っていた「子供時計」を卒業して、「大人時計」を手に入れるのだ。綺麗なブルーグレイの文字盤とシルバーの数字の組み合わせが気に入った新しい「大人時計」は、自動巻のシチズン製。
大人時計は、小学校を卒業したての子供の細腕には、ずっしりと重く感じられたことを思い出す。中学校に入って制服を着せられ、時計を持たされ、守らなければならないルールが増えたようで窮屈さも感じた。これがわたしの腕時計の思い出第一号。
時計の仕事が時を刻むことでなければ、この物体のことをもっと好きでいられたのかもしれない。というのも、これを持つことでいつも何かに急かされているような気持ちになってしまうからである。この後いくつかの時計を買い足しはするものの、そんな理由から手元にはほとんど残っていない。
二十歳の時に兄がくれたお祝いで、アンティークの時計を買った。その古い丸い時計は何気ない顔をして「あら、アタクシ昔からここにおりましたわよ」と言わんばかりに私の腕にちゃっかりと収まった。時を経たものの良さはここにある。気持ちさえ合えばすぐに馴染んでくれるのだ。時計だけではない。自宅は古いガラクタだらけ。人から見たらタダのガラクタでも、私にとってはお宝だったりするのである。
この丸顔の腕時計は手巻き式で、毎日巻いて使っていた。手がかかるのである。時間をとられるのである。でも丸い文字盤を見ながらゆっくりゆっくり巻く、壊れないように。
そんなことを続けているうちに、いつしか時計は私を追い立てるものではなく、時間をくれるものになっていることに気付いた。
壊れないようにと気を使う時計は、仕事には向かない。だから毎日仕事をするようになってからは、ゴムやプラスチック製のタフな素材の時計を使ってきた。
そして今は、スマートフォンのデジタル数字が時間を教えてくれる。便利である。老眼にも優しい。でも何か違うな、とこれを書きながら思い始めている。
そろそろまた、丸顔腕時計の出番かしら?
(おわり)
【写真】渡辺靖子
渡辺 靖子(わたなべ やすこ)
CAFE 「SW11 kitchen」 店主。手作りバッグ、手作りお菓子などのhandwork(手仕事)を中心に活動。2018年より、カフェはイベント時のみのオープンとなります。instagramは@sw11kitchen。facebookは「SW11kitchen 」。
▼今回腕時計との物語を綴る、3名の詳しいご紹介は、こちらから。
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