【魚を丸ごと買ってみる】前編:「尾頭付きは調理が難しい」と、思い込んでいませんか?

ライター 片田理恵

「魚まるごとは調理が大変だ」と思い込んでいませんか?

晩のおかずは肉と魚を交互にするという話をよく聞きます。昨日はお肉を焼いたから、今日は魚の日。さぁ、どうしましょうか。

魚料理のレパートリーを増やしたいなと思いつつ、定番化しているのは「切り身を煮る」「干物を焼く」「刺身のサクを買ってきて切る」の3つくらい。鮮魚売場に「丸ごとの魚」が並んでいるのはもちろん知っているけれど、調理が大変そう、難しそうと知らず知らず敬遠してきました。

でも、もしもそれが大変じゃなかったら? 難しくなかったら? しかも、コストパフォーマンスがよかったら? それならぜひ作ってみたいと思いますよね。

簡単で、安くて、おいしい魚料理を求めて、民藝と生活雑貨を商う「みんげい おくむら」の奥村忍さんを訪ねました。

 

“丸ごと”買う理由は「おいしくて安い」から

自他ともに認める無類の “魚食い” という奥村さん。母方の祖父、伯父が漁師をしていたこともあり、子どもの頃から魚が大好きだったそうです。とはいえ当時は釣るか食べるかが専門で、自ら包丁を握るようになったのは社会人になってから。

一人暮らしをしながら猛烈に働く日々の中で、ある日「うまい魚料理が食べたい」と強烈に感じたのがきっかけでした。YouTubeを見ながら猛特訓を重ね、3枚おろしができるようになったあたりからどんどん作るのが楽しくなったといいます。

奥村さん:
「丸ごとの魚を買うハードルの高さってありますよね。僕も最初はもちろんそうでした。でもよく考えると『丸ごと』にはいいことがたくさんあるんです。

まず鮮度がわかりやすい。魚は新鮮なものほどおいしいですから。そして一匹買うと複数の品数が作れる。これは食卓の豊かさという意味でも、コストパフォーマンスという意味でも優秀です」

 


いちばん簡単な丸ごと魚料理
「いわしの塩焼き」に挑戦


とはいえ、丸ごとの魚を触ることにも不慣れな初心者にはわからないことばかり。そこでまずは一番簡単な料理法・塩焼きを教えてもらいました。

奥村さん:
「いわしに限らず、丸ごとの魚を買うときのポイントは『目』です。目に濁りがなく、透明なほど鮮度がいい。これはぜひ覚えておいてください。塩焼きの作り方は3ステップ。(1) 洗う、(2) 塩をふる、(3) 焼く、これだけです。できそうな気がしてきませんか?」

 

◆材料(2人分)
いわし…2尾
塩…適量
油…適量

※塩と油は家にあるものでOKです

◆下準備
・魚焼きグリルを予熱する
・皮がくっつかないよう、グリルの網に油を塗る

 

(STEP1)
刃先で洗い、キッチンペーパーで水気をふきとる

奥村さん:
「鮮魚店やスーパーで売られているいわしは、うろこは処理済みのものがほとんどです。ただヒレの裏側などに少しだけ残っている場合があるので、一度全体を刃先でこすりながら洗うのがおすすめ。皮までおいしく食べるためには、この一手間がけっこう重要なんです。

さんまなどと同様、僕は内臓はそのまま食べるのが好みなので処理しません。子どもが食べる場合も、丸ごと焼いて内臓だけよけてあげるのが簡単です」

 

(STEP2)
塩をふり、30分ほどそのまま置いてなじませる

奥村さん:
「塩の量は、一般に魚の重さに対して3%と言われます。でも、正確に計らなくてもまったく問題なし。両面全体にまぶすこと、表面にうっすらと塩が見えているくらいが目安ですね。感覚としては『けっこう多いな』と感じる程度でちょうどいいです。

尻尾がこげやすいので、お店では『飾り塩』といって塩をたっぷりのせて焦げないようにする焼き方もありますが、家庭で食べる分には気にしなくていいと思います」

 

(STEP3)
温めておいたグリルでこんがりと焼きあげる

奥村さん:
「表面に切れ目をいれるかどうかは好みです。僕は入れないほうが好きなのでそのまま。

下準備で、グリルの網にはキッチンペーパーなどで薄く油を塗っておくと、焦げ付きにくくなります。

いわしの大きさにもよりますが、中まで火が通ったかどうかの目安は鮮度同様、目を見るとわかりやすい。透明感がなくなり、白くなればOKです」

 

食べ方や副菜の工夫で、ますますおいしく

焼き上がったいわしを器に盛り、刻んだ青じそを加えた大根おろしとレモンを添えて完成。ジューシーで濃厚な魚の旨みにさわやかな酸味や辛味が加わり、最後のひと口までおいしく、さっぱりと食べられます。

いわしの塩焼きに合わせる奥村さんおすすめの副菜は「カブの浅漬け」。

皮をむいて一口大に切ったカブの実、さっとゆでてから水気を切り、3センチほどに切ったカブの葉、皮つきのままスライスした無農薬レモンを塩でもみこめば出来上がり。イワシの脂をほどよく中和してくれるので食べやすく、ついつい箸が進みすぎてしまう箸休めです。

いわしの塩焼き、いかがでしたか? 包丁を使うのは洗うためだけというこの手軽さ、正直いって驚きました。丸ごと買って丸ごと調理するので、下処理要らずでゴミも出ない。これはぜひともレパートリーに加えたいところです。

明日はもう一歩すすんで、あじの3枚おろしに挑戦。なんと1尾で2品のおかずを作ります。「丸ごとあじを味わう定食」、お楽しみに!

(つづく)

【写真】馬場わかな

 


もくじ

 

奥村忍

日本や世界各地から集めた手しごとを中心とした生活雑貨を商う「みんげい おくむら」店主。今の時代、今の生活に合った「みんげい」を探し、日々提案している。千葉県生まれ、千葉県在住。http://www.mingei-okumura.com

ライター 片田理恵

編集者、ライター。大学卒業後、出版社勤務と出産と移住を経てフリー。執筆媒体は「nice things」「ナチュママ」「リンネル」「はるまち」「DOTPLACE」「あてら」など。クラシコムではリトルプレス「オトナのおしゃべりノオト」も担当。

 


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