【家計のきほん】第2話:この1年間、どう暮らしたい?自分のものさしで「予算」を立てる

編集スタッフ 塩川

この夏こそ「家計」を本気で見直したい

暮らしの中で、切っても切れない「お金」の存在。

どんぶり勘定だけど、赤字じゃないからまあいいや。老後のことはそのうち考えればいいかな。なんて、ずっとモヤモヤを残したままでした。

でも、今年も折り返し地点。そろそろ改めてお金と向き合いたい。そう思い立ち『正しい家計管理』(WAVE出版)の著者、林 總(はやしあつむ)先生を講師に招き、全3話で家計塾を開催しています。

1話目では、家計を本気で見直したいスタッフ3名とともに、家計にまつわる素朴な疑問にお答えいただきました。

本日は実践編として、家計の全体像を掴み、予算を組んでいきます。

▲「がんばるぞー!」と気合い十分なスタッフと林先生

 


予算を立てる前に…
まずは現状を把握しよう。


我が家の「純財産」を知る

林先生:
「家計管理で大切なのは、小さなお金の動きではなく、大きな流れをつかむことです。まずは現状把握に必要な、3つのデータを作っていきましょう。

最初に作るのは、プラスの財産とマイナスの財産を書き出した『財産目録』です。

フォーマットは書きやすいもので構いません。プラスの財産とマイナスの財産を明らかにします」

【プラスの財産】
財布の中の現金、銀行にある預金、株や不動産(売ったらいくらになるのか、相場を調べる)など

【マイナスの財産】
住宅ローン、車のローン、返済中の奨学金、携帯電話の機種代など

林先生:
「プラスの財産から、マイナスの財産を引いたものが『純財産』になります。

これを書いてみると、たとえば住宅や車のローンを組んでいるかたは『貯金があると思っていたら、純財産がマイナスだった』ということを発見できることもあります。

毎月1円でも純財産を増やすこと。これが家計を破綻させないための鉄則です」

 

1年でいくら使う?を明らかにする

次に、「年間の支出」を把握していきます。

林先生:
「家計簿をつけているかたは家計簿を参考に。つけていないかたは、取り急ぎ1週間分のレシートを頼りにして、そこに52週を掛け算すれば、おおよそ1年分の支出がわかりますよ。

管理不能支出』と『管理可能支出』に分けて記入していきましょう」

【管理不能支出】
・家関連費(家賃、管理費、光熱費)
・教育費(学費、塾代)
・健康医療費(ジム代)
・車両関係費(駐車場代、車検代、ローン返済)
・各種保険料
・通信費(インターネット代、スマホ代)
・住宅ローン返済 など

【管理可能支出】
・生活費(食費、日用品代、衣服費)
・生活娯楽費(外食費、旅行費、映画費)
・健康医療費 など

 

帰省やお祝いごとなど
予測できる「特別支出」を書き出す

林先生:
『特別支出』は、たとえば帰省や誕生日プレゼントなど、1年のどこかで支払うお金になります。昨年の行動を振り返って記入してください。

病気など予測できない特別支出は、預金から補填することになりますので、ここには書かなくて大丈夫です。

書き出していくと気づくと思うのですが、かなりの額になりませんか?」

スタッフ 二本柳:
「わかります。引越しをしたり、がんばったご褒美に旅行を入れてたり、『わたし、こんなにお金使ってるんだ』とびっくりしました」

林先生:
「特別支出もしっかりと予算に組み込んで、毎月一定額をプールしておきましょう」

 


現状把握ができたところで…
我が家の「予算」を立ててみよう


1年間の収入予算をまとめる

林先生:
「過去の行動を思い出して、どのくらいお金を使っているのか家計の全体像が分かったところで、次は未来に生かしましょう。

ここからは昨年の実績を元に、家計の予算を立てていきます。予算のプランニングは、支出が予算を上回らないための、1番大切な作業です。

まずは昨年の源泉徴収票などを参考に、『年間の収入予算』をまとめましょう。

項目は、
・年間の手取り給与
・ボーナス額
・臨時収入
それに加え、昨年から変化した状況があれば加味して記入してください。

1年分の収入予算を書き終えたら、この金額を参考にして来年の月々の手取り給与、そしてボーナス月の手取り額を記入します」

 

無理のない範囲で、「強制預金額」を決める

林先生:
「収入予算が分かったら、次は月々の『強制預金額』を決めてしまいます。

たとえ1万円でも毎月預金すると決めておけば、将来の救いになりますよ。40年貯め続ければ480万円ですから。

無理のない額を設定し、預金を習慣化しましょう」

 

ボーナスは「特別支出」に使う

林先生:
「ここでポイントなのは、ボーナスの使い道です。

ボーナスは減ったり増えたりするものですから、必ず支払わなければならない生活費などにあててしまうと危険なこと。

変動収入と考え、特別支出の旅行やイベント費、家電やインテリアの購入など、『変動支出』として考えましょう」

 

個人で使うお金は「お小遣い」と考える

林先生:
「夫婦それぞれのお小遣いに関しては細かく管理するとイヤになるので、きちんと話し合いをし価値観をすり合わせておきましょう。

各自のランチや飲み会、美容院代など、個人で使うお金は『お小遣い』と考えるほうがシンプルです」

 

「1年間どう暮らしたい?」
自分たちの行動計画をたてる

林先生:
「最後に支出予算を組んでいきます。収入予算から強制預金と管理不能支出、お小遣いを引いたお金が、支出予算になります。

ここでお伝えしたいのが、予算というのは『自分たちが、1年間どんなふうに暮らしたいのか』という理想を実現するためのものだ、ということ。

先ほど作成した『年間の支出額』の変動費を参考にしながら、どんな暮らしをしたいか自由に書き出してみましょう。項目は3~5つ以内に押さえておくと、管理がしやすいと思います。

週に1回、外食をしたいのであれば、その計画を予算に盛り込む。自分たちの『ものさし』に基づいて記入していきます」

林先生:
「食費や日用品代など、こまかなものは『生活費』としてまとめてOK。『その他』を設けておくのもいいでしょう。

一般的な費目は頭の中から追い出して、やりたいことを基準に書き出してください。

ただし、理想を詰め込みすぎて大幅に赤字にならないよう気をつけましょう。必ず黒字になるようにしてくださいね」

 

価値観をカタチにした、予算案が完成!

お金と向き合い、ずっと苦い顔をしていたスタッフも『自分の行動を基準にして、自分のものさしで予算を立てる』という一言を聞き、すっかり笑顔になりました。

年間の予算を立て終えたら、12で割って、1ヶ月分の予算を把握しておきます。

ちなみにここまでの作業は、すべて手書きで行うのがポイントだそう。

手で書くことにより数字を身体中で受け止め、書いたことがしっかりと記憶に残ると林先生は話します。

さて続く3話目では、がんばって立てた予算を守る、家計の管理方法について伺いました。

(つづく)

【写真】鍵岡龍門


もくじ


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林 總(はやし あつむ)
公認会計士・税理士
明治大学 専門職大学院 特任教授

外資系会計事務所、監査法人を経て独立。ビジネス書から、家計、子育てにまつわる著書多数。4人の息子の父親でもあり、家計管理も会社経営も目的は同じで「お金」に振り回されるのではなく、「満足度の高い人生」を送るために使うべきだと説く。

http://atsumu.com/

▼関連書籍は、こちらからご覧いただけます。

 


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