【私にちょうどいい美容】第2話:「何を選ぶか」より、「どう使うか」。
美容ライター 長田杏奈
第2話:コスメ以前の「美容仕草」
例えば、ドラマでヒロインがスキンケアをするシーン。よく、化粧水をパシッパシッと叩き込んで「よし!」なんていう描写がありませんか? その度に、「あらあら、ちょっと待って」と気になってしまうのです。化粧水がまんべんなくなじむと思えないし、なによりも肌への刺激が心配です。もし、「そういうものだ」と思い込んで毎日パシパシ叩き続けたら、小さなダメージが少しずつ積もってしまいます。
スキンケアやメイクをするときの手の使い方や、ちょっとした習慣。「何を選ぶか」以前の「どう使うか」を見直せば、いま手元にあるアイテムだけでバージョンアップできるもの。でも、それを見直す機会ってなかなかないんですよね。だから今回は、コスメ以前の「美容仕草」について考えてみましょう。
「お肌の敵」といって思いつくのは、紫外線、乾燥、そして摩擦です。
顔を洗うときや化粧水をつけるとき、肌をゴシゴシこするのをやめるだけで、乾燥もくすみもシミもシワもやわらぐはずです。摩擦による刺激は、肌のバリア機能を損ない、炎症や色素沈着を引き起こす原因。肌に触れる時、手に力が入ってピーンとつっぱっていませんか? 手首をブラブラして、手に入っている余分な力を抜いてみてください。そして、生まれたてほやほやの動物の赤ちゃんに触れる感覚で、やさしく包み込むように触ってください。こすらずに撫でる、撫でるより押し込むというのを意識してみましょう。できれば呼吸もゆっくりめに。コットンやティッシュ、タオルでゴシゴシ拭いたり、つい顔を触ったりも控えたいですね。
私自身、何かを「指」で顔に塗る時、人差し指や親指は使いません。肌に触れるのは、力の入りにくい中指と薬指が中心。特に、皮膚の薄い目の周りには繊細なタッチを心がけます。
肌だけは真綿に包むように、丁寧に丁寧に姫扱いするぐらいでちょうどいい。スキンケアやメイクをするとき、いつもより優しく触れてみてください。
ちょっとした心がけで肌を変える美容仕草としては、洗顔の際のすすぎも大切。実はすすぎと肌の乾燥には密接な関係があります。気をつけるのは、水温と、シャワーの使い方。顔を洗うときのお湯の適温は32度前後の、かろうじてぬるま湯という程度です。そして、シャワーを直接顔に当てるのではなく、いったん手か洗面器にとってからすすいでください。高温と水流は、肌の自前の潤いを奪ってしまうので、ここを変えるだけで、肌が乾燥しづらくなるはずです。
もうひとつ、意識してみてほしいのが、化粧品を塗る順番。洗顔やクレンジングはいちばん汚れが気になる部分からなじませて、乾燥しやすい部分は最後に塗る。スキンケアは、乾燥が気になる部分からなじませて、ベタつく部分は最後に塗る。ベースメイクはカバーしたい部分から塗り、アラがないところは余りをなじませる程度。ポイントメイクは色を濃くつけたい所に最初に置いて、ぼかす。
慣れた手順で無意識にしてしまう一つ一つの行程ですが、今晩はちょっと手を止めて順番を意識してみてください。
他にも、鏡を近づけたり遠ざけたりして見る、用具を清潔に保つなど、何を選ぶか以前の美容仕草はいろいろあります。
いま手元にあるものを、ちょっと丁寧に優しく使うだけで、肌のコンディションやメイクの仕上がりが変わる。物に頼らずに変わる楽しさを、是非感じてほしいなと思います。
(つづく)
【写真】安川結子
長田 杏奈(おさだ あんな)
美容ライターとして「MAQUIA」、「BAILA」、「SPUR」など多くの女性誌で記事を執筆。プライベートでは息子 (11歳)と娘(8歳)を育てる。モットーは「美容は自尊心の筋トレ」。趣味は美容、園芸、セレブウォッチ、女子プロレス観戦、禅、北欧ミステリー。Instagram:@osadanna
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