【私にちょうどいい美容】第4話:ポイントメイクで小さな冒険
美容ライター 長田杏奈
この連載の第1話で、「マンネリは悪くない」という話をしました。けれど、自分にとって心地よいベーシックを知っている人にも、安全圏から踏み出してちょっとだけ冒険を楽しみたい時があるようです。
どこかを変えて気分転換したいけれど、いつもの自分からかけ離れてしまうのは、ちょっと気恥ずかしいし、何よりも失敗が怖い。そんな時は、美容を一汁一菜に例えていうと「旬のおかず」に当たる、面積の少ないポイントメイクの風味を少しだけ変えてみませんか。今回は、そんなメイクのマイナーチェンジの話です。
第4話:マイナーチェンジのススメ
まず最初に試してほしいのが、アイライナーやマスカラを黒以外の色にチェンジすること。いきなり鮮やかな色に挑戦せず、「よくよく見れば違うかも」ぐらいの色を試してみて。
凛と涼やかな印象に仕上がるネイビー、ナチュラルで優しげなブラウン、シックな雰囲気のグレーなど。これ見よがしではないけれど、ニュアンスがいつもと違う。そんなささやかな冒険から始めましょう。
もう少し変化を楽しみたいなら、いつも使っているポイントメイクの質感やトーンをアレンジ。例えば、お気に入りのリップがあれば、それをベースに、グロスを重ねてツヤやきらめきを足したり、パウダーやマットチェンジャーを重ねてツヤ消し質感に変えるのもおすすめです。
最近は、トップコートのような重ね塗り用アイテムも豊富なので、「青味や黄味を足す」、「ダークにする」「ミルキーにする」などのニュアンスチェンジも簡単。似合うもの慣れ親しんだものをベースにしている分、ハードルも低くてすみますね。
わざわざ新しいものを買い足さずとも、いつものアイテムの塗り方をちょっと変えるだけで新鮮な表情を楽しむことができます。いつもスポンジで塗っているファンデーションを、パフで塗ればふんわりエアリーに。柔らかなブラシで軽く塗れば素肌っぽくなるし、コシのあるブラシでくるくると塗り込めば毛穴レスな仕上がりになります。指にとってクマやシミの気になる部分にトントンなじませれば、軽いコンシーラー代わりにも。
さらには、塗る位置や量を変えるだけでも、ちょっとしたマイナーチェンジは叶います。鏡をよく見てかすかな雰囲気の変化を観察し、経験値をあげて自分だけのさじ加減を模索しましょう。
マイナーチェンジに慣れてきたら、もうちょっと冒険したい気持ちが湧いてくるでしょう。そんな時覚えておくと便利なのが、メイクの引き算です。
新しい色に挑戦し、「目立ちすぎて居心地が悪いかも」「張り切って見えたら恥ずかしい」と心配になるとき、他のパーツのメイクをどこかひとつ引き算すればぐっとこなれた印象に見えます(服に例えると、新品おろしたてのピカピカの一張羅に着られている感じじゃなくて、着慣れて体に馴染んだ服にさらっと袖を通してしっくり似合うあの感じ)。
私がよく取り入れる引き算をざっとあげてみます。眉毛をマスカラで毛並みを整えるだけにする、マスカラをビューラーでカールするだけにするかビューラーを省く、アイラインを引かない、まぶたをツヤだけにする、チークを省くかスキントーンにする、リップをリップクリームだけやヌード系にする、ファンデーションを塗らずに日焼け止めとパウダーだけですませる……などなど。
メイクにはすっぴんと完璧メイクの0か100ではなく、40とか80とか、自分にとって程よい加減があるものです。引き算という術を覚えれば、適度な余白や抜けのある、頑張りすぎない顔に調整することができるのです。
新しいアイテムを試す時に活用したいのがプチプラコスメと、クレンジング前の時間帯です。旬の気分を取り入れた優秀なアイテムが揃っているプチプラコスメ。どこの何が優秀という口コミも参考になりますが、ブランドによって「ナチュラル」「モード」「可愛い系」など特徴があるので、ふらっと売り場に行ってパッケージや広告のモデルの写真を見て、自分の雰囲気や好みに合ったところから探してみましょう。できればあれこれ考え込まず、ひと目見た時に心が惹かれたものを、直感にしたがって無邪気に手に入れてみてほしいです。
メイクの冒険や練習に最適な時間は、夜のクレンジングの前。あとは落とすだけなので、失敗したって濃くたって問題ありません。やりたいようにやって、何をどんな風に塗ったら似合うのか、どうイメージが変わるかを実験しましょう。
メイクをちょっと変えたとき、写真で撮った時に見えなくても、人から気づかれなくてもがっかりしないでください。むしろ、そのぐらいさりげないほうが、メイクが素敵なのかその人が素敵なのか見分けがつかなくなっているということ。それ、成功です。
小さな冒険を繰り返すことで、メイクの可動域が広がり、きっと少しずつ遠くへいけるようになる。いちばんの方位磁石は「楽しもう」という気持ち。怖がらずに小さな冒険を楽しんで。
(つづく)
【写真】安川結子
長田 杏奈(おさだ あんな)
美容ライターとして「MAQUIA」、「BAILA」、「SPUR」など多くの女性誌で記事を執筆。プライベートでは息子 (11歳)と娘(8歳)を育てる。モットーは「美容は自尊心の筋トレ」。趣味は美容、園芸、セレブウォッチ、女子プロレス観戦、禅、北欧ミステリー。Instagram:@osadanna
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