【私にちょうどいい美容】第5話:悩みやつまずきは、きれいのタネ。

美容ライター 長田杏奈

せっかく自分なりに美容が楽しくなってきたのに、何かのきっかけで「やっぱり疲れた」「私には向いてないんだ」とつまずいてしまうとき。その悩みやつまずきは、自分らしい美しさを見つけるための大切な種なので、投げずに向き合ってほしいなと思います。そうはいっても、自力では前を向けなそうなとき。いったん気持ちを落ち着けて「10年ものの美容ライターがこんなこと言ってたな」と心に浮かべてほしいこと。

今回は、“あるある” な美容のつまずき対策について考えてみました。

 


第5話:悩みやつまずきはキレイの種


 

年齢が気になって楽しめない

若さって、フレッシュでまぶしくて可愛いものですよね。自分の顔に今までなかった年齢のサインを見つけたり、「もう◯◯歳だから」という理由で、下り坂にいるような心細い気持ちになるとき。それは、「加齢の美」を味わう審美眼が育っていない証拠です。アンティークや骨董には、ピッカピカの新品には出せない味わいや艶があるもの。それは、人間の魅力にも当てはまります。

オススメは、「こんな大人になりたい」という年上のミューズをたくさん見つけてよーく観察し、頭の中にストックしていくこと。身近な人でもいいし、有名人でも何かの作品のヒロインでもいい。そうすると、見えてくるものがあるんです。「笑ったときのシワは、やさしさの証拠だ」、「ホヨホヨとしたまろやかな質感は、包容力があるように見えるな」とか。「シミは水玉。流行らせればいい」と言っていた女優さんもいました。大人の美を見る目を養って、その眼差しを自分にも向けましょう。

 

見た目にコンプレックスがある

自分の顔の作りが、好みと違うことってありますよね。「もっとこうだったらな」をいえばキリがなかったり。メイク技術も美容医療も発達しているので、その気になれば別人になることもできる。心が平和になるのなら、それも大いにありでしょう。でも、思い通りじゃない部分こそが、人とかぶらないその人らしさや個性の原石となるもの。折り合いをつけて味にしてほしいし、最終的にはトレードマークにするぐらいの気持ちで堂々としてほしいところです。

例えば、二重や色白というような、いわゆる美の正解とされがちなことを、「本当にそう?」と時には疑ってみましょう。歴史や地球全体で見たら、一時的で狭い美意識にとらわれていることも多々。たまにはすご〜く遠くを見て、美の固定概念をストレッチして、コリをほぐしてください。人間の顔に、模範解答はありません。

コンプレックスに思っているパーツを、褒めるボキャブラリーを増やすのも効果的です。私を例にすると、「目が小さい」は「柴犬みたいに目がつぶら」、「エラが張って四角い」は「意思が強そうで、頼もしい」など。人を褒める反射神経を鍛えるのにも役立ちますね。

 

人の目が気になる

美容に苦手意識を持っている人の話を聞くと、「頑張っていると思われたくない」、「モテようとしているみたいで気恥ずかしい」というワードが出てきます。このつい人目を意識してしまうことへの対策としては、3つのステップである程度解決できます。

その1は、満足させる対象の明確化。「私は自分が心地よくなるためにやっている」と言い聞かせること。人目を満足させるという無意識のゴール設定をやめましょう。

その2、仮想敵を作らないこと。人に面と向かって何かを言われたわけではないのに、「こう思われたらどうしよう」と先回りして心配するのをやめましょう。「世間の声」や「一般論」を、自分に当てはめて妄想しないこと。無駄に自分を傷つけたり、萎縮させるのはかわいそうです。

その3は、何か言われた時に返す言葉のパターンを覚えておくこと。褒められたら「ありがとうございます」、辛口なことを言われたら「修行中です」「色々試してます」など、道半ばで努力している途中であることを表現しましょう。反射的に謙遜したり、自虐したくなるのは、グッと我慢してください。

 

頭でっかちになってしまう

美容への気持ちが高まると、真面目できちんとした人ほどいろいろ勉強したくなるもの。肌色や骨格に似合うメイク、新作情報や口コミ……。美容は奥深いので、たくさんのプロがいるし、いろいろなノウハウや知識の世界が広がっています。

でも、それによって息苦しくなったり、「こうでなければ」と正否にとらわれるようになったら、いったん立ち止まってください。たくさんの情報は、あくまでもガイドライン。正解はひとつではありません。「私にちょうどいい美容」を見つけたいなら、頼るべきは自分の感覚。心地よさをいちばんに、マイペースに楽しみましょう。

 

とにかく頑張ってほしいのは、自分の存在を、「本来的に尊く美しいもの」と認める練習をすること。

目鼻立ちとかプロポーションがどうこうではなくて、もっと大まかにトータルで自分のことを見たときに、「悪くない……、むしろ結構好き」と信じられる心構えこそが大切です。美容は、その心構えを育てて助けるためのひとつのツール。あくまでも手段にすぎないのだから、頑張り過ぎなくて大丈夫。私は、美容を “自尊心の筋トレ” だと思っています。

人のことも自分のことも、顔ばかり見過ぎないで。リラックス、リラックス。そんなふうに、力を抜いてみませんか?

(つづく)

 

【写真】安川結子

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長田 杏奈(おさだ あんな)

美容ライターとして「MAQUIA」、「BAILA」、「SPUR」など多くの女性誌で記事を執筆。プライベートでは息子 (11歳)と娘(9歳)を育てる。モットーは「美容は自尊心の筋トレ」。趣味は美容、園芸、セレブウォッチ、女子プロレス観戦、禅、北欧ミステリー。Instagram:@osadanna

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