【訪ねたい部屋】第3話:こうして生まれた「がんばりすぎないインテリア」

ライター 藤沢あかり

友人の部屋を訪れたときの、わくわくするような気持ち。そこには、「その人らしさ」を知る嬉しさや楽しさがあるのかもしれません。

お宅を訪問し、インテリアを拝見しながら「その人らしさ」を紐解く特集「訪ねたい部屋」を全3話でお届けしています。

料理研究家として活躍しながら、自宅での料理教室「おいしい週末」を主宰する近藤幸子さんのお宅を訪ねる3話目。仕事と子育てを両立する中で、近藤さんが見つけた「がんばりすぎない」バランス、そこにたどり着いた理由について伺いました。

 

子どもと仕事の狭間で「もう、無理!」。その気持ちが暮らしを変えた

近藤さん:
「私、仕事と育児とで一度限界に追い込まれてしまったんです。

長女が2~3歳の頃のことです」

2~3歳といえば、まだまだ赤ちゃんと幼児との間を行き来し、予測のつかない成長や行動の変化が目まぐるしいとき。大変さとかわいさとが代わりばんこにやってくる毎日に、手探りで必死についていこうとしている人も多いのではないでしょうか。

近藤さん:
「仕事と子育て、両方を抱え込んで、がんばろうとしすぎていたのかもしれません。

映像クリエイターとして働く夫は、いつも不在がち。夫婦ともに地方出身、頼れる身内は近くになしという状況で、気がつけば体調不良が重なって、心身ともにボロボロでした」

▲5歳の次女が描いた絵を、冷蔵庫に。冷蔵庫の上に飾ったドライフラワーは、生花で楽しんだあとのお楽しみ。

その後、6歳差で次女を授かった時に、近藤さんは自分の力でできる限界を見極めました。

近藤さん:
「私としては、夫には好きな仕事をがんばってもらいたい。でも、私ひとりの力でできることには限りがあります。だったら、人の力をもっと借りてみよう、前向きに手を抜こうと思ったんです」

がんばりすぎない、前向きな手抜きの選択のひとつが、シッターサービスを利用することでした。

▲「フリーランスの両親に、年の差姉妹という家族構成も共感」という『次女ちゃん』(扶桑社)。生活の何気ない一コマをほのぼのとした視点で描いたエッセイコミックは、心をほぐしてくれるお気に入りの一冊。

近藤さん:
「下の子が生まれて、3年半くらいの期間、大学生がインターンシップとして子育てのお手伝いをしてくれるという制度を利用しました。社会で働くこと、仕事と家事を両立すること、そんなワークライフバランスを、実際に家庭に入って体験しながら学ぶという方針に共感したのもあります。

私も助かっただけでなく、娘にとっても、信頼できるお姉ちゃんができてよかったみたい。シッターとしての関係がなくなった今も、交流が続いているんですよ」

▲ダイニングの一角に設けた小さなデスクでは、子どもたちが勉強やお絵かきをしたり。ときには夫が仕事することも。

人の手を借りることは、決してマイナスではないと感じた近藤さん。

片づけも、料理も、ただがむしゃらにがんばるのではなく、「おそれずに、前向きに手を抜く」技を身につけていきました。

近藤さん:
「忙しいからと、できあいのお惣菜にばかり頼ったり、味よりも時短にこだわりすぎてしまったり……。それが目的なら構わないのですが、悲しい気持ちになる “がんばりすぎない” は、できればしたくない。

料理も暮らしも、わくわくする気持ちや、おいしい!と思うことはあきらめたくありません」

▲「丁寧に暮らす」にとらわれすぎず、おいしさはあきらめない。リアルな体験が生んだ段取りやコツを存分に盛り込んだ『がんばりすぎないごはん』(主婦と生活社)。

 

30分の暮らしの余白が、次に頑張るパワーをくれる

朝、子どもたちを送り出して家事を済ませ、仕事を始める前に。そして、夕方、仕事を終えてお迎えに行く前に。近藤さんは30分ずつ、自分のための時間をつくっています。

近藤さん:
「お茶をいれて、好きな音楽を聴いたりSNSをチェックしたり。ずっと自宅にいると、仕事と暮らしがひと続きになるので、仕事とも家事とも関係ない時間を意識的にもつようにしています」

▲お気に入りのお茶は、「ババグーリ」や「ティーポンド」など。

近藤さん:
「家事も仕事も、息つく暇もないと気持ちの疲労が蓄積していきます。長女の子育てでそれを感じたので、忙しくてもあえて区切りを意識的につけるように。

もう一歩がんばれそうでも、一呼吸いれる。重い荷物に苦労しているならタクシーを使う。

つねにフルパワーで消耗してしまわないよう、体力を温存しておくようになりました」

お母さんがギリギリの状態だと、子どもはそれを感じ取ります。

笑顔の余裕がなくなる前に、自分をうまくコントロールする術を見つけることは、長く続く家事や育児を楽しく過ごすコツかもしれません。

 

“大人って楽しそう!” という気持ちが、夢を叶える原動力に

▲手軽にリフレッシュできるアロマは、カーテンや枕にそっと垂らして香りを楽しみます。この夏大活躍したポメロ(晩白柚)の香りは、ベトナム旅行で見つけたもの。

もともと、海外旅行やライブ、映画などが大好きだったという近藤さん。

ここ2年くらいは、少しずつ夜のライブに出かけたり、友人と食事を楽しんだりと充電の時間をもてるようになりました。

▲20代の頃に訪れたパリで出合った、りんごの小物入れ。「蚤の市のようなわちゃわちゃしたところからお宝を見つけるのが大好きなんです」

海外旅行も、子どもたちが成長してきて再び楽しめるようになったことのひとつ。
旅はリフレッシュだけでなく、仕事のインスピレーションやインテリアのスパイスにも大切な機会です。

近藤さん:
「これまでに台湾や香港、そして今年は少し距離を延ばしてベトナムのダナンへ行きました。

子連れなので、無理せず、行程も欲張らず。テーマパークやホテルのプールなど、子どもが楽しめるプランを盛り込んだ旅にします。私は子どもたちがベッドに入ってから、ちょっとだけ街に出て駆け足で行きたいところを回ったり(笑)

現地の味を楽しんで、帰ってから再現してみるのも楽しみになっています」

▲特にお気に入りだという、香港で見つけたアンテイークの景徳鎮。「小さくても存在感があり、テーブルを華やかにしてくれるんです」

近藤さん:
「母親になっても、好きなものは変わりませんよね。海外旅行も、映画やライブに出かけることも。母親も心の栄養は必要だし、うちの子たちは、お母さんも楽しいことをするのが普通だと感じているかも。

お手伝いに来てくれていた大学生、そして自分の子どもたちにもですが、“大人って楽しそうだな” というのを伝えたいと思っています。私も学生時代、楽しそうな大人に触れてたことが、好きなことを仕事にするきっかけにつながったのかもしれません」

 

生き方もインテリアも、自分の「好き」の積み重ね

インテリアを拝見しながら、その置き場所や好きなものを探っていくと、気づけば近藤さん自身の子育てや生き方の話にたどり着いていました。

どんなものが好きか、何に興味があるのか。仕事は、家事は、子育ては? それらすべての重なりが「暮らし」なのかもしれません。

「がんばりすぎない」の基準は人それぞれ。

“前向きに手を抜きながら、生活のわくわくはあきらめない” という近藤さんのスタイルは、私たちに「ほら、息切れしてない?」と問いかけてくれているようです。

 

(おわり)

【写真】木村文平

 


もくじ

 

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近藤幸子

料理研究家、管理栄養士。作る楽しさとおいしさを気軽に、という思いから始まった料理教室『おいしい週末』を主宰。雑誌やテレビなど各メディアで、シンプルながらも気の利いたレシピを数多く提案している。http://oishisyumatsu.com

ライター 藤沢あかり

編集者、ライター。大学卒業後、文房具や雑貨の商品企画を経て、雑貨・インテリア誌の編集者に。出産を機にフリーとなり、現在はインテリアや雑貨、子育てや食など暮らしまわりの記事やインタビューを中心に編集・執筆を手がける。

 


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