【私らしい部屋づくり】第1話:「後悔しない」を優先したいから。好きなものはとことん飾る

ライター 藤沢あかり

「自分らしい部屋」ってなんだろう?

雑誌で見たステキなオブジェを気に入って買ってはみたものの、どうにもうまく飾れない。自分のインテリアはこれで合ってる?と自信が持てない。インテリアが好きだからこそ、誰もが経験する思いではないでしょうか。

雑誌やSNSで目にする素敵なお宅に住む人たちは、「誰の真似でもない自分らしさ」にあふれているように感じます。でも「自分らしい」ってなんだろう?

そんなときに出会った、米澤さんのインスタグラム。

新しく加わったお気に入りアイテムやディスプレイの模様替えの様子、季節の花を飾ったことなど、日常のインテリアについてを綴るその様子は、とにかく楽しそう!

見るとカラフルなメキシコのオブジェに日本の張子人形、インダストリアルな雰囲気のコーヒーアイテム、クラフト感あふれる手紡ぎのファブリックなど、ジャンルにとらわれない自由な空気がたっぷり。

そのワクワクした雰囲気に、私まで何かを始めたくなって、とにかくうずうず。純粋に、「住まいを楽しむっていいな」という気持ちが満ちてくるのを感じます。

こんな「●●風」と一言でくくれない、オリジナルな空気はどうやって生まれたのでしょうか。

築30年を超えるマンションを、フルスケルトンでリノベーションした米澤さんの住まい。ここに暮らし始めて5年が経ちました。

配管やコンクリートの躯体をあらわしにした、ちょっと無骨でシンプルな空間です。

米澤さん:
「ほぼワンルームに仕上げ、ベッドルームとウォークインクローゼットだけをパーティションで区切っています。

施工会社には、『完成形にしなくていい』とお願いしました。自分たちであとからいろいろと色づけしながら、好きな部屋に仕上げていきたかったんです」

 

掃除は面倒、でもたくさん飾りたい

その言葉通り、壁のペイントやタイル貼りのDIY、さらには家具作りなど、大工である夫の特技も生かしながら、果敢にチャレンジしてきました。

テレビボードとディスプレイスペースを兼ねたこの棚も、夫の自信作。夫婦揃って大好きだというメキシコの民芸人形や、植物などが並びます。

▲アフリカの民芸人形の奥には、宮崎の高千穂でつくられる稲わら細工の鶴も。

ここだけではありません。

部屋中、あちらこちらに植物やオブジェがいっぱい並んでいる様子は、いわゆる「飾る場所を一ヶ所に絞ってポイントに」なんていうインテリアのハウツーとは真逆の世界。でもそれが、独自の雰囲気を生み出しているのも確かです。

ところで、これだけいろいろと並べていたら気になるのが掃除の仕方。ホコリを払っていたら、うっかり倒して壊しちゃった! そんな経験はないのでしょうか。

米澤さん:
「掃除は本当にめんどくさい!(笑)私も苦手なので、わかります。

掃除をするときは、壊すのが心配なので一度すべて移動させます。でもやっぱり大変なので、そんなに小まめにできませんが。

でも、好きなものは、ずっと眺めていたいし、大切にしながらもどんどん使うのが理想なんです。

以前、“大切にしまいこんでいたお気に入りを、震災ですべて失ってしまった“という記事に触れ、好きなものはとことん愛でたい、と思うようになりました」

 

思い切ったデザインも、小物なら気軽に楽しめる

米澤さんのインテリアは、季節によって雰囲気がぐっと変化します。大がかりなイメージチェンジをしているのかと思っていましたが、実はそうではないとのこと。

米澤さん:
「変えているとしたら、ファブリックでしょうか。

家具は頻繁に変えられませんが、クッションなら素材やデザインによって、季節感を取り入れやすいし、ちょっと奇抜なデザインも気軽にチャレンジできます」

▲ぽこぽことした編み模様のカバーは、「H&M」で。特にファブリックは「お手頃だと試しやすいから」と、チープシックなものをうまく取り入れています。

ではその季節外のカバーは、別の場所に?と思ったら……。意外なところにありました。

米澤さん:
「使わないカバーはクッション材と一緒に詰めています」

なるほど、これなら季節が変わった時に持っていたことを忘れてた!といううっかりも防げそうです。

 

買うかどうかを迷ったら、後悔しない方を選びたい

なにか買い物をするとき、増え続けるものを前に、ついつい言い訳を考えてしまうことってありませんか?

ずっと欲しかったから、この色はまだ持っていないから、安いから、まだ収納場所があるから……。

値の張るものや、ちょっと個性の強いデザイン、すでに持っているアイテムを選ぶときなどは特にそうです。米澤さんは、買うかどうかを迷うことってないのでしょうか?

米澤さん:
「もちろん、すごく迷います。

でも、物が多くなりすぎるから、という理由で迷うことはないかもしれません。

もう手に入らないかもしれないのにチャンスを逃して、そのあとずっと後悔した経験もたくさんあるんです。

特に、私が惹かれる手仕事のものは一期一会です。旅先に行くと、今しか買えない!と思いきれることってありますよね。

もちろん買うときは悩みますし、置き場所や入れるものを考えてから買うのがベストかもしれません。でも、『素敵だな』と思う気持ちが、まずは最優先。

ものが増えすぎてきたら、そのときにまた見直せばいいかなと思っています」

 

「今のインテリアには合わないかも」と思ったときの手放し方

そんな米澤さんにも、やっぱり「買ってから後悔した」「だんだん好みが変わってきた」というものもあるそうです。

米澤さん:
「たくさんあります。すごく憧れていたのに、いざ買って飾ってみたら、うちにはなんだか似合わなかったな……とか。潔く手放せたらいいのですが、やっぱり迷うこともありますよね。

そんなときは、一度見えない場所にしまってみるんです。

しばらくして、また新鮮な気持ちで向き合えることもあれば、やっぱり違うと感じることも。そのときは、誰か使ってくれる人を探します」

ソファ前に置いたカフェテーブルも、夫の手作り。床材を組み合わせた天板に、「P.F.S」で見つけたアイアン脚を取りつけました。モロッコで織られたカラフルなラグは、「暑い季節には、毛足の短い裏面を表にして使うつもり」だそう。

これまで私は、インテリアにしても洋服にしても、趣味が変わることを恐れていたかもしれません。すごく気に入っているのに、「これはちょっとデザインが個性的だからすぐに飽きるかも」と、ついつい保守的になる自分がいるのです。さらに、いざ手に入れたら、ちょっと違うと感じても「せっかく買ったから」と、手放すのをためらってしまいます。

「今、すごく気に入っているか」を大切にしている米澤さんだからこそ、面白さがつまった自由なインテリアになるのかもしれません。

米澤さんの、「好き」を軸にしたものの循環スタイル。なにかひとつを手放した手が、また新しいお気に入りをキャッチするときを待っています。

続く2話目では、さらに「見せる」にこだわったキッチンまわりをお届けします。

(つづく)

【写真】鍵岡龍門


もくじ

米澤麻美

神奈川県在住の主婦。大工として働く夫と2人で、リノベーションしたマンションに暮らす。グリーンやアート、手仕事、コーヒーなど夫婦共通の趣味も多く、休日にはお気に入りのショップを巡るのが好き。森下典子著『日々是好日』(新潮文庫)に心を打たれ、最近はお茶の世界も気になり始めているとか。insragram:@aanimarro

 

ライター 藤沢あかり

編集者、ライター。大学卒業後、文房具や雑貨の商品企画を経て、雑貨・インテリア誌の編集者に。出産を機にフリーとなり、現在はインテリアや雑貨、子育てや食など暮らしまわりの記事やインタビューを中心に編集・執筆を手がける。

 

 


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