【私らしい部屋づくり】第2話:家族が暮らしやすいように。「生活感を隠さず見せる」にこだわったキッチン&ダイニング
ライター 藤沢あかり
雑誌で見た素敵なオブジェを気に入って買ってはみたものの、どうにもうまく飾れない。自分のインテリアはこれで合ってる?と自信が持てない。インテリアが好きだからこそ、誰もが経験する思いではないでしょうか。
雑誌やSNSで目にする素敵なお宅に住む人たちは、「誰の真似でもない自分らしさ」にあふれているように感じます。
でも「自分らしい」ってなんだろう? 好きなものに囲まれる部屋って、どんなふうに生まれるの? そんな疑問を胸に、好きなものを詰め込んだ空間で、インテリアを自由に、おおらかに楽しんでいる米澤さんのお宅を訪問しています。
2話目の今回は、リビングと一続きになったキッチン&ダイニングスペースです。
家族の使いやすさが最優先。あえて生活感を見せたキッチンづくり
シンプルなタイルとモルタル素材で、スタイリッシュに仕上げた造作キッチン。
光がやさしく差し込むこの場所は、音楽を聴きながら大好きなコーヒーを淹れたり、人を招いて食事をしたりする、米澤さんにとって一番大好きな場所です。
壁の幅をめいっぱい使ったキッチンは、かなり贅沢な広さ。アイランド側には業務用だというシンプルな大型シンクを設けました。
▲ダイニングに最近加わった照明は、ガラス作家のピーター・アイビーさんによるもの。手吹きガラス独特のゆらぎに包まれたフィラメントの灯りが、幻想的な美しさです。
米澤さん:
「設計時に提案されたのは、背面収納には扉をつけて隠す仕様だったんです。それもスッキリしそうだと思ったんですが、隠れていると、反対にきれいさを保てない気がして(笑)。
閉めたときのスッキリ感と、開けたときとのギャップが大きくなってしまいそうだったので、思い切って見せる収納に踏み切りました」
生活感を見せるか、隠すか。その選択は難しいところですが、米澤さんの場合は、「見せる」が功を奏したようです。キッチン道具をお気に入りだけに絞り、本当に使いたい、大切にしたいものだけを手元に残すようになりました。
▲「どれも一軍で使っているものだけですね」と話しながら、「あ、でもこれだけは使いこなせず、でも気に入っているので置いてあるかも!(笑)」と手にしたのは湯切りざるの“すいのう”。宮城県の工芸品です。
米澤さん:
「調味料も、シンプルな瓶に詰め替えたり、ラベルを貼ったりできたら素敵だなって思うんですけど……できないんです(笑)。せめて、全部しまってすっきりさせたほうが、きっと掃除もしやすいとは思います。
でも、家族が暮らしやすいことが、今の私にとっては最優先。私だけじゃなく夫も使いやすくしておきたいんです。
家電も調味料も、毎日使う物。その “使っている” っていう生活感って、むしろ大切にしたいし、それも悪くないなと思っています」
米澤さんのお宅にいると、一見ハードルの高そうなセンスにあふれているのに、それと同時に感じるのは、ホッとする居心地のよさ。使いかけの調味料や気取らない家電、読みかけの雑誌など、肩ひじを張りすぎない、ちょっとした「生活感」が、その空気を生んでいるのかもしれません。
手持ちアイテムに再注目。お皿一枚でできる、季節を感じる模様替え
キッチン背面に造りつけたシェルフは、普段使いの鍋やコーヒー道具の収納場所であり、新たに加わったアイテムや季節の品など、「旬の気分」を楽しむディスプレイの場でもあります。
取材に伺ったのは、まだお正月気分が冷めやらぬころ。特等席を飾っていたのは花屋「みたて」の稲わら細工のお飾りと、芦澤和洋さんのスリップウェアのお皿です。
「スリップ模様が月のようで、なんだかお正月にぴったりだなと思ったんです」と米澤さん。
季節限定のアイテムも特別感がありますが、手持ちアイテムの中で、「今の季節や気分」に、ぴたっとくる組み合わせを見つけるのも、インテリアの面白さかもしれません。
米澤さんも、色やテイストの組み合わせをその時々で楽しみながら、ときにはそんな様子をSNSにも発信して、新鮮なインテリアを保っています。
「掃除は小まめにできなくて」と笑う米澤さんですが、インテリアを楽しむ気持ちが小まめに配置換えにつながり、自然とホコリのたまらない部屋のキープにもつながっているようです。
▲さりげなく、お正月を彩る餅花も。モダンな中に和のしつらいをセンスよく取り入れていました。
棚の隣に取り付けたツェツェ・アソシエイツのディッシュラックは、ずっと欲しいものリストの上位にありながらも、「いつか、そのうち」と思っていたもの。ふとしたときに廃盤になると知り、すぐに購入したそうです。
「すごく慌てちゃって。これは今、思い切らないと後悔する!って、サイズも設置場所も決めずに決断しました」と笑いますが、これもまた、好きなものへの迷いのなさが、後悔しない決断に導いてくれました。
買ってから使い道を考える、そんなお買い物も楽しい!
「最近の買い物だと、これがすごくお気に入り」と見せてくれたのは、木工作家・市川岳人さんのボトルストッパー。隣にならぶ花器も、同じ方の作品です。
米澤さん:
「これも、使い道を考えるより、その佇まいが美しくて手にしました。
一番目につく場所に飾って楽しんでいますが、何をいれようかと考えるのも楽しいです。コーヒーが好きだから、やっぱりコーヒー豆かな」
やみくもに「欲しい」を貫くのではなく、あくまでも米澤さんの場合は、大好きな「手仕事」との出会いやタイミングを大切にしている、ということは第1話で伺いました。ほかにも、買い物のコツってあるのでしょうか。
▲お気に入りのコーヒー道具は、こんなふうにディスプレイ。ブラシやメジャースプーンなどの小物も、一枚プレートを添えるだけでまとまりが生まれます。ガラスジャーは、照明と同じピーター・アイビーさん作。
米澤さん:
「手仕事のものは特に、作家さんの話を聞いたり、手にとって感じる良さを大切にしたいので、個展やギャラリーに足を運ぶようにしています。
スリップウェアの器が大好きで、一度ワークショップに参加したことがあるんです。でも、実際に手を動かしてみたら、難しいなんてレベルじゃなくて……! 改めて、作品づくりの技術を実感しました」
ものに対して深く知ることで、より愛着を増している米澤さん。使うこと、愛でることで作り手の想いに応えているようです。
続く3話目では、家じゅうに満ちている植物の楽しみ方をご紹介します。
(つづく)
【写真】鍵岡龍門
もくじ
米澤麻美
神奈川県在住の主婦。大工として働く夫と2人で、リノベーションしたマンションに暮らす。グリーンやアート、手仕事、コーヒーなど夫婦共通の趣味も多く、休日にはお気に入りのショップを巡るのが好き。森下典子著『日々是好日』(新潮文庫)に心を打たれ、最近はお茶の世界も気になり始めているとか。insragram:@aanimarro
ライター 藤沢あかり
編集者、ライター。大学卒業後、文房具や雑貨の商品企画を経て、雑貨・インテリア誌の編集者に。出産を機にフリーとなり、現在はインテリアや雑貨、子育てや食など暮らしまわりの記事やインタビューを中心に編集・執筆を手がける。
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