【ケの日のこと】突如始まる「ケの日のリフォーム」、その後の話。

「家族と一年誌『家族』」編集長 中村暁野


第33話:「ケの日のリフォーム」のその後


 

築34年の別荘として使われていた湖畔の家を、自分たちの手でリフォームしながら暮らし始めてもうすぐ丸2年。昨年2月にもリフォームの様子をご紹介しましたが、今回はその後の様子をお伝えしたいと思います(前回の記事はこちら)。

リフォームは、その方向性も作業も、空間デザインを生業とする夫に完全に任せているのですが、リビング、キッチン、玄関、トイレ……と少しずつ進んでいます。

少しずつ進む、というと日々コツコツ手を動かし改装に取り組む、うさぎと亀の話でいう亀の様子が浮かびますが、夫は真逆。思いついた瞬間にバーっと走ってパタっと止まり、その後長〜いお休みに入る、完全にうさぎタイプなのです。

なので、改革はいつも突然始まり、突然終わります。

もともとあったリビングの窪みを利用して、夫が作った長い飾り棚。わたしの気に入っていたそのスペースも、ある日前触れなく壊されました。夫が一目惚れしたキャビネットを買ってきて、置くのはここしかない!と壁に打ち込んだ棚をぶち抜きだしたのです。

解体作業が始まったのは、キャビネットを買ってきた日の夜、21時過ぎのことでした。山と湖に囲まれた静かな我が家に突如響き渡るドリルの音……。打ち込んであった板をひっぺがしたので、当然壁は傷つきました。壁には特別に調合してもらったペンキを塗っていたのですぐには手に入りません。

それでも勢いに乗った夫は、壁に取り付けていたランプも「なんか気に入ってなかったんだ〜!」とガガガガっと取り外し、これまた当然壁には穴が開き……。「どうして修復用のペンキを買ってからやらないのよ?」というわたしの詰問もなんのその。キャビネットを配置し、ランプを取り外した夫は「思いついたらすぐに見てみたくて」とこの上なく満足気です。そして、その満足気な顔は、「今回のリフォームはこれにて終了」という中断を意味してもいるのです……。

その証拠にこれはかれこれ数ヶ月前の出来事ですが、その後、壁の修復はされていません。壁が修復される時、それはまた何かのアイデアだか閃きだかが彼に舞い降りた時なのではないかな……と思っております。

一時が万事そんな感じで、計画とは無縁の我が家のリフォーム。この先自分がどんな部屋に暮らすのか、この家の完成とはなんなのか、さっぱり予想もつきませんが、この予期せぬ変化も淡々と続く「ケの日」のスパイス……、そんな風に自分を納得させ、未知なる家との付き合いもだいぶ楽しめるようにもなってきた近頃なのです。

 

【写真】中村暁野

中村暁野(なかむら あきの)

家族と一年誌『家族』編集長。Popoyansのnon名義で音楽活動も行う。8歳の長女、2歳の長男を育てる二児の母。2017年3月に一家で神奈川県と山梨県の山間の町へ移住した。『家族』2号が1/14に刊行。現在販売中。http://kazoku-magazine.com

 


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