【ユーモアはそこにある】第1話:心が折れそうなとき、どう気持ちを整理したらいいんだろう

編集スタッフ 寿山

つい先日、3年越しに手に入れたガラスのティーポットを、お店からの帰り道に割ってしまいました。予想外すぎるアクシデントで、一瞬パニックになって悲しみにのまれそうになったのですが、ある店のマスターとの出会いがきっかけで、少しだけ気持ちが落ち着きました。

たまたま友人と待ち合わせしていた店で、同じような経験のあるマスターが、その悲劇をどう解釈して、どう対処したかをユーモアたっぷりに話してくれて、ゲラゲラ笑って少しだけ気持ちが明るくなったのです。そういう捉え方もあるんだなあと。

私もティーポットが割れてしまったことを、ただの不運で終わらせたくないと思いました。悲観するだけじゃなくて、自分なりに解釈して、前に進める人になりたい。人を笑わせるだけでなく、自分なりに解釈することも「ユーモア」なのかも?と。

そんな想いで企画した今回の特集。目黒にある洋服店「OWL(アウル)」で、オリジナルの洋服を制作・販売する山岸奈緒子(やまぎしなおこ)さんを訪ねます。

 

すぐに立ち直れそうもないとき、どう折り合いをつける?

私が奈緒子さんと出会ったのは、6年ほど前。目黒通り沿いの家具ショップを散策していたとき、ショーウィンドウに飾ってあった、愛らしい動物柄のコートに惹かれてドアを開けたのがきっかけです。

いつも洋服屋に入るときは、カチコチに緊張するほうなのですが、気さくに楽しい話をたくさんしてくれる奈緒子さんに、すっかり心を開いてしまった私。洋服と関係のない世間話をあれこれおしゃべりするうちに、すっかり彼女のことが大好きになってしまいました。

なかでも印象的だったエピソードが、奈緒子さんが服作りの道に進んだきっかけについて。もともとはプロダクトデザインを学びたくて進学したところ、願書を間違えて、ファッションデザインのクラスに入学してしまったのだそう。

普通に考えたら、めげてしまうか、またやり直そうと思いそうなところ。私だったら、そのまま職業にしようなんて思えそうもありません。奈緒子さんは一体どうやって折り合いをつけたのでしょうか。まずはその話から伺ってみたいと思います。

 

他人の意見を信じたら、道がひらけることも

奈緒子さん:
「あまりのショックに、学園長にコースを変えてくれるよう懇願しました。でも、『入学金をまた払うのも大変だし、もうここは諦めて、2年やってみなよ?』と言われたんです。もちろん、そんなの無理だと思ったし、泣きながら電車で帰りました。

まっすぐ家に帰る気にはなれなくて、よく買い物していた洋服店に立ち寄ったんです。仲が良かった店長にコトの顛末を話したら『しょーがないナオちゃん、それは運命だよ』と言われました。『ダメだったらまた学校に行き直せば良いじゃない』とも。

大好きな人にアドバイスされて、そういう考え方もあるのかあと、素直に信じたんです。そしたら少し気持ちがラクになりました。

でも、親にもクラスメイトにも、最近になるまでずっと話せませんでした。絶対に怒られると思っていましたから(笑)。なんとか自分で解決しようと思って、そこから勉強に集中したんです」

 

40代ではじめて、「向き合えない」気持ちを味わって

そんな風にいつも明るく、しなやかに生きている印象の奈緒子さん。ところが、1年半ほど前に夫が肝硬変を患い、余命宣告をされたそう。それから半年もしないうちに亡くなっていました。

ここ1年は、人生でもはじめてというくらい、ひどく落ち込んだ毎日を送っていたそう。

奈緒子さん:
「取材のお話をいただいたとき、神さまから『そろそろ折り合いをつけなさい』と言われている気がしたんです。私の話でいいのかわからないけれど、この1年のことをお話してみますね」

 

現実から目をそらさないと、やってられない時もある

奈緒子さん:
「はじめのうちは、なかなか夫の死を受け入れられませんでした。何事もなかったように暮らしたい。なるべくフラットな状態でいたいと、現実から目をそらして、なんとか平常心を保っていたんだと思います。

そんな時、たまたま同じような境遇のお客さまに出会ったんです。

はじめは何も事情を知らず、オーダーした服を引き取りにきた女性が、19時を過ぎてもなかなか帰ろうとしないので不思議に思って尋ねました。

もうそろそろスーパーでお買い物しなくて大丈夫ですか?と。そうしたら『実はいまひとりで、もうすぐ夫の一周忌なんです』と、おっしゃったんです」

奈緒子さん:
「お客さまの話を聞きながら、私も夫が亡くなって、なるべく何事もなかったように暮らしていると話したら、その方がご自身の経験を話してくれました。まずは、夫の死をちゃんと受け入れることからはじまったと。それから、泣きたいときは我慢しないほうが、悲しみにフタをしないほうがいいよとも言われたんです。

泣くことだって、思い出すことだって、弔うことになるんだから、大切にしたほうがいいと」

その方との出会いで、夫の死とまったく向き合えていなかった自分に気がついた奈緒子さん。とはいえ、どうしたらいいのかわからず、ただただ、ボンヤリしていたといいます。

 

(つづく)


もくじ

【写真】鍵岡龍門

山岸奈緒子さん

岐阜県出身。動物好きで、7年前に自分でデザインした動物柄の布でオーダーメードの服を作る洋服店「OWL(アウル)」を目黒に開く。動物柄のほかにも、紳士服地を使ったものも。レディースにメンズ、子供服やバッグまで、幅広くオーダーに応えている。インスタのアカウントは@owl_meguro。http://owl705.blog.fc2.com/


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