【あの人の家へ】第4話:居心地のいい部屋って? それは自分の「本当の好き」で決まる

ライター 大野麻里

憧れの “あの人” のお宅を訪問し、生き方と住まいについて話を伺う特集「あの人の家へ」。

今回は、1970〜80年代にアンティークバイヤーとして活躍し、現在はギャラリー「DEE’S HALL」のオーナーをしている土器典美さんのお宅を訪ねました。

最終話の4話では、土器さんの考える「居心地のいい部屋」についてお聞きしました。

 

土器さんの考える、居心地のよい部屋って?

6畳のアパートから、海外暮らし、都会のマンション、一軒家、山の家まで……。ライフスタイルの変化とともに、さまざまな家に住んできた土器さん。子どものころから、インテリアに興味があったのでしょうか?

土器さん:
「うちの実家は、普通の家。インテリアに興味を持ったのはいつ頃だろう? 高校生のころに観た『勝手にしやがれ』とか、フランス映画には憧れましたね。映画に登場するアパルトマンやブランケットとかを見て、『わぁ、かっこいい!』って。

私たちが学生のころの日本は、インテリアなんて全然。たぶんまだ インテリア” という言葉もなかったぐらいじゃないかな。でも私は住むことに興味があったから、米軍ハウスに住んだり、アパートを改装したりしていたんでしょうね」

▲グラス類を収めているのは、イギリスの古い本棚。キャビネットに比べて奥行きが浅く、スリムな佇まい

土器さん:
「やっぱり『F.O.B COOP』とか登場した80年代のあたまぐらいから、日本人の暮らし方が変わってきたと思います。生活雑貨や飾っておくものも変わりましたね。私の店『DEE’S ANTIQUE』も、そんな雑貨ブームの中にいたんです。

私たちがお店を始めた70〜80年代は、日本が元気だった時代。若者はお金がなくても不安もなかったから、こんな家に住みたいとか、こんなものを持ちたいとか、みんな夢があったように思います」

では、いまの土器さんが考える、居心地のいい部屋って、どういう部屋でしょう……?

土器さん:
「結局、家は住む人の住み方によるじゃない? 心地よさっていうのはおしゃれなことではなくて、その人らしさがある部屋だと思うの。別にかっこよくなくても、ものがいっぱいあっても、なんとなく心地いい家とかあるでしょう。それはその人らしさがすごく出ているってことなのかなと。

『雑誌に載ってたから』『みんながいいっていうから』という基準ではなく。自分が本当に好きという気持ちのうえで、ものを置かないと、本当の心地よさは出ないんじゃないかなと思うんです」

 

心を豊かにしてくれるアートで、白い箱を彩って

アンティークバイヤーをしていた土器さんに、長く愛用しているアンティークはありますか? と訊ねると、「もうほとんど持っていないの」との意外な答えが返ってきました。

土器さん:
「お店をやっていたから、自分の気に入ったものを誰かに渡したいんですよ。あげたら人は喜んでくれるじゃない? それが私の喜びだったし、お店の基本方針もそうだった。アンティークは、誰かの手から誰かの手へずーっと長い年月かけて渡ってきたものでしょ。自分が持つよりも、誰かにつないでいくことが私は好きみたい。

よく『貴重なアンティークを売っちゃうの、もったいなくない?』とも言われるんだけど、私はコレクターじゃないから。ものへの執着も、あまりないんです」

▲青森の海岸で拾ったという天然のメノウ。並べて置くだけで素敵なアートになっている

2話でも少し触れましたが、年齢を重ねて、買い物することも減ったと話す土器さん。すでに必要なものは家に揃っているので、むしろここから「ものを減らしていきたい」のだとか。

土器さん:
「でも、ものを減らしすぎてしまうと、部屋がさみしいですよね。買い物は減りましたが、ひとつだけ例外が。作家さんがうちで展覧会をやるときは、必ず作品を1個買うようにしています。だから、アート作品は少しずつ家に増えているんです」

▲パートナーの思い出の品だったヤシの木のおもちゃを、作家さんに依頼して時計のアートに入れてもらった作品

部屋を見渡せば、小さなアートがあちこちに。真っ白い箱を、土器さんらしい空間につくりあげているのは、これらのオブジェや陶器、絵画など、ぬくもりのある作品たちなのかもしれません。

 

その人の生き方が、その人の部屋をつくる

今回の記事を懐かしく感じるのは、40代以上の方が多いのではないでしょうか。

私は現在37歳で、土器さんが「DEE’S ANTIQUE」(1980-1996年)をオープンした翌年に生まれました。なので、残念ながら当時の「DEE’S」を訪れたことはありません。著書やエッセイを読み、その時代の女性たちの功績を知ったのは、社会人になってからのことです。

ヨーロッパの生活雑貨やアンティークが日本で売っていなかった時代。ものと情報に溢れた現代では想像するのも難しいですが、当時の雑貨ブームをリアルに体感して、胸をときめかせて買い物をした世代の人々を、率直にうらやましいなぁ、と思います。情報が少なかった時代だからこそ、それらを初めて見て、手にした感動はどれほどだったでしょうか。

ここに書ききれないのが残念ですが、インタビュー中に土器さんは、1ヶ月の休みを1年に2回とって、海外でキッチン付きのアパートを借りて滞在していた話など、素敵な旅のお話もたくさんしてくださいました。

土器さんの部屋が素敵な理由。それは、生き方なのでしょう。年齢を重ね、それに応じて暮らしを適応させていく姿も印象的でした。

インテリアについてのお話を伺ったはずが、大先輩に、人生の楽しみ方を学ぶ機会をもらう取材となりました。

(おわり)

【写真】有賀 傑


もくじ

第1話(3月11日)
都心で暮らして50年。自分らしく年齢を重ねる、土器典美さんの住まい

第2話(3月12日)
「便利なものは採用」へ。年を重ねて変わった、キッチンの考え方

第3話(3月13日)
長期滞在のゲストを迎えられるようリノベーション。大人のシェアハウスに

第4話(3月14日)
居心地のいい部屋って? それは自分の「本当の好き」で決まる

土器典美

東京・南青山にあるギャラリー「DEE’S HALL」オーナー。ロンドンでアンティークバイヤーとして活動したのち、1980年にアンティーク雑貨店「DEE’S ANTIQUE」を開き、雑貨ブームの先駆けとなる。2001年に現ギャラリーをオープン。料理やライフスタイル、海外旅行などのエッセイや写真をまとめた著書も多数。

ライター 大野麻里

編集者、ライター。美術大学卒業後、出版社勤務を経て2006年よりフリーランス。雑誌や書籍、広告、ウェブなどで企画・編集・執筆を手がける。ジャンルは住まいやインテリア、ライフスタイルなどの暮らしまわり、旅行、デザイン関係などが中心。


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