【お坊さんのお悩み相談室】第13回:一度「苦手」と思ってしまうと、なかなか変われない……もういい大人なのに。
編集スタッフ 松浦
家事や子育て、日々の仕事。私たちのくらしには、小さなことから大きなことまで「悩み」がつきものです。
「お坊さんに聞く、くらしの悩み相談室」は、仕事や子育てなど、日々のモヤモヤを、お坊さんに答えていただく連載。 クラシコムのオフィスに「くらしのお悩み箱」なるものを設置し、スタッフのくらしの悩みを集めました。
お答えいただくのは、著書『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)なども人気の、浅草・湯島山緑泉寺 僧侶の青江覚峰さん。青江さん自身も、3児の父として、子育てにも奮闘中ということもあり、お坊さん目線、そしてひとりの親目線でお話ししていただきます。
一度「苦手」と思ってしまうと、なかなか新しい目線でその人のことを見れない自分が嫌になることがあります。もう大人なのに……と。でもその問題に寄り添ったり、立ち向かったりする時にはパワーが必要で、気持ちに余裕がないと前向きに実行できません。どういう考え方をすればいいか悩む時があります。(スタッフM)
実は、お釈迦様の時代から人間は同じようなことで頭を悩ませてきました。
四苦八苦の一つに「怨憎会苦(おんぞうえく)」という言葉があります。会いたくない人とも会わないといけない苦しみを指す言葉です。
誰とでも等しく親しめれば理想的ですが、なかなかそうはいかないもの。一人ひとり個性が違えば、相性の善し悪しだってあるものです。苦手な人や嫌いな人はいるのは当たり前のことです。
ただそうは言っても、「嫌いだからハイそれまでよ」とはいかないのが、社会に生きる私たちのつらいところ。特に、何か嫌なことをされたとか、不利益を被ったなど、その人を嫌だと思う原因がわかりやすいものでなく、なんとなく苦手だな……という人の場合は、なおさら気持ちのもっていきようがなく、苦しい思いをするものです。
そんなとき、ものの本には「その人のいいところを見つけてみよう」などと書かれているかもしれません。正論ですが、それで解決できるなら簡単な話です。そもそも、なんとなく好きになれない相手なのですから、どんなにいいところを数え上げてみても無駄でしょう。
さて、「問題に寄り添ったり立ち向かう時にはパワーが必要」とおっしゃっていますが、そもそもそのパワーは必要なものでしょうか。もちろん、家族や直接の上司など、体力気力を使ってなんとかうまく付き合わなければいけないこともあるでしょう。
でもその付き合い方も、何も真正面から精一杯向き合うばかりがいいとも限りません。この人とはウマが合わない、顔を突き合わせていると気持ちが沈んでしまう。そんな自分を認め受け入れることで、自ずと力の抜けるポイントが見えてくることもあるものです。
四苦八苦も怨憎会苦も、言葉としては古いものですが、その苦しみに対するアンサーとなる言葉はありません。お釈迦様の時代から私たちを悩ませてきた悩みを解消するすべは、現代においても発見されていないのです。
私たちが知るべきは、人間には悩みがある、苦しみがある、という事実そのもの。ありもしない答えを求めて心を痛めるのは、悩み苦しみを増長させることにほかなりません。出会ったすべての人と仲良くなることはできませんし、できないとわかっていることに挑んで自分をすり減らす必要もありません。
そういうこともあるよね、仕方ないよねと諦めた上で、「それなり」の距離感をつかんでいくのが、せめて多少なりとも楽な道ではないでしょうか。
青江覚峰
僧侶 青江覚峰
浄土真宗東本願寺派 湯島山緑泉寺住職。米国カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。「暗闇ごはん」代表。超宗派の僧侶によるウェブサイト「彼岸寺」創設メンバー
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