【お坊さんのお悩み相談室】第20回:私って小心者? まわりの発言に落ち込んでしまいます
編集スタッフ 松浦
家事や子育て、日々の仕事。私たちのくらしには、小さなことから大きなことまで「悩み」がつきものです。
「お坊さんに聞く、くらしのお悩み相談室」は、仕事や子育てなど、日々のモヤモヤを、お坊さんに答えていただく連載。 クラシコムのオフィスに「くらしのお悩み箱」なるものを設置し、スタッフのくらしの悩みを集めました。
お答えいただくのは、著書『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)なども人気の、浅草・湯島山緑泉寺 僧侶の青江覚峰さん。青江さん自身も、3児の父として、子育てにも奮闘中ということもあり、お坊さん目線、そしてひとりの親目線でお話ししていただきます。
気持ちが上向いているときは大丈夫だけど、気持ちが乱れているときに人間関係でなにかあると、全部がそちらに引っ張られてしまうんです。人の発言や一挙一動を追ったり、ひどいときはSNS上の言葉にも落ち込んだりしてしまいます。気にしすぎな自分の心ともう少し上手く付き合っていきたいです。(スタッフM)
人間はロジックで動いているわけではなく、生まれながらの感情というものを持っています。ですから気持ちに乱れが生じれば、行動がそちらに引っ張られてしまうことは自然なことです。
私自身も、人間関係で悩むとそのせいで体調が悪くなったような気がしたり、引きこもったりすることがあります。人間というものは社会的な生き物で、他者と関わらずに生きていくことができないようになっています。
また、今の世の中は人間が過去に経験していないほど雑多な情報に囲まれて暮らしています。家族が地域の人など、ごく身近な人から入る情報が全てだった時代から、ラジオや新聞、テレビと言ったマスメディアの台頭を経て、広くインターネットが普及した現代は、自分とは遠く離れた異文化の地からも絶えず情報が届きます。その中に、自分の日常生活にとって本当に必要なものはとても少ないかもしれません。
SNS上の情報だって同じです。リアルのコミュニティの人同士でつながっているSNSも、インターネット上だけのつながりで出入りしているSNSもあるでしょう。そこから得られる情報は、必要/不必要という枠を超え、自分の暮らしに癒やしや潤いや張り合いをもたらせてくれるかもしれません。
しかし、自分に「気にしすぎ」なきらいがあるとわかっているのなら、情報との付き合い方には少し注意が必要です。一言で言えば「気にしない」という心がけです。仏教では、「気にしてしまう」という感情は自分の身勝手な見方から現れると言います。
例えば天気予報で、お出かけを楽しみにしていた週末に雨マークがつけば「残念」だと思うでしょう。しかし雨雲がほんの少しズレて、自分の住んでいる地域はギリギリ降られないとなれば、「ああ良かった。ラッキーだ」となります。自分勝手なことですよね。冒頭の「気持ちが上向いているときは大丈夫だけど」というのも、同じことです。
自分の都合がいいときは、ネガティブなものを見聞きしても平気なのに、気持ちが下を向いているときには同じことでも悪いように受け取って落ち込んでしまう。それは相手がどうだこうだというのではなく、自分自身の心持ち一つによって物事の見方に良し悪しをつけているということにほかなりません。雨雲が雨を降らせるという事実はひとつなのに、その時間や場所によって、残念だ、いやラッキーだと評価を変えるように。
では自分の心とどう付き合えばいいのかと言えば、これはもうそれこそお天気と一緒で、過ぎ去るのを待つしかありません。私も、上に書いたように人間関係でつまずいたり心が折れたりしたときは、引きこもるしかやり過ごす術を持っていません。自分を落ち込ませる原因から距離をとるのです。
もちろんそういう気持ちにならないように努力をする、心を鍛えるのが、お坊さんからの回答としては望ましいかもしれません。けれど、できないものを頑張っても、よけいに苦しくなるだけということもたしかにあるのです。
頑張れる気持ちが残っているときは頑張ればいい。でも、頑張れないときは逃げる、引きこもる。そんな図太さがあってもいいと思いますよ。感情を持つ人間ですから、気持ちに浮き沈みがあるのは当然のこと。沈んだなら再び浮き上がるのを待てばいいのです。
青江覚峰
僧侶 青江覚峰
浄土真宗東本願寺派 湯島山緑泉寺住職。米国カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。「暗闇ごはん」代表。超宗派の僧侶によるウェブサイト「彼岸寺」創設メンバー
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