【商店街の小さな家】第3話:天井が低くても、狭くても。制約は、暮らしやすさに変えられる?

編集スタッフ 栗村

ずっと賃貸派だった丸山さん夫婦の、ひょんなきっかけで始まった、気ままな家づくりを全3話でお届けしています。

第1話では、家を建てようと思った理由やその後の流れを。第2話では、コンパクトな居住空間で、心地よく暮らすための工夫についてご紹介しました。

第3話では、天井の低い寝室やカフェとして使用しているキッチンのお話を伺います。

 

天井が低くても、快適に過ごせる工夫

2階の寝室の天井高は215cm。丸山さんが手を上に伸ばせば、天井に触れるくらいの空間です。天井が低くて使い勝手が悪いことはないのでしょうか?

丸山さん:
「ここは寝るか本を読む場所と決めているので、天井が低いことは気にならないです。むしろ、寝るときは狭い方が落ち着くなあと感じています。

リラックスできるようにインテリアの色味は抑えています。

壁一面に棚を作ったのですが、一部を飾り棚にすることで抜け感が出るので、圧迫感も抑えられました」

▲本棚は、上は文庫本のようなコンパクトなものを、下の方は画集や大型本を収納できるサイズに合わせて造作してもらったそう。

 

場所をとらず、作業台にもなる冷蔵庫って?

最後に、1階のカフェにあるキッチンへ。店舗用のキッチンなので、設備がすごいのかなあと想像していたら、思ったよりもずっとコンパクトで驚きました。

丸山さん:
「いちばん置き場に困ったのが、冷蔵庫です。

家庭用の縦長のタイプを置くスペースがなくて、探していたら、建築家の方が自宅で業務用の冷蔵庫を使っているのを見たんです。

幅が150cmで奥行きが45cm、高さが80cmと、まるで作業台のようなサイズ感で。

食器棚の下に置いて、上に電子レンジやトースターを置いて使っています。便利ですが、ちょっと音がうるさめなので、さすがに居住スペースに置くと気になってしまうと思います」

 

コンパクトでも、機能性を追求したキッチン

▲棚はドイツのアンティーク品の支柱に木材でつくった棚板を載せたもの。

丸山さん:
「それから店舗として営業するために、シンクは2つ設ける必要がありました。棚は後付けしたもので、よく使う調味料やラップ、キッチンペーパーなどを置き、計量カップやキッチンバサミなどはポールに吊り下げています。

コンロは、前からデザインに惹かれていたフランスの「ロジェール」というメーカーのものを、ネットオークションで探して購入しました。下にオーブンも付いているので、焼き菓子なども焼けるかなと思って」

丸山さん:
「今は月に数回、このスペースを使って料理家さんが店を開いたり、近所の店舗と連携してイベントをしたり、マイペースにカフェとして運営している状況です。

道具を持ち込まれる方もいらっしゃるので、作業をしやすいようにスペースにゆとりを持たせています。

食器も店舗用とプライベート用とで分けてはいなくて、同じものを使ってもらっています」

▲手前に倒すと腰掛けられるアンティークのシネマチェアはネットで購入。ちょっとした煮込み料理をするときなどに活躍。

 

住んでわかった「小さな家」のいいところ

丸山さん:
「主に時間を過ごす3Fは約20㎡。ワンルームほどの空間ですが、不便は感じていないんです。きっとこれより大きな家に住んでも、今と同じくらいのスペースしか使わない気もしますし。何よりコンパクトなので掃除が楽チンなのがいいですよ

あともうひとつ、家が小さくて良かったことに、建材にこだわってもあまり値段が変わらないことがありました。例えばちょっといい木材を使おうと、ランクを落としたものを使おうと、見積もりを取ったら金額がそこまで変わらなかったんです。

建築家の方にもこの広さなら、もう好きなもの使った方がいいですよと言われたくらいでした」

 

家を建てる前に、やっておきたいこと

丸山さん:
「もし家を建てる予定があるなら、使いたい照明器具やスイッチ、ブラインドなどの建具は、少しずつ集めておいたほうがいいかもしれません。

家を建てるときに気づいたのですが、いざ家を建てようと必要になったときに、そういう小物を探す時間がないんです。他にも決めることがいっぱいありますし、家の予算にも組み込めないんですよ」

「商店街に建てるから店舗付きの住宅にしよう」という考えは、なんて自由で軽やかなんだろう。

丸山さんを取材するまでは家づくりってもっと力んで考えてしまうものだと思っていました。一生住むのもだから、自分たちの理想を追求していくものだと。

「この先住まなくなってしまうかもしれないけれど、次に住む人も気に入ってくれたらいい」という丸山さん考えは、どこか気ままで新鮮。家づくりって想像しているよりもずっと自由なんだと気づかせてくれました。

(おわり)

【写真】木村文平


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丸山晶崇・糸乃

夫の晶崇さんは、デザイナーとしてデザイン会社の経営と並行して、地域の文化と本のある店「museum shop T」も経営。また、自宅1Fのカフェスペース「HOMEBASE」も運営している。妻の糸乃さんはイラストレーターとして活躍。


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