【わたしと本棚】20代の頃に出合った、思い出の1冊(北欧雑貨店「SPOONFUL」おさだゆかりさん)
編集スタッフ 奥村
本と人との関係は十人十色。好きな本やそれが並ぶ本棚は、その人の生き方や気持ちともリンクしているかもしれません。
連載「わたしと本棚」は、さまざまな分野で活躍する方に、自宅の本棚とそこにおさまる愛読書を紹介していただく特集。
思い入れのある本にまつわるエピソードから、その人となりを紐解きます。
北欧雑貨店オーナー・おさだゆかりさんの「本棚」は?
今回登場いただくのは、北欧雑貨店「SPOONFUL(スプーンフル)」店主のおさだゆかりさん。予約制の実店舗とオンラインショップを営みながら、北欧への買い付けや、北欧旅のコーディネートなどを手がけています。
そんなおさださんに、今回はご自宅の本棚を見せていただきました。
▲寝室の本棚におさまる、食や暮らしの本
おさださん:
「ふだん読むのは料理や暮らし、旅のエッセイが多いです。料理本は有元葉子さん、長尾智子さん、堀井和子さんの著書を長く愛読しています。
本はサイズ別に収納しています。寝室の一角にある本棚には、手に取りやすいB5(単行本)サイズを。リビングのクローゼットの一角には、A4サイズの料理本や北欧で購入した本を。
大きさを揃え、背表紙の色が近いものをまとめるようにするのがルールです」
▲日本のレシピ本や暮らしの本と、買付先の北欧で見つけたレシピ本やインテリア本をリビングに
ジャンルやデザインの違うさまざまな本が並びながらも、すっきりと見えるおさださんの本棚。本の内容だけでなく、並べ方の工夫からもそのセンスをうかがい知ることができました。
今回はその中から、特にお気に入りの2冊をご紹介いただきます。
異国の食や、暮らしへの興味をかき立てられる2冊
「ヴァーモントへの旅」(堀井和子 / 白馬出版)
おさださん:
「20代はじめの頃、当時好きだった自由が丘の雑貨店『キャトル・セゾン』の店頭で、雑貨と一緒に並べられているのが目に留まり購入しました。
当時NYに住んでいた著者が、夫婦でドライブをしながら訪ねたアメリカ・ヴァーモント州への旅を綴ったもの。そこで印象に残った風景や宿の朝食などを、写真とイラスト、エッセイを通じて独自の目線で描いているところが興味深くて引き込まれます。
特に好きなシーンは、『ドライブの途中ならダイナーでライトミール』のページ。
アメリカの映画によく登場する『ダイナー』に昔から憧れを持っているのですが、日替わりのスープやサンドイッチに、そのダイナーの独自性が現れていて、はしごしながら食べ比べするのも楽しそう。
それと、ヴァーモントのダイナーのパイは、他の地域と違って、『甘さ控えめでフレッシュ』なんだそう。私がアメリカで体験したスイーツはかなり甘かったので、これはぜひ味わってみたいものだなと想像を掻き立てられました」
▲堀井和子さんのエッセイをはじめ、異国の暮らしや食にまつわる本もずらり
おさださん:
「この『ヴァーモントへの旅』はシリーズ本で、『堀井和子の気ままなパンの本』、『堀井和子の気ままな朝食の本』などに続く4作目。当時20歳そこそこで雑貨好きだった私は、堀井さんのセンスに魅せられ、新しい本が出るたびに嬉々として手に入れていました。
本の作り自体も贅沢で、リング綴じになっていたり、半透明のマットなプラスティックのケースに入っていたり、今の時代では難しいであろう仕様にもため息が出るすばらしさ。
きっと世界のいろんなものに触れてきた堀井さんが、細部に渡って、とてもこだわって作られてたんだろうなぁと、今でも見るたび感心させられます」
「あるノルウェーの大工の日記」(オーレ・トシュテンセン / エクスナレッジ)
おさださん:
「本のセレクトが好きで、よく足を運んでいる渋谷の書店『SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS』で見つけた1冊です。
ノルウェーの大工さんがアパートメントのリノベーションを半年かけて完成させるまでの日記で、着々と進む作業の様子が淡々と語られています。
フリーランスの大工にとっては、信頼のおける仕事仲間の存在がとても大切。自身もプライドを持ちつつ、各分野のスペシャリストである仕事仲間を敬いながら、協力しあってひとつの物件を完成まで導く工程は、読んでいて気持ちがいいです。
1年の半分以上が冬の北欧では野外の仕事は過酷そのもの。『マイナス10度の今日は暖かく感じられる』『朝9時に明るくなる春はありがたい』といった言葉からは、厳しい自然環境への不満を口にするよりも、そういうものだと受け止めている北欧の人々の強さを感じます。
著者のオーレは仕事にしっかり励みつつ、休日は趣味の釣りを楽しむなど、リフレッシュする方法もちゃんと心得ていて。そんな風にメリハリのある暮らし方にも刺激を受けます」
「読書」はおさださんにとってどんな時間ですか?
おさださん:
「自宅で仕事をしているわたしにとって、仕事とプライベートの区切りをつけるのは、なかなか難しいもの。その区切りの役割を担ってくれて、一番身近に存在するアイテムが本です。
仕事のことがなかなか頭から離れない時に、大きなサイズの洋書を開いて、きれいな写真を眺めながらその本の世界に入っていくと、気持ちが自然とリセットされます。
また、料理をするのは好きですが、毎日の自炊となると、自分の味付けに飽きてしまうこともしばしば。そんな時はレシピブックのコーナーに行って『今晩はこれを作ってみようかな』とか、『そうそうこれおいしいよね』と、しばし頭の中でいろいろ妄想するのも、とても楽しい時間です」
***
次回は、静岡・沼津で雑貨店「hal」を営む、後藤由紀子さんの本棚を拝見します。
(つづく)
おさだ ゆかり
北欧雑貨店オーナー。2005年に北欧雑貨店「SPOONFUL(スプーンフル)」を立ち上げる。現在はオンラインショップと予約制の実店舗を運営しつつ、全国でのイベント販売や、北欧雑貨ツアーの企画、カルチャースクールの講師を務めるなど活躍。近著に『北欧 ヴィンテージ雑貨を探す旅』(産業編集センター)、『わたしの北欧案内 ストックホルムとヘルシンキ』(筑摩書房)など
「わたしと本棚」
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