【エッセイラジオ】第7夜:齋藤 美和さんのエッセイ「ふたりの母」(読み手 スタッフ寿山)
編集スタッフ 岡本
今日も1日おつかれさまでした。
皆さんこんばんは。日曜日の20時、いかがお過ごしでしょうか?
週末でリフレッシュされた方や、明日からの一週間に備えて気持ちを整えている方、思い思いの時間が流れていることと思います。
そんな誰もがほっと一息つきたい時間に「おつかれさま」の気持ちを込めて、「エッセイラジオ」をお届けします。
思うようにいかなかった昼間の出来事や、いつも心の端に引っかかっている悩み事など。生活していると日々色々とありますが、このラジオを聴いているその時間だけは、一旦それらを手放して、ゆったりと声に身を任せていただけたら幸いです。
今夜のエッセイの書き手は、「しぜんの国保育園」園長・齋藤 美和さん。読み手は、当店スタッフの寿山です。
ではさっそく、今夜のエッセイの世界へ、どうぞいってらっしゃいませ。
ふたりの母
齋藤 美和
私の母は、ずっと専業主婦。
夫の母は、ずっと働く母。
ふたりの母の間で、私は母になった。
ふたりの母との間で、
それぞれ私の中に
くっきりと残っている会話がある。
息子が0歳児の頃から少しずつ仕事に復帰し、
仕事と育児と家庭を両手で抱えながら、
右往左往していた時。
自分に母がしてくれていたような、
手の込んだ料理や、毎日の雑巾掛け、
お風呂やトイレの掃除など、
半分も出来ていなかった。
夫が家事も育児も
一緒にやろうねと言ってくれる人で
ありがたいなと思いながらも、
母のような自分になれない
不甲斐なさも感じていた。
「わたし、お母さんがしてくれたこと、
全然家族に出来ていない。
はるくんと一緒にいる時間も
すごく短いし」
と言ったら、
「そう。でも、
夫婦で働くあなたたちを見ていて、
こういう子育てもいいなって、
私思っているのよ、最近。
いいんじゃないかな、
美和らしい子育て」
と話してくれた。
母の温かい手のひらで、
心に柔らかく「気」を入れて
もらったような気がした。
また、仕事の悩みをよく相談する
夫の母との会話で、
緊張の糸が切れて
涙が出てしまったことがあった。
「あのね、
仕事は人のためにしているようで
全て自分のためにしているのよ。
保育を仕事にするということは、
美和さんの人格の形成になる。
美和さんは、いつも転んでは起きて、
また転んで。
でも、最終的には立ち上がっている。
それを私は知っている」
と言ってくれた。
「私を見てくれている人がいる」
その心強さをふたりの母から
教えてもらった。
だからこそ、
乗り越え、乗り切ってこられた。
この仕事に出会って、もうすぐ15年。
「自信がないんです……」
という新人さんに思わず、
「私もないの……」
と言いたくなることもある。
自信なんて人につけさせて
もらうものじゃない。
人に持たされた自信なんて
そんなもろいものはないから。
でも、大人だって誰かが自分を
大切に思っていてくれることで、
安心して、まわりの人を
大切にすることができる。
きっとそれが自信につながる。
同じように私も。
今、目の前にいる子どもたち、保育者、
そして子どもたちの家族を
大切に思うこと。
それが、私の自信につながるといいな。
そして、いつか誰かにとって
ふたりの母のような存在になれたら。
小さな目標をしのばせて、
この先も続く人との出会いの中で
私は私と暮らしていく。
いかがでしたか?
ほんの数分ではありますが、心の緊張がほどけたり、すうっと眠りに入るきっかけとなれたなら、これほど嬉しいことはありません。
次回の配信も、どうぞ楽しみにしていてくださいね。
エッセイラジオを通して、このささやかなエールが届きますように。それでは、おやすみなさい。
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