【久しぶりの読書】第1話:読みたい本と出合いたい。久々の本屋の歩き方

編集スタッフ 岡本

自分のために本を買ったのはいつぶり?

絵本でもなく、育児書でもなく、仕事用の資料でもない。そんな自分が好きで手に取った本を、先日久しぶりに買いました。

考えてみたら2年ぶりくらい。それはちょうど子どもの年齢と一致します。

読もうと思えばすきま時間でいくらでも読めたのだろうけれど、ここ最近まで「読む」以前に「本を選んで買う」余裕がなかったように思うのです。

でも思えば、学生時代に嫌なことがあって現実逃避をしたくなったときはいつも本の世界が助けてくれたし、転職したときは道標のような本に出合って嬉しい気持ちになったこともありました。

そうそう、私、本が好きなんだった。そんなふうにふと思い出したのです。

けれど、久しぶりに一人で本屋さんを訪れたとき気付いたんです。想像以上に緊張していることに。

ベビーカーだと本棚の間はちょっと歩きづらいな、子どもが大きな声を出したら迷惑かな。なんて考えて、ここ数年、必要な本はインターネットで買うことが多かったから。

本屋さんでじっくりと読みたい本を探したり、一晩で一気に読んだりするのはまだ難しいかもしれないけれど、今の私と本の、よい付き合いを始められたら。

そんな思いを抱えて、東京・青山にある「青山ブックセンター」を訪れました。お話を聞いたのは、書店員歴5年の青木さんです。

 

「読みたい本がない」=本屋を楽しむ要素

目当ての作品があるわけじゃなく、ただ漠然と「本が読みたい」。そんなとき、「読みたい本」と出合いやすい本屋の歩き方ってありますか?

青木さん:
「以前は小説が好きだったから小説コーナーから見ようなど、あまり最初からカテゴライズして探しに行くと、読みたい本と出合いづらいように思います。

例えばミステリーが読みたいと思ってそのジャンルを見てピンとくるものがないと、探す時間だけが過ぎて何も買わずに帰るなんてことになってしまう。

私は本屋さんって、ふらりと入って知らない本と出合う場所だと思っています。だから、読みたい本がないって、実は本屋を楽しむ要素のひとつなんですよ」

私はこれまで明確にほしい本があって、それを買うために本屋へ行くことが多かったので、「知らない本と出合う場所」という感覚が新鮮でした。

とは言っても、仕事の休憩時間や保育園のお迎え前など、ちょっとした時間に本屋を覗くことの多いここ最近。もう少し「読みたい本と出合う」ヒントがほしいとも思うのです。

 

ここは、本屋の個性が出るところ。

青木さん:
「じっくりと本を選ぶ時間が取れないときは、ぜひ『新刊台』を見てみてください。

ここは私たち書店員が今読みたい、読んでほしいと感じている本を集めた場所。

売上ランキング順に平積みしているお店もありますが、うちのように “書店員の推したい本” をずらりと並べているところもあります。ここは本屋の個性が出るところなんです。

当店の馴染みのお客さんからは、『選書している人の顔が見える新刊台』なんて言われることも。この言葉はとても嬉しくて励みになっています」

青木さん:
「本屋へ行くのがかなり久しぶりで緊張してしまう方は、大型店でなく、こじんまりした本屋を選ぶと肩の力を抜いて、本を選べるかもしれませんね。

個人書店にも魅力的な本がたくさんあります。店主の人柄がでる本屋はそれぞれに色があって、ならではの良さとして楽しんでほしいです」

 

活字が読めない……。そんなときは

青木さんは書店員として本に囲まれて過ごしていますが、活字が読めないと感じるときはありますか?

青木さん:
「もちろん、ありますよ! 本って、心に余白があるときに開くとすーっと自分に溶け込んでくる気がするのですが、心が落ち着かないときに目を通すと、頭にも心にも入ってこない。

そういうときは潔く本と距離をとります。

書店員の仕事ってあまり知られていないと思いますが、お店に並ぶ本の選書だけでなく、イベントの運営や読書感想文の制作などさまざまなんです。明日までに提出しないといけない本が1ページも読めないときもあって、本を見るのがしんどいなと感じるときも。

でもそんなピンチから、本が救ってくれるときもあるんです。

私の場合、活字が読めないなあというときは、写真集や建築書を読むと心が落ち着きます」

▲青木さんお気に入りの写真集「うれしい生活」植本一子(河出書房新社)

青木さん:
「他には、これまでに何度も読んだ自分の好きな本を読むと自然と読書モードに切り替わっていることもありますね。私に取っては、川上未映子さんの『すべて真夜中の恋人たち』(講談社)がまさにそれ。

何が起こるか、次にどんなセリフがくるかも分かっているから、いい具合に肩の力を抜いて読めるんです。これまでに読んだ本を思い返してみると、そんなお守りみたいな本がきっと見つかりますよ」

この日は、開店前のシンと静かな店内での取材でした。以前訪れたことがあるとはいえ、都内の本屋さんということもあり私はまた、少し緊張気味に。

けれど、たくさんの本に囲まれて青木さんとおしゃべりしていたら改めて、本屋さんの、そして読書の面白さに触れられた気がしました。

「うちはそれほど広くない店舗なので、ぐるりと一周見て回るのもあまり時間はかかりません。散歩の延長に、くらいの感覚で足を運んでくださいね」

本と少し距離が生まれて引け目を感じていたけれど、もう少し気軽に捉えてみよう。青木さんからのこの言葉をきっかけに緊張の糸がふっとゆるみました。

続く第2話では、久しぶりの読書におすすめな本をご紹介。読み切らなくても大丈夫。スキマ時間でもちゃんと楽しめる本を教えていただきましたよ。

(つづく)

【写真】木村文平

もくじ

 

青木麻衣

青山ブックセンター勤務。書店員歴5年で文芸書を担当。公式インスタグラムなどではおすすめの本などを紹介している。一番好きな本は、川上未映子さんの『すべて真夜中の恋人たち』(講談社)。


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