【44歳のじゆう帖】「写真」について思うことあれこれ
ビューティライターAYANA
コンパクトカメラが宝物だったあのころ
大学生のとき、コニカのビッグミニというコンパクトカメラにハマりました。時代はHIROMIXやソフィア・コッポラの全盛期。私はせっせと最寄駅前のタバコ屋にフィルムを出し、写真を現像してもらっていました。
ビッグミニが故障してしまったあともリコーのGR-1に乗り換え、その頃は一眼レフも持っていたけどそこまでハマらず、ズームのないコンパクトカメラこそが正義だと思っていて、日常の何気ないシーンを撮っていました。
あの頃撮った写真をたまに見返すのだけど、そのなかの何枚かは、今でもなかなかいいじゃんと思ってしまいます。
目の前の風景を瞬間的に一枚におさめるという行為が好きでした。シャッターを押すだけで、一枚の紙に印刷されたものが生まれてしまう。それはまるで魔法みたいでした。
現像するまでどうなっているかわからないところも魅力でした。私は露出や絞りを調整することもなく、レンズを変えることもなく(コンパクトだから)、意識するのはフレーミングくらいで、あとはそこにある光や空気や被写体やこのカメラや、現像のときに好んでいたマット仕上げがいい感じにしてくれるんだよね、と思っていました。
今こうして言語化してみると、ずいぶん他人まかせですけれど。
好きな写真家もたくさんいて、写真集も大好きだったけれど、私もフォトグラファーになりたいんだ!と思うことは一度もなかった気がする。何かもっと、日々の支えとして個人的に写真を撮っていたのかもしれません。
写真は饒舌だけど、すべてを語らない
写真は、文章よりも饒舌に情報を伝えてくれるものだと思います。
文章は受け手が能動的に読み解こうとしなければ、理解されないままそこに放置されてしまう線の集合体ですが、写真にはすでにグラフィックとして物語が写っており、受け手はパッと見るだけでも、なんらかの情報を読み取ってしまうものです。
また、写真は映像よりも想像力を掻き立てるものだと思います。映像には、一枚の写真よりもさらに多くの情報が詰め込まれている。動きがあり、音声もある。写真のなかにあるのはあくまでも切り取った一瞬で、その前後や、延長線上にある世界はこちらで想像するしかない。そこに自由を感じます。
そして、絵画よりもリアリティを持っています。今はCG技術によって写真のなかにあるものが完全にリアルであるとは言えなくなりましたが、それでも、あらゆる写真の加工は「写真とは事実を写すリアルである」という前提のもとに成り立っている気がします。
この程よい距離感、温度感が、私が写真に夢中になる所以なのかな、と思います。
息子にチェキを与えてみた話
私がコンパクトカメラに夢中になっていた時代とは違って、今はスマホの登場によって写真を撮るということが日常的な行為となりました。写真が持つ概念も変わり、何枚撮ってもフィルムが無駄になることはないし、失敗してもデータを消去すればこの世から消えてしまいます。
私は昔から写真に写ることが非常に苦手で、それは自分の容姿に自信がなかったからなのですが、写真を撮られる機会が今よりも圧倒的に少なかったことも大きな要因なのかな、と分析しています。
5歳の息子は撮られ慣れていて、カメラを向けると自然にポーズを取ったり、ナチュラル風に佇んでみたり、あるいはカメラを意識せずに自分がやっていることに集中したりと自由に振る舞います。カメラを向けられて緊張することなんてない。一切の気負いがないのです。
撮るときも、躊躇せず何枚でもシャッターを押します。羨ましいな、と思ういっぽう、大事にシャッターを押す経験がないことに、なんとなく寂しさを感じていました。
先日、息子と休日を過ごすにあたりチェキを購入してみました。
かつての私は目の前にある風景がシャッターを押すことで一枚の写真になることがとんでもなく嬉しかったけど、息子はそういえば、私のスマホで写真を撮っても撮りっぱなし。自分が撮影した一枚の写真と対峙する機会はなかったな、と思ったのです。
今のチェキは、デジカメのように写真を撮ってデータをストックし、その中から選んでプリントすることができます。なんて経済的!これなら息子が撮影に失敗しても、何の問題もありません。
息子に持たせてみたところ、不思議なことに、スマホで写真を撮っているときよりも1枚1枚を丁寧に撮っているではないですか。さらにプリントは厳選に厳選を重ねた1枚(私がケチって牽制しているからですが)。そう、この感じだよ!となんだか感動してしまいました。
スマホで気軽にパシャパシャ撮ることも、じっくりアングルを決めて1枚のシャッターを大事に押すことも、どちらも大切にしてほしいなと勝手に思っている次第です。
【写真】本多康司
AYANA
ビューティライター。コラム、エッセイ、取材執筆、ブランドカタログなど、美容を切り口とした執筆業。過去に携わった化粧品メーカーにおける商品企画開発・店舗開発等の経験を活かし、ブランディング、商品開発などにも関わる。instagram:@tw0lipswithfang http://www.ayana.tokyo/
▼AYANAさんに参加してもらい開発した、オリジナルのメイクアップシリーズ
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▼AYANAさんも立ち会って制作した、スタッフのメイク体験スペシャルムービー
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