【スタッフのお宅訪問】第1話:築50年のマンションをフルリノベーション。スタッフ野村宅のインテリア
編集スタッフ 石川
本日から全3話で、特集「スタッフのお宅訪問」をお届けします。
今回紹介するのは、当店のデザインチームで仕事をする、スタッフ野村の自宅。
購入した中古マンションを、フルリノベーションした55平米の1LDKの部屋に、夫婦2人で暮らしはじめて4ヶ月が経ったといいます。
1話目では、迷いを重ねながら、建具から壁の色まですべて自分たちで決めたという内装全体について、聞いていきます。
これまでは賃貸暮らしだった野村。どうして中古物件を購入してリノーベションすることに? 膨大な選択肢を前にどうやって決めていったのだろう……そんな疑問もぶつけました。
キッチンを主役にして、ひと続きの空間に
野村が暮らすのは築50年弱のマンション。玄関の扉以外は、間取りも含めてすべてリノベーションしたそう。まずは、全体のレイアウトを見せてもらいました。
▲野村宅の間取り。ダイニングキッチンとリビングの間には壁がない作りです。
玄関を入ってすぐにダイニングキッチンが。その奥にはリビングがひと続きで広がっています。
玄関とキッチンの間には、入口がアーチ状にくり抜かれた小部屋が。ここは普段、パントリーとして活用しているのだそう。冷蔵庫、調理家電のほか、食器や食材ストックもまとめて収納されています。
部屋の奥はリビングスペース。もともとは壁で2つに仕切られていたそうですが、リノベーションの結果壁をなくし、ダイニングキッチンとつながった空間に。
実は、この2つの空間で、床材に切り替えがあるのも大きな特徴です。こうして空間をゆるく分けることにしたのだそう。
当店のプレイリストの作成も担当している野村。ソファの奥には、同じく音楽を聴くのが趣味だという夫の、レコード棚とターンテーブルが。
さらに奥には、机と飾り棚を作りつけたワークスペースがあります。壁の向こうは寝室になり、採光と換気のために木枠の窓がつけられていました。
「リノベーションに、ずっと興味があったんです」
野村:
「前の家は賃貸だったのですが、次に住むなら持ち家もありかな?と考えていたところだったんです。そんなとき、最近家を買ったという当店の別のスタッフの話を耳にして。
話をするなかで、『ライフスタイルが変わったら、売ったり貸したりする選択肢もある』と知れたことが、物件購入の後押しになりました」
野村:
「それに加えて、私自身、いつかフルリノベーションに挑戦したいという気持ちがずっとあったので、このタイミングでやってみることにしたんです。
ただ、フルリノベーションできる物件は想像以上に数が少なくて。すぐに見つからなければ、今回は諦めてまた賃貸でもいいかな……と思っていたところ、運よく条件に合う物件が見つかり、思い切って購入を決めました」
学生時代には建築の勉強をしていたという野村。家づくりの中で、特にこだわったことについて、聞いてみました。
野村:
「1番のこだわりは、内装をとにかく『シンプルにする』ということ。私自身、色々なテイストのものが好きですし、今後好みもコロッと変わるかもしれないと思っていて。
だから、将来的にどんなテイストのものを持ったり飾ったりしても、包容できる家にしようと最初に決めていました。
使う要素は『白・黒・グレー・無垢の木』という4つに絞って、建材のデザインも特徴のありすぎないものを選ぶようにしました」
入ってワクワク。洗面所やトイレには、遊び心を
野村:
「ただ、大きな面積を占めるダイニングキッチンとリビング以外は、遊び心を持たせてもいいかなと思って。
そこで、洗面所は木をより多めに使ったナチュラルなテイストにしてみました」
野村:
「トイレは、さらにガラッと雰囲気を変えてみることに。壁には濃いグレーを塗り、好きな作家さんのランプを吊るして、洞窟のような空間にしました。
もともと持っていたポップな絵柄のポスターや、キャラクターものの置物は、ここに置くことに。ただのトイレではあるのですが、入るたびにちょっとワクワクしてしまいます」
迷ったときは、最初に決めたルールに立ち返って
とにかくシンプルさにこだわったという、野村宅。いちからのリノベーションとなると、細かなところまで自分で全て決めるのは大変ではなかったのでしょうか。
野村:
「大変でした!(笑)少なくともこれから10年は住むことになる家なので、設計の段階で『本当にこれで大丈夫……?』と迷ったり、不安に思ったりするタイミングは、何度もありました。
隅々まで施工会社さんと綿密に打ち合わせていましたが、それでも工事に入る直前まで『もっといい選択肢があるんじゃないか』と、気持ちはずっと揺れていました。
例えばパントリーの棚材をどうするか、なんてところ一つとっても悩んでしまっていましたね」
野村:
「ただ、そうやって迷った時には『シンプルなほうを選ぶ』というルールを思い返すようにしました。
パントリーの天板についても、空間の色数を増やさないよう、木材ではなく壁にあわせた白色に。リビングのTV上にライトをつける案も上がっていたのですが、最初から部屋を飾りすぎないよう、あえてつけませんでした。
選択の軸を最初に決めていたから、そうして悩んだ箇所も、最終的には納得して決められました。今思うと、先に『自分ルール』を決めておくのは普段からのクセかもしれません」
制約があるからこそ、暮らし方を決められた?
野村:
「そうは言ってもやっぱり、『もっとこうすればよかった』と思うところもあるんです。
例えば、収納。間取りとの兼ね合いで、部屋の角に小さな収納をいくつか設けるようにし、大きめのスペースは作らなかったんです。でも、実際住み始めてみると、もうすでにギチギチになってしまっていて」
野村:
「でも、収納が少ないならば『持ちものは、ここに収まる分だけ』という風にしたらどうだろう?と考えるようにしたんです。
すると、それを機に持ち物を見直すことができ、自分たちにはそれが合っているんだとも気づけました。夫も、私が新しい雑貨や食器を衝動買いしそうになっていると『それ本当にいるの?』と聞いてくるように(笑)。
そうやって、現実と自分たちをすり合わせながら暮らしていくのもおもしろいなと思えたのは、発見でした」
野村:
「いちからのリノベーションだと、自分好みにできることも無限大だと思っていたけれど、広さや間取り、水場の位置など、制約も当たり前に存在することがわかりました。
最初はそれがマイナスに思えたけれど、自分たちの暮らし方の『基準』が与えられたような気もして。今は、その制約をプラスに考えられるようになりました」
どんな風に好みが移ろいでも、この家が受け止められるようにしたい。そのために、シンプルなほうを選びとっていった野村宅のインテリア。
足を踏み入れた瞬間から、訪れる人をもありのまま受け止めてくれるような、ふわりと心地よい空気が流れていたのは、そんな野村の自宅の「包容力」ゆえだったのかもしれません。
第2話では、野村が特にこだわったという、ダイニングキッチンを見ていきます。
(つづく)
【写真】木村文平
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