【キッチンからはじまる暮らし】第1話:どのアイテムも見渡しやすい、料理家さんのキッチン
ライター 藤沢あかり
家のなかで、長い時間を過ごす場所はどこだろう。料理好きの人なら、キッチンにいることが多いかもしれません。
鍋やフライパンなどの調理道具から小さなスポンジに至るまで、お気に入りのものが見つかれば気分もぐんとあがります。おたまの置き場所をちょっと変えただけで、「あ、使いやすい」とうれしくなることもありますよね。
長い時間を過ごすキッチンの快適さは、日々の気分につながっているようです。
料理を仕事にする人なら、当然キッチンにいる時間が長いはず。そこはきっと使い勝手がよく、楽しく料理ができる場所になっているのではないでしょうか。
そんなことを想像しながら向かったのは、料理家のminokamo(ミノカモ)さんのお宅です。全国を訪ね、各地の郷土料理や食文化を取材しメディアで伝えたり、うつわや道具の作り手と使い手とをつないだりといった仕事をしています。
さっそくおじゃましてキッチンへ。リビングから続く半独立型のスペースは、minokamoさん流に整えられているようです。
さらにキッチンだけでなく、リビング・ダイニングを含めた全体が、食を楽しむための空間になっていました。その使い方や小さな工夫を、4話でお届けします。
1話目では、使いやすそうなそのキッチンを、じっくりと拝見しました。
必要なものが、手を伸ばせばすぐそこに
シンク、作業台、コンロがひと続きになった壁付けタイプのminokamoさんのキッチン。その正面の壁一面に、DIYで有孔ボードを取り付けています。よく使う大中小のステンレス鍋に計量カップ、茶こしにキッチンバサミ、たわし……。
実はご本人いわく「収納が苦手」なのだそうです。
minokamoさん:
「普段あまり使用しないストックは奥に収納し、使う頻度の高いものは見渡せるように収納しています。
よく使う道具や調味料は、有孔ボード用のフックや棚受けを使ってすぐ手が届く状態にしています。パーツは、どれもホームセンターで取り扱いがありますよ」
▲こんなユニークなところを発見。ステンレスのお弁当箱の中身は、使いかけのしょうがとにんじん。「朝に使って、またすぐ夜も、というときには、このぐらいがちょうどいいんです」
見せる収納は、素材感を統一
見せる収納はこちらでも。キッチンの背面は、上半分をホームセンターで購入した2×4(ツーバイフォー)材を使ったオープンシェルフにしています。
▲取り付けパーツは、東京・恵比寿にある『P.F.S.PARTS CENTER』で購入した「PILLAR BRACKET」を使用。
高い位置には、大小さまざまな自然素材のお弁当箱がずらり。手を伸ばしやすい目線の位置には、豆皿や調味料を並べていました。
minokamoさん:
「豆皿は使い勝手がよく、なにかとちょこちょこ使うので、作家さんの展示会や旅先などで買い集めています。ここだとすぐに取り出せて使いやすいです」
▲下段のかごに入っているのは箸置き。いただいたお土産物が入っていたかごを使っているそう。
minokamoさん:
「見せる収納で、気をつけているのは、素材感を統一すること。
たとえばお弁当箱は木やかご、ステンレスと分けておいたり、カトラリー類も、ステンレス、木、真鍮と素材や色でざっくりと分けています。しまいやすく、使うときも取りだしやすいです」
そういえば、有孔ボードにかけた道具類も、ステンレスやアルミ素材で統一されていました。
minokamoさん:
「整頓に悩んだときは、素材を揃えるのもひとつの方法じゃないかしら。わかりやすく、見た目もすっきりしますよ」
保存瓶は、いろいろな形が楽しい!
「調味料や保存食などで活躍した瓶です。形が不揃いなのも愛嬌かな」と笑いながら見せてくれたのは、乾物やスパイスがたっぷり入った引き出しです。
minokamoさん:
「食材の空き瓶に昆布や干し椎茸、シナモンなどの食材を入れています。瓶に入りきらないストックは、奥にまとめました」
それぞれの瓶のふたには、イラストを添えた手描きラベルが貼られています。高さも色もバラバラの瓶ですが、こうしてぎゅっと集まるとかわいらしいですよね。
わかりやすい収納で、調理しながら楽しい気分になるように。日常に無理のない収納スタイルは、こんなところにもありました。
背面のDIYシェルフの足元は、ちょうどよい奥行きのプラスチックケースを並べた収納です。なかには缶詰や粉物、パスタなどの食品ストックがぎっしり。
minokamoさん:
「友人がこうやって使ったらいいんじゃない? と提案してくれたんです。ざっくりとしまえるので便利です。ケースの中身がわかるように、ラベルをつけてジャンル分けしています」
大切なものを見渡しやすく、等しく使えるように
minokamoさん:
「うちにあるたくさんのアイテムは、それぞれに旅先での楽しかった記憶と重なっていたり、職人さんの手仕事を取材したときの温かい気持ちを思い出せたりするものばかりです。調味料や乾物も、旅先で買うこともたくさんありますし、土産話と一緒に友人におすそ分けすることもあるんです」
minokamoさんのキッチンの魅力は、国内外あちこちを旅しながら時間をかけて集めてきた、にぎやかな表情の道具たち。作家物のうつわから、インドのステンレス容器まで、テイストや素材もさまざまです。だからこそ、ちょっと手を加えながら自分らしく、使いやすく。
一つひとつに愛情がこもるminokamoさんの「働くキッチン」。次回は、たくさんのうつわを収納した、食器棚エリアを拝見します。どうやら活躍しているのは、りんご箱のようです。
(つづく)
【写真】市原慶子
もくじ
minokamo
料理家、写真家。岐阜県美濃加茂市出身。祖母と一緒に料理したことが料理活動のはじまり。日本各地の郷土食の取材にも力を入れている。近著に『料理旅から、ただいま』 (風土社)がある。http://minokamo.info
ライター 藤沢あかり
編集者、ライター。大学卒業後、文房具や雑貨の商品企画を経て、雑貨・インテリア誌の編集者に。出産を機にフリーとなり、現在はインテリアや雑貨、子育てや食など暮らしまわりの記事やインタビューを中心に編集・執筆を手がける。
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