【45歳のじゆう帖】「後戻り」や「立ち止まる」ことのたのしさ

ビューティライターAYANA

45歳の誕生日にみつけた2本の白髪

最近白髪を発見しました。45歳、年齢的には白髪のひとつやふたつあって当然というか、むしろ遅いほうではあるのですが、みつけたときは自分でも驚くほどショックでした。

これまで「若く見える」という言葉にそこまで魅力を感じたことがなく、「年相応なのだけれども美しい」みたいなところを目指したいと思ってきました。だから白髪なんてむしろウェルカムなはず。なぜ自分がここまで動揺するのか? そんな自分にいちばんショックだったのかもしれません。

こういうとき、自分の認識の甘さに愕然としてしまいます。「年相応」という言葉の雰囲気に酔っていたのではなかったか、と。私は想像以上に、白髪のない状態を前提として考えていたのだと思います。

とはいえ、きっとそのような動揺は長くは続かず、これから白髪を伴った髪について、どのようなスタイルを楽しんでいくか、考えるのも楽しみになっていくのだろうと思います。増えていく白髪にあわせてハイトーンにしてみても楽しそうだし、メッシュを入れてみてもいい。もちろん全部をダークカラーにしてみたり、白髪だけ青く染めちゃうとか?

カラーによるダメージをどうケアしていくのかということも含めて、知性が求められる遊びという感じで、ちょっと考えはじめるとワクワクしている自分がいます。

もちろん、継続的にやっていかねばならないということを考えると、時間もお金もかかるので、いいことばかりではないかもしれませんが。

昨日までは不要と思っていたのに

話はガラリと変わるのですが、4月から息子が小学生になり、学童保育のお世話になっています。お弁当を作る機会がぐっと増えてしまい、先日思い切って卵焼き用のフライパンを購入しました。きっかけは、この連載の担当編集・寿山さんによるレビュー記事です。

私はこれまで、卵焼きを焼くためだけのフライパンに興味を持っていませんでした。鍋や食器は凝り出すとキリがないので、色々な機能を兼ね備えたものを少数精鋭で持つという姿勢だったのです。別に丸いフライパンで焼けばよくない?と思いながら、うまく焼けたことはなくていつもストレスでした。

(実際そう考える方は多いようで、「卵焼き フライパン」で検索すると、丸いフライパンで卵焼きを作る方法を示すサイトが続々ヒットします。これが上手にできる方もたくさんいらっしゃるのだろうと思います)

そこまで頻繁にお弁当を作る機会もなく、毎回卵焼きに失敗しては微妙な気持ちで終わるということが続いていました。が、レビューを見て、これはもしかしたらちょっと楽しいんじゃないか?と思ったのです。弁当の日が続くにあたって、手際良く卵焼きが作れたら嬉しいかもしれない、と。

結果、購入は大正解。なんのストレスもなく、短時間でおいしい卵焼きが作れるようになり、「今日はしらすとごまと紫蘇で」とか「チーズと青のりと醤油で」みたいに中身に凝る余裕が生まれました。

あの卵焼きへの憂鬱な心模様はなんだったのか?気持ちの変化としては、受験勉強と遊園地デートくらいの落差があります。

過去の自分に縛られない生きかた

「私はこういう人間である」とか「私はこういうことにこだわっている」といった認識、あるいはスタイルや指針といったものは、生きていく上で非常に大切なものです。精神の拠り所になるし、そこに励まされることだってある。そして構築していくことは楽しいけれど大変なことだ、とも思います。

大変だったからこそ、自分の指針を打ち立てることができたとき、今度はそれを壊すことが怖くなる。その指針に甘んじて、今の自分にフィットするかどうかを点検する作業を怠ってしまう、そもそも、点検が必要だとすら感じないかもしれません。

でもそこを少し切り崩したり、捉え直したり、後戻りしてみることによって、思わぬ素晴らしい世界が待っているということは往々にしてあるのだな、と思います。

私はあまり過去の自分に戻りたいと思いません。今の自分にもダメなところや気に入らないところは数えきれないくらいあるのですが、過去の自分と比べる限りは、今のほうがかなりいいなと思えるんです。それはここ15年くらいずっと感じていることで、そこには「前進している」という、山あり谷ありだとしても、前に向かって絶えず進んでいる実感があります。

だからこそ、これからも絶えず前進していきたいという欲や執着が生まれてしまう。そこをぐっと冷静になって、ときには後戻りしたり、立ち止まってみることも大事なのかもしれません。

昨日まで信じていた指針を、それが自分にとっての重要なアイデンティティだとしたって、手放してみること、思い直してみることは全然構わない、そう捉えてみる。

結果としてそれが豊かな前進につながることもあるんじゃないか、そんなふうに思います。

 

【写真】本多康司

 

AYANA

ビューティライター。コラム、エッセイ、取材執筆、ブランドカタログなど、美容を切り口とした執筆業。過去に携わった化粧品メーカーにおける商品企画開発・店舗開発等の経験を活かし、ブランディング、商品開発などにも関わる。instagram:@tw0lipswithfang  http://www.ayana.tokyo/

 

AYANAさんに参加してもらい開発した
KURASHI&Trips PUBLISHING
メイクアップシリーズ

AYANAさんも立ち会って制作した
スタッフのメイク体験
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