【チャーミングな家】第3話:日々更新? 夫婦それぞれ「らしさ」のある仕事場
ライター 小野民
現在進行形で変化する、遊び心たっぷりのお宅訪問第3話です。
建築家の戸田晃さんの自宅は、真ん中に中庭を配置した、光と緑を家のどこにいても感じる素敵なつくり。今回は、2階にある仕事場を訪ねます。
仕事場のひとつは、20年前の建築時からあった「戸田晃建築設計事務所」の事務所。もうひとつは、娘さんが巣立った後に子ども部屋から変身を遂げた、妻・優子さんの仕事部屋です。
インターフォンは1階の自宅、2階の「戸田晃建築設計事務所」に通じていて、2階にそれぞれの仕事部屋もあります。
朗らかに働くために、「息抜き」できるワークスペース
晃さん:
「事務所の手前の空間は打ち合わせなどに使い、奥は作業スペースにして緩やかに区切っています」
仕事場のインテリアは、毎日のように少しずつレイアウトが変わっているそう。大きな模様替えではなく、仕事の手を止めて、使い勝手がいいように部屋を整えていくささやかな時間も、息抜きになっているようです。
大きな本棚、小さな本棚が増殖中
レイアウトの経年変化だけでなく、DIYで作ったものも少しずつ増え、今では部屋のあちこちに晃さんがつくったものが置いてあります。
例えば本棚。壁に棚を少しずつ増やして、増える蔵書に対応。
こちらは壁に見えますが、実は仕事の資料がぎっしりの本棚の裏側。窓のようにくり抜いた部分には、来客用の本を並べています。
よく使う道具は、出しっぱなしでいい工夫
仕事で必要なものが、欲しい時にすぐに取り出せるようにするには、引き出しにしまうよりも、パッと手が伸びるところにある方が便利。仕事場の入り口付近の壁には、手づくりの文房具入れがありました。
最近よく使うようになったのが、このイヤホンかけ。オンライン会議などが増えたため、パソコンを使うデスクの隣にフックを配置したら、迷子になりがちなイヤホンも定位置を見つけました。
そして工具も、もちろんすぐに使える場所にあって、晃さんのDIYのアイデアが閃くのを待っているのです。
子ども部屋から変身。カラフルな再スタートの場所
一方の優子さんの仕事部屋は、まだ使い始めて3年ほど。娘が巣立って空いた子ども部屋を利用しています。ロフトがあり、壁には子どもの描いた絵が残されていて、もとの部屋の気配もちらり。
もともとテキスタイルデザイナーの優子さんは、専業主婦を経て、かつて勤めた会社のパートタイムのショップ店員に。現在も店頭に立ちながら、自身の服飾雑貨の製作もスタートしました。
優子さん:
「この部屋を子どもが使っている頃は、リビングでその都度ミシンを出して作業していました。ちょうどよくしまう場所があったのでよかったのですが、専用の部屋ができてミシンを出したままでいいのは楽ですね」
優子さんがつくるのは、カラフルな色やクスッと笑えるかたちが楽しいバッグ。作品が生まれるのは、やはり遊び心のある部屋なのだと納得です。
板を組み合わせるだけ。部屋の主役のデスク
▲いただきもののクレヨンの空き缶は、板に小さな釘で固定してマグネットでメモを張れる場所
優子さん:
「この部屋にあるものは、ほとんどうちにあったものを組み合わせただけ。机ももともとあった板に足をつけたり、キャスターを付けた引き出しの上に置いたりしただけなんですよ」
晃さんも優子さんも「いい感じの板さえあれば、勝ち!」と揃って言うように、味のある天板を見つけると手元に置いておくそう。
パソコン作業用の机と、ミシン台を直角に配置。ひとつの椅子でどちらも作業もこなせるようになっています。
▲机を支える片方はキャスター式の引き出し
▲もう片方は、合板に蝶番をつけてくの字に置いただけ。上の板が重いのでしっかり支えられています
いざ机や棚が必要となれば、出番待ちの「いい感じ」の板が少し手を加えられて活躍するのです。机を支える白い引き出しは、娘さんの学習机を支えていたもの。さらに遡れば、晃さんが子ども時代から使っていたものだそう。
▲たたむとイカ、広げると防水仕様のバッグになる優れもの
それぞれらしさのある仕事部屋に共通するのは、DIYもしながら、居心地や使い勝手がいい空間にしていること。
仕事場でありながらも、堅苦しい雰囲気はまるでなく遊び心を感じさせるインテリア。素敵な場所に身を置いているからこそ、明るい雰囲気をまとった建築やバッグが生まれるのだと思いました。
最終回は、2人のDIYのアイデアに注目。磁石1つからできる簡単なことや子どもの遊び道具、きっとすぐに真似してみたくなる楽しい工夫が満載です。
(つづく)
【写真】鈴木静華
もくじ
戸田晃
1959年東京都生まれ。東京都立武蔵野技術専門校(現キャリアカレッジ)建築設計科卒業。1993年にあるて工房建築設計室を設立し、2002年に戸田晃建築設計事務所に改称。2004年Design it yourself展(OZONE)に参加。http://www14.plala.or.jp/akiratoda/index.html
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