【マイペースに生きる人】第2話:ユーチューバーの暮らしや時間割。これからの夢とは(「OKUDAIRA BASE」主宰・奥平眞司さん)
編集スタッフ 野村
もうすぐ30代。自分と同年代の人たちは、今までにどんな選択があって、今の暮らしをしているのか。そして仕事のことや将来の暮らしのことってどんな風に考えているんだろう。
そんなことが気になって、同年代の方に仕事と暮らしについてお話を聞いてみたいと思いました。
今回お話を伺ったのは、YouTubeチャンネル「OKUDAIRA BASE」を主宰する奥平眞司(おくだいら まさし)さん。第1話では奥平さんがユーチューバーになるまでの紆余曲折についてインタビューしました。
第2話の今回は、どうして就職せずにユーチューバーとしての道を選んだのか、そしてこれからの暮らしについて、お話を伺っていきます。
第1話を読む
月に15万円あれば、幸せに暮らせるとわかった
専門学校を卒業してからは、ずっとフリーランスで働いている奥平さん。就職をしないという選択に不安はなかったのでしょうか。
奥平さん:
「不安はそれほど感じていなかったんです。
デザインの専門学校を卒業してから、進路を決め切らずにゆっくり考えようって思っていました。アルバイトをしつつ、デザイン系の仕事に携わりながら暮らしていけたらなぁとぼんやり考えているくらいで。
そんな選択ができたのは、自分の幸せの重点について、整理して考えたからかもしれません」
奥平さん:
「1ヶ月どのくらいの生活費があれば幸せに暮らしていけるのかなって分かっていると、分かっていない時よりも不安はなくなります。
当時、生活費は月15万円以内って決めて暮らしていたので、アルバイトで月15万円以上の稼ぎがあれば、暮らしを楽しみながら自分のペースで生きていけるって思ったんです。
朝起きて、朝ごはんを作って食べて、掃除をして、お昼ご飯を食べて、という家で過ごす暮らしの時間がすごく好きで。ここさえ守られれば、あとは何しても大丈夫だなって気持ちがあったんです」
アルバイト生活から、ユーチューバーに
奥平さん:
「YouTubeにあげた動画がヒットしたのは、デザイン学校での卒業制作を終えた3日後のことでした。
このときに、もしかしたら動画の配信で収入を得られるのかなと思って、自分の動画に広告をのせて収益を得られるアドセンスプログラムに登録してみたんです」
奥平さん:
「1ヶ月ほどで無事にその審査にも通って。でも、動画配信で収入を得られるようになっても、しばらくは月15万円の収入を確保できるアルバイトは続けていました。
動画配信もコツコツ続けていると、自分のあげた動画を観てくれた企業の方が動画制作のお仕事をオファーしてくださったりと、動画がきっかけで仕事の幅が広がって。だんだんとユーチューバーとして生計が立てられるようになりました」
ユーチューバーの時間割
自らの暮らしのことを発信しているからこそ、仕事と暮らしが明確に分かれていない、そんな日々を過ごしているであろう奥平さん。
どんな風にメリハリをつけて暮らしているのかを聞いてみました。
奥平さん:
「1日の時間の使い方と、1週間のスケジュールにある程度ルーティンを作っていて、そこから外れて無理をしないようにしています。
たとえば、1日のざっくりとしたスケジュールには、朝は必ず5時に起きる、17時以降は基本的に仕事のことはしない、22時までには布団に入って寝る、というふうに流れがあります。
フリーランスで決められた時間もないので、やろうと思えばいくらでも仕事ができちゃうのですが、おおまかでもルーティンを持つことで1日の生活リズムが整います」
奥平さん:
「1週間のスケジュールも、ある程度決めています。ひとり暮らしの時は、火曜日と水曜日の2日間は何もしない完全にお休みの日と決めて、残りの5日間は仕事の日としていました。
仕事の日は、1日から2日かけて撮影をして、もう1日を動画編集にあてるっていう流れが自分の中にあって。その流れを守って無理をしないように意識しています。
もし無理をして、スケジュールを詰め込みすぎたり、内容的にも自分がちょっとでもやりたくないとか、ネガティブな気持ちで撮影をすると、映した映像がわざとらしかったり、乱れていたりして。
自分が好きだって思ったことを、視聴者のみなさんも一緒に楽しんでくださっていているからこそ、自分自身が自然体でいることがすごく大事だなぁって思うんです」
ふたり暮らしになって、工夫したこと
今年の春には引っ越しをしたという奥平さん。暮らしやルーティンにはどんな変化があったのでしょうか?
奥平さん:
「パートナーと2人暮らしを始めるために引っ越しをしました。
お互いフリーランスで働いていてスケジュールも流動的なので、今はひとり暮らしの時のように何曜日が休みの日とは決めていないのですが、1週間の中で何もしない休みの日は必ず設けるようにしています。
でも1日のルーティンは決まっているので、ひとり暮らしの頃から多く変わったことは、実は今のところあまりないんです」
奥平さん:
「すごく自分の理想に近い家だったのでこの家に引っ越しを決めたんですが、一箇所だけ気になっていたポイントがあって。
この家は収納スペースが少なくて、押し入れ一つしかなかったんです。果たして2人分の持ち物がちゃんと収まるのかなって心配でした。
でも、押し入れの中に追加でDIYで収納棚を増やしてみると、スペースに余裕が生まれて、ちゃんとものが収納できたんです。
最初は悩んでいたのですが、住んでみて工夫をしてみれば全然大丈夫だし、このスペース以上にものを増やさないようにしようっていう目安にもなって、むしろ良かったと感じています」
奥平さん:
「僕はこういう、不便なことをどう改善していくのかを考える時間が好きなんだって思います。
例えば狭い部屋だと、置き場所や動線のことを深く考えて配置しないと、うまくまとまりません。でもそうやって不便なこととどう付き合っていくかを考えることこそが、暮らしの豊かさだなって思います。
だから広い部屋ももちろん良いんですが、狭い部屋には、その空間をどう居心地よくしていけるかを考える余地がよりたくさんあって、そんなところが好きなんです」
今と変わらないこと。それが目標
最後に、奥平さんにこれからどんな風に暮らしていきたいのかを尋ねてみました。
奥平さん:
「この暮らしを大事にして、楽しんで、今までと変わらず過ごすことができればいいなと考えています。あと今はキッチンツールのデザインもしているので、この仕事も続けていきたいなって思っているんです。
僕自身、良い道具を買ったことで、料理そのものがすごく楽しくなった経験があります。
きっかけになった道具は今も愛用している、藤次郎プロの牛刀包丁。それまで使っていた包丁とは明らかに切れ味が違って、包丁ってこんなに切れるんだって感激して、料理で野菜を切るのが楽しくなっていったんです」
奥平さん:
「今は動画で暮らしのことを発信するのがメインですが、それと合わせて、僕が実際に暮らしの道具をデザインして作って、それがお客さんに届いて、その道具がきっかけになって手にした人たちの暮らしがもっと楽しくなる、そんなものを作っていけたらと思うんです。
僕が牛刀包丁で感動したように、道具一つから暮らしのことが楽しくなることはきっとあると思います。
なので、そんな体験のお手伝いができたら、すごく嬉しいなと思うんです」
***
幸せの重点は、自分が心地よいと感じる暮らしのこと。
そんな思いを一貫して自身の中に持っているからこそ、そして暮らしに関わる時間やお金のことについて、整理して把握しているからこそ、奥平さんはぶれることなく今のユーチューバーとしての道を選択して歩んでいるんだと感じました。
自分の身の回りのことを分からないままにしておかない。そんなシンプルな考え方を持つことで、暮らしと仕事がちょっとスムーズにまわったり、不安な気持ちもちょっと和らぐのかもしれません。
(おわり)
【写真】奥平眞司
もくじ
奥平 眞司
YouTubeチャンネル「OKUDAIRA BASE」主宰。愛知県出身。福祉系大学卒業後、桑沢デザイン研究所夜間部にて空間デザインを学ぶ。YouTubeでは、料理やDIY、物選び、整理整頓、家族や友人を招いてのもてなし、一人キャンプや旅行など、自分の時間をとことん楽しむ方法を配信。動画制作、キッチンツールのデザインなども行っている。
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