【いそがない部屋づくり】第2話:誰でも好きなところにいればいい、立ち寄り所みたいなリビング
ライター 長谷川未緒
設計士の友人と一緒にプランを立てながらリノベーションしたという料理家の柚木さとみ(ゆぎ さとみ)さん宅を訪問している特集「いそがない部屋づくり」。
第1話では、築47年の古家との出会いから、理想の住まいに向けたリノベーションについて伺いました。第2話では、玄関から家の中心ともいえるリビング・ダイニングについてお話を聞きます。
玄関を見て、この家に住みたいと思った
更地にすることが前提の土地に建つ古家に惹かれ、リノベーションを決意した柚木さん。
そのきっかけともいえるのが、ドアの両脇にはまったガラスブロック。古いガラスが持つ独特の歪みや文様、色のゆらぎが印象的です。
重厚なムードのある三和土は、ご主人のDIYなのだとか。
柚木さん:
「この家をスケルトンにしたときに出た廃材を、設計士の友人が三和土に使っては、と。
廃材を切って並べ、間にモルタルを埋め込む作業をふたりがしてくれました」
靴箱は、「gleam(グリーム)」のもの。インドネシアで廃材を使った家具づくりをしているブランドで、柚木さんの高校時代の同級生でもあります。
存在感があるのに、風通しのよさも感じさせてくれるのは、サイズに秘密がありました。
柚木さん:
「ひとつの家具として存在させたいと思ったので、靴箱の両側に余白を残す大きさにして、作り付けの雰囲気が和らぐようにしました」
▲上がり框は斜めにカットすることで広さを確保。
古い家が好きというだけあって、じつはいままでに2回も立ち退きにあっているという柚木さん。セルフリノベーションしてアトリエとして使っている家も築年数が経っているため、いつどうなるかわからないといいます。
玄関を広めに取ったのは、いざとなったら料理教室ができるように。廊下に手洗い場がついていました。
階段はスケルトンで、明るいリビングに
もともとの家は、玄関を開けたら正面に、2階に上がる階段がありました。リノベーションでは、大改造してリビングの中にスケルトンの階段を設置することに。手すりのアイアンがインテリアのアクセントになっています。
柚木さん:
「床面積は必要ですが、いまの形にしてよかったです。上を吹き抜けにしたので1階が明るいですし、猫が階段を上り下りしたり、ソファーにジャンプしたりするのをリビングから見られるので、楽しいんですよ」
▲階段の下部は収納にして、キャンプ用品をしまっています。
リビング・ダイニングは、階段の上部から差し込む日の光と、庭に面した窓からの日差しで、住宅密集地の1階とは思えない明るさです。庭には古い梅の木があり、隣家とのいい目隠しになっています。
柚木さん:
「去年、剪定したので今年は実があまりならなかったんですが、例年、たくさん採れるので梅酒をつくっています。庭はまだきちんと手を入れられていないものの、身近に自然を感じられるのはいいですよね」
食事をするだけでなく、ときには原稿書きなども行うというダイニングテーブルはヴィンテージで、広げると楕円になる、エクステンションテーブルです。
こういうタイプのテーブルをずっと探していて、見つかるまでは友人から借りたテーブルを使っていたそう。
▲柚木家の愛猫、「くう」と「ねる」。(写真:柚木さん)
柚木さん:
「間に合わせで買うと、結局は気に入らないし、すぐ使わなくなるんですよね。
最初にひとり暮らしを始めたときも、冷蔵庫ひとつしか持っておらず、ベッドもなかったので床に寝ていました。
長く愛せるものをじっくり探し、見つかるまでは不便でいいと思うタイプです」
先述した靴箱も、暮らし始めてすぐはまだなく、玄関に靴をそのまま並べていました。
どういう家具が自分の暮らしにフィットするのか、住みながらゆっくり考えても、遅くはないということでした。
みんな好きなところに座ればいい
柚木さん宅のリビング・ダイニングを見回すと、夫婦ふたり暮らしにしては椅子が多いことに気がつきます。ダイニングチェアしかり、キッチンの作業スペースにもスツールがあって、ソファーにと、くつろぎスペースがたくさんあります。
柚木さん:
「そうかもしれませんね。いまはコロナの影響で少なくなりましたが、友人がごはんを食べによく来るので。
『みんな勝手に飲んでね』と、クーラーボックスを出しておいて、立ち寄り所みたいなイメージで、座りたいところに座ってほしいなと思っています」
ベンチのようにすっきりしたソファーは「グリーム」のもので、飲んだ人がうたた寝してもいい長さにしたそう。
ソファーの横にあるひとりがけ用の椅子はキャンプ用で、「オンウェー」。キャンプにも持って行くし、座り心地がいいので家の中でも便利に使っています。
猫のように、そのときどきで居心地のいい場所を見つけてくつろぐことができる、柚木さん宅のリビング・ダイニングは、自然光が入り、木製の落ち着く家具に囲まれていました。
いっぽう、リビング・ダイニングからひと続きのキッチンは、明るいグリーンのタイルやぐっとしまった黒が。そのギャップがあるからこそ、インテリアが引き立つのかもしれません。
続く第3話では、料理家という仕事柄、おしゃれなだけではなく使いやすく整えられたキッチンをご紹介します。
【写真】MEGUMI
もくじ
柚木さとみ
料理家。大学卒業後、カフェの総括店長を務め、カフェのプロデュースやメニュー開発、大手料理教室の講師などを経験。現在は古民家をセルフリノベーションしたアトリエで料理教室「さときっちん」を主宰しながら、企業やメディア向けのレシピ提供のほか、“食”を含んだ暮らし方の提案を行っている。https://yugisatomi.com
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