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【今宵はひとりで夜更かし】第3話：深夜のラジオを聴きながらドーナツを揚げる

編集スタッフ　津田

夜更かしは、ちょっと特別な時間。

大人になると、ほんとうなら早く寝ちゃったほうがいいんだろうなと、色々な経験からわかっています。でも、だからこそ、たまに夜更かしをしたくなるんです。せっかくなら、明るいうちにはやらないようなことで。

そこで今回の特集では、私がひとりでこんなふうに過ごしてみたいという「夜更かしの楽しみ方」を考えてみました。記事末尾には料理家の瀬戸口しおりさんに教わったレシピも用意しています。

第1話から読む

今宵はひとりで夜更けに
ドーナツを揚げる

もう寝る時間なのにまだ眠たくない。

そういう夜更けはなぜか台所に立ちたくなります。

ひとりラジオをつけて深夜のFM番組を、ごく小さな音量で流しておく。パーソナリティの他愛ない話を聞きながら、戸棚を開けたり閉めたり。「最近のコンビニスイーツは驚くほど美味しくなっている、もっちもちでふっわふわ。さっくさくのこともある。あれは進化だ」という話で目にとまったのは、小麦粉の袋。

オーブンがない我が家でも作れるお菓子……。今宵はドーナツをつくることにしましょう。

生地を捏ね、すこし休ませてからドーナツ型に抜き、発酵のために1時間ほど待ちます。ラジオを流しつつ、昼休みに本屋で見つけた漫画に手を伸ばします。

——（ピピッ、ピピッ、ピピッ）

1時間後。台所にもどり、そっと布巾の端を持ち上げて様子をうかがうと、生地はふっくら。よかった。どうやらうまく発酵したよう。小さな達成感。170度の揚げ油を用意して、こんがりきつね色になるまでゆっくりじっくり揚げます。

揚げるときは生地が膨らんでくっつきやすいので、一度にたくさん入れすぎないように。ぜんたいに粉糖をまぶしたらできあがり。そのまま、ひとくち、ほおばって。素朴な甘さ。揚げたての贅沢です。

気づけば、流しっぱなしのラジオは次の番組に移っていました。秋の星空を案内してくれる年配のアナウンサーの声を聞きながら、残りのドーナツを揚げていると、いつの間にか土星の輪っかのようにも見えてくるようで。

深夜にドーナツを揚げるなんて。なんでまたそんなたいへんなことを……と思わなくもないのです。

生地を捏ねたり、油で揚げたり。たしかに体力もつかうし、時間もかかる。けれど「すべきこと」ではなく「ひとりでしたいこと」だから、かんたんすぎてもおもしろくなかったりして。手間はかかるけど、おいしくできてうれしい。その達成感をくれるのが、夜更けの台所に漂う甘い香りなんです。

ぜんぶのドーナツを揚げ終わって、台所も片付け、布巾をぎゅっと絞ると一日のおしまいの合図のよう。ほどよい疲れを覚えて、ようやく眠れそうになってきました。

明日は、この素朴なドーナツとミルクたっぷりのあったかいカフェオレで、絵本のような朝ごはんにできるのもうれしいもの。

それでは今夜もおやすみなさい。

素朴な甘みのドーナツのレシピ

材料（約12個分）

強力粉…120g
薄力粉…120g
きび砂糖…30g
ドライイースト…小さじ1/2
ぬるま湯（35〜40度）…30ml

（A）
・生クリーム…50ml
・バター…20g（溶かす）
・卵…1/2個（割りほぐす）
・お湯（60度）…50ml

揚げ油…適量
粉糖（きび砂糖でも）…適量

作り方

１．小さなボウルにぬるま湯を入れて、ドライイーストと、きび砂糖をひとつまみ（分量内）加えて混ぜ5分ほど置いて予備発酵させる。強力粉と薄力粉を混ぜておく。
２．ボウルにAと残りの砂糖をいれてゴムベラで混ぜる。そこに１の強力粉と薄力粉、イーストを加え、ゴムベラで切るように混ぜる。まとまってきたら、ボウルの中で２分ほど捏ねる。なめらかになったらボウルにラップをして30分ほど置く。
３．生地を1cm厚にのばして、型抜き（あるいは包丁で12等分）して、天板にオーブンシートをしいてのせる。
４．オーブンレンジの発酵機能を使って発酵させる。ない場合は、固く絞ったふきんとラップをして温かい場所で1時間ほど発酵させる。生地の厚みが2倍ほどに膨らんだらOK。
５．170～180度の揚げ油で揚げる。温かいうちに粉糖やきび砂糖をまぶす。

＊作り方２の工程で冷蔵庫に入れて低温発酵させて、次の日に揚げても大丈夫。
＊揚げる時はふくらんでくっつきやすいので２個くらいずつ揚げる。
＊練乳やチョコソース、ジャムをかけても。