【好きを集めた家づくり】第4話:飲食店オーナーがつくるキッチン・ダイニング

ライター 長谷川未緒

その人らしいインテリアで整えられた部屋は、居心地がよく、目にするものすべてが素敵に見えて、ものの持つ背景を聞きたくなります。

特集「好きを集めた家づくり」では、飲食店のオーナーを務めるヤマモトタロヲさんと雑貨店オーナーでコーディネーターの郁美さんご夫妻の家を訪問し、自分好みのインテリアをつくるヒントを伺っています。

第1話では、希望を形にしたリノベーションについて、第2話では、すぐ真似できる廊下のディスプレイ法や寝室のDIYなど、第3話では、ユニットシェルフに合わせて北欧テイストで揃えたリビングと、郁美さんお気に入りのベランダを中心に聞きました。

第4話では、食がメインというこの家の要、ダイニングとキッチンを拝見します。

 

ファーマーズテーブルがダイニングの中心

ヤマモトさん一家は、ふたりのお子さんとミニチュアシュナウザーとともに、築60年ほどのヴィンテージマンションに暮らしています。この家に越す前は同じ階の3軒隣りに住んでいました。「いつかこうしたい」を叶えるリノベーションを施した家は、食が中心です。

タロヲさん:
「飲食店を経営していますし、家族のような友人が食事にくることもあるので、開放的なダイニング・キッチンをめざしました」

ダイニングの中心となるのは、フランスの古いファーマーズテーブル。ふだんはコンパクトですが、付属の天板でテーブル面を広げられるエクステンションタイプです。

タロヲさん:
古い家具なので、エクステンション用の天板はすでにない状態で売られていましたが、自分でつくりました。伸ばせば10人は座れます」

もともと間に合わせで家具を買うことはないものの、より合うもの、より良いものを探そうとする行動力は妻の郁美さんも驚くことがあるそう。

 

使わなくなった家具は、新しい用途を考えてみる

郁美さん:
「いつもいろいろ見ていて、情報量がすごいですね。この空間に対してこれなら合うという感覚が、サイズ感も含めて夫は私よりよくわかっているので、家具に関してはまかせています」

空間に対する感覚が発揮された最近の例が、ソファーの後ろに置いた長椅子なのだとか。

上のお子さんがちいさかったときは寝室に置いてベッドがわりにしていたものです。お子さんが大きくなってきたことと、ふたりめのお子さんが生まれたことで、寝室にはダブルサイズのベッドを入れ、行き場をなくしたこちらが、ダイニングに。

郁美さん:
「ここに置いたら、動線の邪魔になると思っていましたが、置いてみたらすごく便利でした。ちょっと座ったり、荷物を置いたり。後ろにソファーがあるから、背もたれにもなって、第2のソファーになっています。

たまに夫が私とは趣味が合わないクッションを置くことがあるので、そういうときは裏返して柄が見えないようにしています(笑)」

 

水道管をディスプレイに活用?

ダイニングの一角に置かれたタロヲさんの仕事机。右上でディスプレイに使われているパイプは、ベランダに引いた水道の水道管です。床の下を通そうと設計士からはいわれましたが、ディスプレイ用に上にしたそう。

カーテンや雑貨などもかかっていますが、実用も兼ねているのがまな板などのキッチンツールです。

郁美さん:
「木のまな板とかざるとか、乾かしたいものを下げています。

まな板はほかにもたくさんありますが、ここには柄のあるものを中心に吊り下げています」

 

器が多くてもすっきり見えるグルーピングとは?

形や素材、色のトーンを揃えるのが、ディスプレイのコツなのだとか。たとえば黒い食器棚の中には、白い器とガラスが入っています。

土っぽい陶器は、日本の古い棚に、メーカーもののよく手に取る器は、いちばんキッチンに近い食器棚に、色のついた器はリビングのユニットシェルフに、グループ分けがしっかりされていました。

▲作家ものの陶器を中心に収納している、日本の古い食器棚。

▲古いアメリカの食器棚。奥行きが深かったのでタロヲさんが仕切り棚をつくった。メーカーものなどを中心に収納している。

郁美さん:
「うちは棚ががいくつかあるので、分けて入れることができます。もし棚がひとつしかなかったり、いろいろなテイストのものを入れなければならなかったりするときは、植物をそのコーナーに入れると、ちぐはぐした感じが中和されますよ」

グループ分けしたときに、どこにも当てはまらないものや、使用頻度が高くないものは、引き出しや扉のついた棚の中にしまうというコツも、教えてくれました。

 

ありもののキッチンを自分らしくアレンジ

飲食店を経営するプロのキッチンは、どういうものを使っているのだろうと拝見すると、意外にもリノベーション前からあったものを利用していました。

タロヲさん:
「扉とか表面はラワン材で張り替え、取っ手は『ツールボックス』で買ったものに変えましたが、シンクやガス台はそのままです。十分使えますから」

子どもが増えて、食洗機も購入したそう。小ぶりな家庭用で、ぐっと親近感が増します。

シンクの上は、タロヲさんが取り付けた業務用の棚に、毎日使うものを出しっ放しにしています。

郁美さん:
「ほこりも舞うし掃除は面倒ですが、毎日の出し入れと比較すると、やはりよく使うものはオープン収納のほうが楽だと思います」

カトラリーも、さっと使うものはしまいこまずに出しています。

木のもの、シルバーのもの、プラスチックのもの、と素材別に分けることが、バラバラに見えないコツだと教えてくれました。

キッチンには中心に作業台があり、来客時にはみんなで料理することも。作業台の下にキッチン家電を置こうと、計画立てて下にコンセントを通したので、レンジがすっきりと置かれていました。

 

ものを愛する心が素敵なインテリアにつながる

飲食店や雑貨店を経営しているヤマモトさん夫妻は、ときには失敗もしながら、空間づくりの経験を重ねてきました。

古いもの、整いすぎないもの、かわいすぎない、ちょっとユニークなものやシュールなもの、と好みも似ているそう。

ものを捨てられず、断捨離とは無縁という部屋のいたるところに、かわいいものがずらり。ものが素敵に見えて、居心地のいい空間になるのは、ものに愛情があるからこそだと感じた住まいでした。

(おわり)

 

【写真】滝沢育絵

 

もくじ

 

ヤマモトタロヲ
多摩美術大学建築学科卒業後、建築会社を経て料理の道へ。イタリアン、フレンチの店で修行し、2011年独立。ビストロ「aruru」「urura」、ベトナム料理「yoyonam」などを経営。インスタグラムアカウント@yama.taro

山本郁美
雑貨店に勤務し、雑貨のバイイングと店舗ディスプレイを担当したのち、2013年に雑貨と花のお店「pivoine」をオープン。インスタグラムアカウント@ikkyu.y

 

 


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