【今日も、台所にいます】第1話:ジェゲデ真琴さん「ここにいたいような、いたくないような、そんな場所です」
ライター 片田理恵
家にいる時間が長くなるにつれ、一日のうちの多くを台所で過ごすようになりました。スマホを見たり、お茶を飲んだり、仕事をしたり、家族と話したり。台所って料理をするためだけの場所じゃないんだなと改めて思います。
それならば。
台所好きのみなさんは、台所でどんなふうに過ごしているのでしょうか。
日々の暮らしの中で、台所仕事が占める割合はどれくらいなのでしょうか。
ぜひ聞いてみたいと思いました。
伺ったのは調理道具や食器を扱う雑貨店のオーナー3人のご自宅。三者三様の個性あふれる台所で、「台所と私」の関係についてお話しいただきました。全3話でお届けします。
家事も、仕事も、お茶も。一日の半分を過ごす台所
最初にお邪魔したのは、ジェゲデ真琴さんの台所。東京・調布市に住まい兼店舗を構え、アメリカ人のご主人と暮らしながら、生活工芸品とデザイン雑貨の店「LuLu縷縷」を運営しています。
ジェゲデさんの自宅はタイニーハウスといわれるコンパクト住宅。居住スペースはダイニングキッチンと寝室で、合わせて38平米です。そのため料理、食事、お茶、デスクワーク、ネットショッピングなど、公私にわたるさまざまなタスクを行うのは自宅2階のダイニングキッチンで。一日のうちの半分はこの部屋で過ごしているといいます。
ジェゲデさん:
「台所仕事は基本的には好きなんです。でもやることが済んでいないと仕事をしていても気になってしまうし、かといって全部をきちんとやろうとすると時間が足りないというジレンマがあって。
本当は家事の比重をもう少し減らして、体のメンテナンスや勉強のための時間を増やしたいんですよね。だから最近は、なるべく台所にいる時間そのものを減らすようにしています」
使いやすさって、日々変わるから
そんなジェゲデさんの台所をひとことで言い表すなら、ずばり「コンパクト」。
収納を備えたシステムキッチンと、壁に付けた2つのオープンシェルフ、あとは冷蔵庫とゴミ箱だけ。限られたスペースだからといってぎゅうぎゅうに詰め込みすぎず、キッチンツールも調味料もスペースに合わせてすっきりと並んでいます。何がどこにあるか一目でわかり、使いやすそう。
ジェゲデさん:
「そう言ってもらえるのはうれしいんですが、内実はけっこう苦しくて(笑)。欲しいものが入りきらないんですよね。
新しいものを増やすならその分だけ減らさないといけないし、いざ買おうと思ってもこの台所のどこにどうやって収められるか、事前のサイズ確認は必須。いい道具に出会ってもすぐに買えないのはもどかしいです。
その時の暮らしに合わせて使いやすさって日々変わるでしょう? 最近は電気調理器に興味があるので、どうすれば買うことができるか検討中です」
限られたスペースでも台所仕事を効率よく進められるよう、常に使いやすさをアップデートしているんですね。
ジェゲデさん:
「たとえば、よく使うものはしまいこまずに見えるところに置いています。冷蔵庫から食材を取り出したら、そのまま包丁、まな板、キッチンツールと流れるように手にとれる配置にしていたり、普段から飲んでいるお茶や頻繁に食べるオートミールはオープンシェルフの瓶の中に入れ、その時々のブームに合わせて中身をチェンジしたり。
最近は作業スペースを広げて料理の効率をあげるために、シンクに乗せっぱなしにできるサイズのまな板をオーダーしました。カビが心配だったので合成ゴム製のものをチョイス。しばらく使ってみて大丈夫そうだったら、木材に買い替えたいと思っています」
メインの食事を決めて台所仕事にメリハリを
さらにここ1年ほどは、食材の調達や献立の立て方にもひと工夫。スーパーに行く頻度を減らし、生協やネット通販を活用するようになりました。
ジェゲデさん:
「コロナ禍で夫がリモートワークになり、3度の食事を全て自宅で食べるようになりました。
毎回1から作るのは大変なので、温めるだけで食べられるハンバーグやパスタソースを使って、食事の支度が大変になりすぎないようにしています。安全性に納得できて、かつおいしいものはどれだろうといろいろ試しているところ。
その日のスケジュールに合わせて昼食と夕食のどちらかをメインの食事に設定して、調理時間にもメリハリをつけるようにしています」
私の相棒「一台で何役もこなすレミパン」
毎日必ず使う台所の相棒を見せてほしいとお願いすると、出してくれたのは万能フライパン「レミパンプラス」。料理愛好家の平野レミさんが開発したロングセラーアイテムです。炒める、焼く、煮る、揚げるといったさまざまな調理ができるオールインワンぶりは、確かにジェゲデさんの台所にぴったり。
ジェゲデさん:
「今使っているのは2代目のレミパン。これひとつだけでいいというのは、使い勝手はもちろん、収納の点から考えても優秀なんです。浅いフライパンと深い片手鍋、それぞれの蓋を置くスペースを確保するのはむずかしいけれど、これひとつだけならコンロ下の棚に入るから」
台所ともっと気持ちよくつきあうために
今の自分自身にとって、台所は「ここにいたいような、いたくないような場所」だというジェゲデさん。相反するふたつの気持ち、よくわかるような気がします。台所をもっと居心地のいいものにするために少し距離をおきたい、とでも言うような。
ジェゲデさんの進化する台所。「まだまだ満足していません」と笑顔で教えてくれたその先の姿を、ぜひまた拝見したいと思います。
続く第2話では、「Park」の町田紀美子さんが登場。「台所と私」の物語は続きます。
(つづく)
【写真】木村文平
もくじ
ジェゲデ真琴
生活工芸品とデザイン雑貨の店「LuLu縷縷」の店主。竹細工、木工品、漆器など、作家や職人が作りだす美しい手仕事を提案・販売している。アメリカ人の夫と2人暮らし。
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