【好きなものに囲まれて】第1話:インテリアのプロに聞く。飾ることをめいっぱい楽しむ部屋づくり
ライター 大野麻里
好きなものに囲まれた暮らし。憧れはあるけれど、限られたスペースの自宅で満喫するのはなかなか難しいものだなぁと思います。
今回お邪魔したのは、インテリアショップ「IDÉE(イデー)」でディスプレイを担当している小林夕里子(こばやしゆりこ)さんの自宅。リノベーションしたマンションで、好きな家具や雑貨に囲まれた生活を楽しんでいます。
部屋の広さは48平米とふたり暮らしでは比較的コンパクトでありながら、所有しているものの量も決して少なくありません。かといって狭さやごちゃごちゃ感がないのは、さすがディスプレイを仕事にしている小林さんだからこそ。
「たくさんのお気に入りに囲まれた暮らし」のヒントが詰まった小林さんの部屋を、全4話でお届けします。春の新生活や、模様替えの参考にもぜひ。
一人暮らし用に購入したつもりの部屋が…
現在は、夫とふたり暮らしの小林さん。このマンションは、まだ結婚する予定がなかった39歳の頃に、小林さんが個人で購入したのだとか。
小林さん:
「賃貸で一人暮らし用の部屋を探していましたが、気に入る物件にはなかなか住めないなと感じていました。そんな当時、私の周りには、マンションを購入した女性が何名かいたんですね。
同業の先輩方からも『買った方がいい!』と背中を押されて、大丈夫かなとも思いつつ、勢いで購入に至りました。毎月の家賃もそれなりにしていましたし、何より自分好みの部屋がつくれると思って」
▲家具は一人暮らしの頃から使っているものが多く、1個1個のサイズはコンパクト。ソファはイデーのもの
購入当時の間取りは、部屋が細かく分かれた3DK。一人で住むことを考えて、リビングダイニングを広めにとった1LDKに変更しました。
その後、縁あっていまの夫と出会い、結婚することに。引越しは考えず、この部屋にふたりで住み続けることにしたそうです。
小林さん:
「そんな経緯があって、この部屋のベースはほぼ私一人の好みで完成しました。
夫は器のギャラリーで働いているので、結婚してからはとくに食器や、部屋のあちこちにある壺、陶器のオブジェのようなものが増えました。彼は『これが好き』という直感で買ってくるので、それを私が合う場所を考えて配置しています」
居る時間が最も長いダイニングに「お気に入りの風景」を
この部屋をリノベーションするとなったときに、小林さんの強い想いがあったのが、ダイニング横にある飾り棚でした。
小林さん:
「以前の部屋では、飾りたいけれど飾りきれていないものがたくさんありました。だから、壁や棚にアートや雑貨を組み合わせて飾るコーナーを設けて、 “お気に入りの風景” をつくりたかったんです。
そのコーナーをダイニングの横にしたのは、自分がどこにいる時間が多いかを考えて。ダイニングに座る時間が多いのと、以前からよく料理上手な友達が来て、うちでワイワイ料理を楽しむことが多かったのも理由です。
設計の方には『こういう風に住みたいから、ここをこうしてほしい』と手書きで図面を書いて渡しました」
飾り棚は、サイズを自分で測り、家具工場に特注でつくってもらったもの。奥行きが35cmと浅めの、淡いグレーの棚にしました。
小林さん:
「これは職業病かもしれませんが(笑)、雑多なものは見えないようにしまうというのがディスプレイの大前提。飾るものを引き立たせるために、本や書類などは見えないように隠して収納できる場所が必要でした」
濃い色の家具を集めたデスクスペース
最近はリモートワーク中心となり、書斎コーナーで仕事をすることも増えたという小林さん。この部屋を完成させたのはコロナ禍の前。なぜ、わざわざ書斎コーナーを……?
小林さん:
「家で仕事をするという考えはまったくなく、ただ持っていたデスクを生かしたいだけのスペースだったんです。
このデスクは入社後すぐに買ったイデーのもの。10年以上前ですね。当時はこういう赤茶系の家具が好きでしたが、いまは趣味も少し変わって。リビングダイニングのナチュラルな色の家具と、このデスクの色が合わないなぁと思っていました。
かといって寝室にデスクを置くスペースもなく……。ガラス窓のようなパーテーションでリビングの空間を区切って、ここだけ濃いめの色の家具を集めています。まさかこんなに自宅で仕事することになるとは思わなかったので、いまが一番活躍していますね」
▲デスク横のラックはパン屋で廃棄された什器を再利用。土っぽい作家ものの器はここに集約
リモートワークが増えたことで、インテリアにも変化がありました。それは、書斎コーナーにもアートや雑貨を増やしたこと。
小林さん:
「デスクの上に飾った段ボールのアートは、古賀充さんの作品。最近のお気に入りで、パッと顔をあげた時にこれが見えると幸せな気分に。会社ではこの景色は見れないですからね。
アートは趣味というほど長けているわけではないのですが、好きでよく買います。夫婦共に、展示会に行って素敵なものに出会うと、すぐに買ってしまうタイプです(笑)」
年齢や時代の変化で、インテリアの好みも少しずつ変わっていると話す小林さん。それでも気に入っているものは手放さず、上手にグループ分けすることで、統一感のあるインテリアを実現させているのが印象的でした。
続く2話では、ディスプレイの技が光るキッチンを見せていただきます。
【写真】木村文平
もくじ
小林夕里子
こばやし・ゆりこ/大学卒業後、就職したのちインテリアコーディネーターの資格を取得。2007年に株式会社イデーに入社。ショップ副店長を経て、VMD(ビジュアルマーチャンダイザー)担当に。全国の店舗ディスプレイ監修や、ウェブやカタログのスタイリング、VMD講師も務める。個人名義の著書に『暮らしを愉しむお片づけ』(すばる舎)がある。
Instagram:@yuricook
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