【知らない世界へ】後編:自分だけの「かわいい」があれば◎。暮らしのなかでの鉱物の楽しみ方

編集スタッフ 寿山

小さい頃、姉の部屋にあった1つの石ころに、思わず見入ってしまった経験があります。

半分に割られた石の内側は洞窟のようになっていて、びっしりと紫水晶の結晶が並んでいました。見つめるほどにキラキラと光を放つ結晶たちは、角度によってその輝きや表情を変えて、いつまで眺めていても飽きない、小さな宇宙のように思えたのです。

大人になってそんな経験も忘れた頃に、とあるギャラリーで「鉱物Bar」と題した、世界中から集めた鉱物(石)の標本と、鉱物の新しい魅力を紹介している企画展を見る機会がありました。

小さな石の向こうに、無限の世界が広がっているような、見ているだけで心が高揚する、ふしぎな石の魅力をもっと知りたくて現在、実店舗「鉱物bar by 鉱物アソビ」を営むフジイキョウコさんにお話を伺いました。
前編

 

自分だけの「かわいい」を見つける楽しさ

フジイさん:
「お菓子みたいな鉱物といえば、たとえば蛍石(ほたるいし)。世界中でとれる鉱物ですが、カラーバリエーションが豊富なうえ、結晶の形などが産地ごとに個性がはっきりしているので、産地ごと蛍石だけを集めている方もいるほど。

1個が数百円のものもあれば、卵大サイズで100万円以上するものも市場にはあるそう。

でも、鉱物の良し悪しは価格じゃないと思うんです。流行りや周囲の評価を意識した理由ではなく、心底かわいいと自分が感じた鉱物が、自分にとっての良い鉱物だと信じています」

フジイさん:
「研究者になるわけでなく、自分自身が楽しむためのものですから。市場価値としての価格が高いものでなくても、たとえ数百円でも本気で可愛いと思えた鉱物の方が、自分にとって価値ある石だと思っています。

同様に、たくさん数をコレクションすることも素敵なことですが、飾る場所を変えたり、照らす光源を変えたり、1個の鉱物でいろんな魅力をたくさん発見することも、同じくらい素敵なことだと考えています」

誰に評価を求めるわけでもない、自分だけの楽しみ。そんな存在が1つでもあれば、もうそれだけでずーっと機嫌よく暮らしていけそうだなあと思いました。

 

鉱物をずっと美しく、見て楽しむために必要なコトは?

石というと硬く頑丈なイメージがありますが、じつは繊細で傷つきやすいものも多いそう。美しい鉱物を、ずっときれい状態のなまま楽しむ基本を聞いてみました。

フジイさん:
「まずは持ち方ですが、必ず鉱物の標本の端や下を持って、落とさないようにしっかり支えます。このとき結晶面をなるべく触らないのがポイント。結晶面を素手で触ると、油分や指紋がついて、せっかくの美しい表面を汚す恐れがあるからです。

一度ついた汚れは、拭いても取れないものや、かえって結晶面を傷つける恐れもありますから。鉱物の顔ともいうべき結晶面は、なるべく触れないように意識しましょう」

 

おうちで保管するときに大切なこと

▲ライトは「ROUSSEAU」のもの

鉱物にとって一番の大敵は、直射日光とホコリだとか。鉱物を太陽光にかざすときれいなので、つい窓辺に飾りたくなりますが……。

フジイさん:
「鉱物は、全く光がない地界で生まれ育つものなので、自宅で楽しむときは、紫外線が強い直射日光に当てないことが、一番大事です。たとえばお肌もどんなに日焼け対策していても、年々シミやくすみが気になってしまうように、鉱物も直射日光に長年当たっていればツヤがなくなり、なかには退色してしまうことも。

鉱物に光を当てるときは直射日光ではなく、照明器具を使って愛でるようにしましょう。細かなカラーゾーニングや模様が浮かび上がり、よりきれいに見えますよ。

そして埃対策です。たとえば複数の結晶が集まったタイプの標本は、結晶同士の隙間に埃がたまりやすいうえ、埃を取ろうとすると、結晶を折ったり傷つけたりする恐れも。だからガラスケースや標本箱に入れるか、ガラス扉のついた棚に置いて飾るのがおすすめ。ケースや棚に収納することで、破損防止にもなります」

▲ガラスドームは「keinno glass」のもの

フジイさん:
「裸のまま鉱物を飾っていると、日々の掃除の手間がかえって増えますし、ぶつけて破損……なんてことにもなりかねません。ただ鉱物を並べるだけでもきれいではありますが、インテリアから浮いてしまうことも。

たとえば昔の理科室を思わせる理化学ガラスに鉱物を入れて飾ったり、花みたいな鉱物には植物画を、星みたいな鉱物には星図を組み合わせてみたり。基本の取扱法さえ守れば、自由にディスプレイを楽しんでみてください」

 

美しい鉱物を眺めて、あわただしい日常からリフレッシュ

▲夜空に流れるホウキ星のようなスコレス沸石(写真中央)と、惑星のような星形の結晶が特徴的なスターマイカ(写真左上)

インタビューの最後に、フジイさんに七夕にちなんだおすすめの鉱物を紹介してもらいました。

「針のように繊細な結晶が放射状に集まった姿が特徴です。正しい名前は、スコレス沸石といいますが、私のなかでは流れ星と勝手に呼んでいます」とフジイさん。

しばし現実を離れて、こうして空想の世界を楽しむ時間が、大人になるほど必要な気がしています。

少し息がつまるとき、頭からはなれない悩みを忘れたいとき。家のなかに、見つめるだけで明るい気持ちになれる、夢見心地になれる、そんな存在があるだけで、明日も元気に暮らしていけるかも。鉱物という新しい世界が、いまある暮らしを、もっと楽しくしてくれるかもしれないというワクワクを胸に、お店を後にしました。

 

【写真】井手勇貴(4,7枚目)、大沼ショージ(1,8枚目)

 

もくじ

 

鉱物Bar by 鉱物アソビ
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-34-10 204号室
営業時間:木金 14〜LO20時、土日13〜LO19時
定休日:月〜水(祝日の場合は13〜LO19時営業)
Instagram(@koubutuasobi_info)
TWITTERは(@KoubutuAsobi
最新の営業情報はInstagram、Twitterにて随時更新

 

フジイキョウコ

「鉱物Bar by 鉱物アソビ」店主。2008年の初著書『鉱物アソビ』、2010年『鉱物見タテ図鑑』で鉱物ブームを巻き起こし、今までにない鉱物世界を提案する先駆者に。2008年〜は鉱物みたいなお菓子と飲み物を提供する日本初の鉱物Barも始める。2017年横須賀美術館での美術展をはじめ企画展も多数開催。鉱物の魅力や文化歴史を紹介・提案する企画編集執筆や、広告や作品のための鉱物コーディネート等も行う。


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