【60平米の住み続けたい家】1話: ヴィンテージマンションに住んで15年。家族4人で居心地よく暮らすコツ
ライター 大野麻里
家族のかたちや暮らしの変化は、人生にはつきもの。「いつか地元に帰るかも?」「子どもが大きくなったらどうする?」……そんな選択肢が出るたび、家選びに悩む人もいるでしょう。
たとえライフステージに変化があっても「いつも心地よく住みたい」とは、誰もが願うもの。心構えや工夫次第で、住まいはもっと自由になるかもしれません。
そこで今回は、マンション購入後に家族が増えるという大きな変化がありながら、工夫をして心地よく暮らす坂下真希子(さかした まきこ)さんの自宅を訪ねました。
坂下さんがこのマンションを購入し、リノベーションして住み始めたのは15年前のこと。当時は結婚して6年目。夫婦2人の暮らしでしたが、現在は中2の長男、小2の長女と家族4人で暮らしています。
部屋の広さは約60平米。2人暮らしには十分な広さでしたが、家族4人で暮らすには少々コンパクト。「狭さは感じているんですけどね……」と笑いつつも、この家を気に入っていて引っ越しの予定はないのだとか。工夫をして住むようすを拝見しました。
家を買うつもりなんてなかったはずが……
住まいは、郊外にある築50年以上経つヴィンテージマンション。広い中庭には木々が植栽がされていて、それをぐるりと囲むように建物が建っています。
坂下さん:
「たまたまこのマンションの前を通りかかったときに、佇まいに惹かれました。ユニークな建物の形と、中庭のある造りがすごくおもしろくて。検索したら、ちょうど空き物件が出ていたんです。
内見をしたら、キッチンからは桜の木が見え、大きな窓からは緑の景色。もともと家を買う気もなかったのに、一目で気に入って即決することに。当時は家族が増えるかどうかも考えていなくて、2人で住むなら十分だと思いました」
間取りはリビングダイニングと2つの個室(寝室、夫の書斎)がある2LDK。大きく間取りは変更せず、既存の間取りを生かしたリノベーションを行いました。
それから15年。家族も増え、生活スタイルはどのように変わったのでしょうか?
坂下さん:
「夫は長男が誕生した年に独立し、自宅で仕事をするように。仕事柄、サンプルの段ボールがたくさん届くので、スペースをとるんです。さらに2人の子どもも成長したこともあり、いまではもう……場所の奪い合いですよ(笑)。
夫の書斎だった部屋は、中学生になった息子に譲り、2段ベッドを入れました。上がベッド、下は勉強机になっています。娘はまだ私たちと寝ていますが、そろそろベッドも必要ですよね。クローゼットを改造して、2段ベッドを置こうかと思っています」
▲リビングダイニングの奥に見えるのがキッチン
坂下さん:
「正直、狭さは感じているのですが、引っ越さないのはそれほどこの環境が気に入っていて。子どもたちは『狭いからみんなで一緒にいるしかない』と思っているのか(笑)、あまり文句を言われたことがありません。
下の子が中学に上がる頃には、上の子は大学生に。子どもたちがあとどれぐらい家にいてくれるかも分からないですが、できるだけ長くここに住みたいと思っています」
▲取材はリノベーションの設計図や工事前の写真を見せてもらいながら
所有物をぜんぶ書き出して決めた収納計画
リビングにあるテレビや本を収納していた造り付けの棚は、裏側も収納スペースになっていました。奥行きの浅い扉付きの収納になっていて、大容量の収納力です。
▲玄関に近いので、ここには長靴や傘、レジャーグッズなど。空き瓶や子どもたちの本も収納
坂下さん:
「リノベーションを依頼した建築家さんが、偶然にも同じマンションに住んでいる方でした。なので家の造りや生活の導線をよく理解してくださっていて。
靴や洋服のサイズと数、本や雑誌の量、テレビの大きさなど事前に所有物の量をヒアリングしてもらいました。正直、その作業はとても大変だったのですが、『ここにこうしたらいいよ』と細かく設定していただいたので、収納はすごく使いやすいです」
▲もともと押入れだったスペースの扉は外し、白いブラインドを設置。見た目もすっきり
▲ハンガーパイプにS字フックをかけてランドセルも収納
坂下さん:
「家族それぞれに割りあてた収納場所があるので、そこに収めるというルールを守り、ある一定以上は増やさないように調整しています。といっても子どもたちの荷物はやっぱり増えますけどね……。
サイズダウンした洋服や読まなくなった本は人にあげたり、リサイクルしたり、できるだけ循環させて。一番スペースをとるのは夫の仕事の荷物ですが、近くに倉庫を借りてやりくりしてもらっています」
書斎の代わりに、リビングには “誰でも使っていい机”
取材中、娘さんがリビングの机でお絵かきをしていました。この机は、書斎をなくし長男の部屋にしたことで新たに加わった家具だそうで……。
坂下さん:
「夫が用意したものですが、誰のテーブルとは決めていないんです。夫が仕事をすることもあるし、子どもが勉強することも。勉強したい人が勉強するテーブルです。
わが家は子どもたちの勉強机はもともと用意していなくて……というより『置く場所がなかった』というのが正しいのですが。ダイニングテーブルで勉強していました。
結局、この新しい机もリビングにあったほうが宿題も見てあげられるんですよね。親の目が届くところで勉強したほうがゲームなどの誘惑も少なく、うちの子どもたちには合っていたと思います」
「子ども専用」をつくらないで場所を確保
子どもが生まれてからも、“子ども専用のもの” を特別に用意しない、というのは家具だけではないようです。
坂下さん:
「器などもそうですね。子どもが割っちゃうのは仕方ないと割り切って大人と同じものを使わせていました。
もちろん、保育園用に用意しなければいけないプラスチックのコップなどは用意しましたが、家のものは大人用・子ども用と分けていません。そうしないとものがどんどん増えて、さらにスペースがなくなってしまうのも理由です」
▲本棚には子どもの本も一緒に収納。子どもたちがつくったアートもあちこちに
▲こちらは洗面所。「エコストア」のハンドソープで顔もからだも髪も洗っているそう。ものの量を減らす工夫の一つ
この家のほかに、「山の家」と呼んでいる小さな家を山梨県に所有してる坂下さん。キャンプ好きの延長で6年前に手に入れた家で、そちらは約40平米とさらにコンパクト。部屋と同じくらいのサイズのデッキと広い庭があるのだとか。
週末は家族で「山の家」の庭や自然の中でのびのびと過ごし、心のバランスを取っているそうです。
続く2話は、坂下さんが「私の居場所」だと話す、キッチンを拝見します。
(つづく)
【写真】北原 千恵美
もくじ
坂下真希子(さかした まきこ)
アフタヌーンティー・ティールームに勤務し、焼菓子などの商品開発を担当。自営業で働く夫と14歳の長男、8歳の長女の4人家族。ウェブサイト「外の音、内の香」では「〈毎日パンとサラダ弁当〉ときどき〈山生活日記〉」を連載。料理好きが高じて、著書『パンによく合う かんたんサラダ弁当』 (立東舎) も上梓。インスタグラム(@donuts1010)も人気。
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