【わたしのライフワーク】第1話:山の麓の小さな町で、ライ麦畑を育てる。自分らしく人生を歩むには

編集スタッフ 松田

ライフワークとは、一生をかけてする仕事や、作品づくりのこと。

「これが私のライフワーク」、そんな風に言えるものがあったなら、人生はもっと豊かに感じられそう。私自身、ライフワークという言葉の響きに、ずっと憧れがありました。

ライフワークの見つけ方は、もちろん人それぞれですが、興味があるもの、好きなものを深めていった先に辿り着くものというのは共通していそうです。

とはいえ、そもそも自分は何が本当に好きなのか、明確に答えるのは意外と難しいものだとも感じます。

自分が興味があるもの、好きなものとは何か、どんなことに夢中になれるのか。進みたい道がわからなくなってしまった時、誰かのライフワークへ辿り着いた道筋から、何かしらのヒントがもらえるかもしれません。

今回お話を伺ったのは、長野県御代田町(みよたまち)を拠点にクラフト作家として制作活動をしている、上原かなえさんです。

 

浅間山の麓に広がる高原の町、御代田へ

7月中旬のとある日。蒸し暑い東京駅から新幹線に乗り込み、およそ1時間半。目指したのは、避暑地としても有名な長野県軽井沢町のすぐ隣にある小さな高原の町、御代田です。

目的地へ近づくごとに、緑が深くなって、移り変わっていく景色。新幹線からしなの鉄道に乗り換えると、車窓からは、大きく広がる綺麗な青空と、その奥には浅間山が見えます。電車を降りると、カラッとした爽やかな風が身体を抜けていき、思わず「涼しい!気持ちいい!」と何度も言い合うカメラマンの市原さんとわたし。

改札を抜けると、「こんにちは〜。はじめまして!」と、澄み渡る青空にぴったりな明るさと笑顔で上原さんが出迎えてくださいました。

上原さん:
「晴れてよかった。御代田は晴れが多い町といわれるのですが、たまたま今朝までずっと雨だったんですよ。青空の中の浅間山と、ライ麦を見ていただきたかったので嬉しいなぁ」

そう言って、最初に私たちを連れていってくれたのは、浅間山の麓に広がるライ麦畑。上原さんは、地元の農家ルーラルファームの内堀里江子さんが育てるライ麦畑の種まきや草刈り、手刈りによる収穫のお手伝いをしています。

収穫直前というライ麦は、黄金色にピカピカ輝いていて、とっても綺麗。

上原さん:
「毎年7月の中旬頃に収穫するんです。ちょうど来週末が収穫祭の予定で、地元の方や子どもたちに協力してもらって、みんなで刈り取ります。

今年は7月に入ってから雨が多かったから、少し折れてしまっているライ麦もあるけれど。うん、でも大丈夫。ちゃんと綺麗に育ってます。

実の部分は地元のパン屋さんへ卸してライ麦パンになって、私はこの藁の部分、ストローをいただいて、天日干しをして綺麗に皮をむいて、ヒンメリの素材にします」

 

手仕事の魅力を伝えたくて

▲子どもたちと一緒にワークショップで作ったヒンメリ

上原さんは、30代でデンマークに渡って手工芸を学び、帰国後の現在は、御代田町を拠点に、クラフト作家として制作活動を行っています。

そのほかヒンメリづくりを教えるワークショップを定期的に開催したり、地域や福祉施設の方と一緒に地元産のライ麦ストローを商品化して販売するプロジェクトも主宰したり。

活動は多岐にわたりますが、どれも軸となる想いはひとつ。「クラフトや手仕事の魅力を伝えていきたい。これが、わたしのライフワークなんです」と上原さん。

上原さんはどのようにして、このライフワークに辿り着いたのでしょうか。幼い頃のことから振り返って、お話をお伺いしました。

 

小さい頃の夢は、「外国に暮らすこと」

上原さんは、小学校から高校まで、お父さんの故郷である鹿児島で過ごしました。上原さんのまわりには、さまざまな場面でせっせと手を動かす大人たちがいたといいます。

上原さん:
「母はパッチワークキルトの先生をしていました。よく生徒さんと一緒に針仕事をしながら、お茶を飲んだり、おしゃべりしたりして。そんな時間はとても楽しそうでした。

父はサラリーマンでしたが、絵を描くことが趣味で、スケッチブックをずっと抱えているような人でした。仕事から帰ってくると、テレビを見ている私の横顔をスケッチして。その時は恥ずかしくて嫌だなぁと思っていましたが、今思うと懐かしい思い出です。画家を志していた頃もあったようですが、その夢は叶わなかった。それでも生涯、ずっと絵を描き続けた姿が印象的でした。仕事ではなくても、何か夢中になれるものがあるっていいなって、父の姿から学んだことです。

祖母は洋裁店を営んでいました。働き者の祖母の手は、なんだか美しくみえて大好きでしたね。側にはミシンがあったので、いらなくなった生地をもらって、洋服や小物などは自分で採寸して作っていました。『ほしいものがないなら、作ろう』という感覚は、自然とそんな環境の中で培ったのかもしれません」

でも、上原さんが手仕事の道を歩みはじめるのは、もう少し先のこと。このときの夢は、「外国で暮らすこと」でした。

上原さん:
「この頃の文集のみんなの夢コーナーを見ると、『外国で暮らしたい』と書いてあるんですよ。

今自分がいる環境にはない、綺麗なもの、美しいもの、そんなものに囲まれた暮らしに漠然とした憧れがあったんだと思います」

 

時代の流れとともに

上原さん:
「ただ高校を卒業して進路を決めなくてはいけないときに、手を動かして何かを作ることが一番身近で得意だったので、そこを軸に考えようと思って。

田舎だったので、情報源はすべて雑誌だったのですが、そこでデザインというものが職業の分野としてあるんだと知って興味を持って、デザインを学べる東京の美術系学校を受験をしたんです」

手を動かして何かを作る道に進みたい。そんな想いから入学した美術学校。ですが、ちょうど時代は2000年代のはじめ。世の中のほとんどのものが、デジタルな世界に移行していく真っ只中でした。

上原さん:
「時代の流れからは、思いのほか影響を受けるものですよね。自然と、わたしもコンピューターをつかってデザインし、デジタルな作品をつくる分野を専攻して。もちろん、やりがいも感じていたので、アルバイトしていたデザイン事務所へそのまま就職して、グラフィックデザインの仕事に就きました」

 

大きく影響を受けたひと

東京の真ん中で、さまざまな刺激を受けながら、グラフィックデザインの仕事に夢中に取り組んでいた20代半ば。

同じグラフィックデザイナーとして活躍していた先輩、セキユリヲさんとの出会いが、上原さんに大きな転機をもたらします。

上原さん:
「彼女が手がけるグラフィックデザインには、手描きのラインや優しい配色など、なにか懐かしさを感じるようなものがありました。わたしもそこにすごく共感して、憧れて、一緒にお仕事をするようになりました」

グラフィックデザインの仕事の傍ら、セキさんが主宰していた伝統的な工芸技術を取り入れた雑貨づくりをするブランド「サルビア」に、スタッフとして加わることになった上原さん。このことが、自分が好きな分野を再認識するきっかけになりました。

上原さん:
「職人の方の技術の高さ、貴重さに触れて、とても感動して。あぁ、やっぱり私はこういう手をつかって何かを作り出すことが好きなんだと実感しました。

と同時に、いまにも消えてしまいそうな技術があるなど日本の伝統工芸の危機的な実情を目の当たりにして、世の中にもっとこの魅力を知ってもらいたい、発信する側になりたいと思うようになりました」

 

30代で北欧デンマークへ

そうしておよそ10年、サルビアの活動を続けながら、自身も編み物やペーパークラフトのワークショップをひらいたり、本を出版するなど、活躍の幅が広がっていた上原さん。

そんな時、なんとセキさんが突然、テキスタイルの学びを深めるために北欧スウェーデンへ留学に行ってしまったのです。そんな彼女の姿に刺激を受け、上原さんの幼いころに抱いていた「外国で暮らしてみたい」という夢がよみがえり、膨らんでいくことになります。

上原さん:
「うえちゃんも行ってきなよって、背中を押してもらって。

その頃、自分が素敵だなと惹かれるクラフトや伝統工芸が北欧のものだったことや、デンマークには手工芸について暮らしながら学べる学校があると知り、行ってみたい、そこで暮らしてみたいという気持ちが強くなっていきました。

そのとき自分は30歳を過ぎていて。いまの仕事を一旦手放すことになるし、迷いもありました。でも、次の10年を考えた時に、なにか新しいことにチャレンジしてみたいという思いもあって。先輩のセキさんの姿をみて、いまからじゃ遅いって、なにか “枠” を決めていたのは自分なのかもしれないと思って、デンマークへ留学することを決めたんです」

お話の続きは、第2話へ続きます。

 

【写真】市原慶子
【撮影協力】ルーラルファーム


もくじ

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上原かなえ

ペーパークラフトをはじめ北欧につたわる手工芸を研究し、身近な素材で作品をつくるクラフト作家。ライフワークとしてフィンランドの伝統装飾ヒンメリを材料のライ麦から栽培し作品制作をしている。そのライ麦の茎を飲み物用ストローとして加工する「MIYOTAライ麦ストロープロジェクト」を主宰。地元の農家と福祉施設と連携し就労支援につなげる活動している。近著に「上原かなえのペーパークラフト」(ブティック社)他。長野県御代田町在住。御代田産の麦わらは、通販でも購入可能。詳細はこちら→https://ryestraw.base.shop/
Instagram:@kanaeuehara

 


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