【わたしのライフワーク】第2話:北欧とヒンメリの美しさに魅せられて。今できることを少しずつ

編集スタッフ 松田

自分が興味があるもの、本当に好きなものとは何か、どんなことに夢中になれるのか。

自分が進みたい道がわからなくなってしまった時、誰かのライフワークへ辿り着いた道筋から、何かしらのヒントがもらえるかもしれません。

長野県御代田町を拠点にクラフト作家として制作活動をしている、上原かなえさんにお話を伺っているこの特集。

第1話はこちらから

後半は、30代で北欧デンマークへ留学を決めてからのお話です。

 

デンマークに恋をして。いくつになっても学び直せることを知った

先輩の姿に刺激を受け、デンマークへの留学を目標に決めた上原さん。

本業のほか飲食店でアルバイトをして留学資金を貯め、語学学校に通って1年半。兼ねてから憧れていたデンマークへ渡りました。

実際現地での暮らし、学びはどんなものだったのでしょうか?

上原さん:
「街並み、窓から見える家のインテリア、ふとした景色のすべてに大好きな世界が広がっていて。まるで恋に落ちたかのように、デンマークの人の暮らしや生活、文化をできるだけたくさん知りたいと思って、いろんな場所を巡りました。

手芸学校では、寝食を共にしながら、毎日手を動かして、制作に没頭する日々。生徒同士、刺繍や編み物などを一緒に教えあって。学校というと若い人がいるイメージがありましたが、子育てが落ち着いたおばちゃんたちも多かったんです。なかには70代のおじいちゃんおばあちゃんもいて」

▲デンマークへ留学していた頃の様子

上原さん:
「刺繍や編み物など、好きなものが共通していれば、言葉が拙くても、コミュニケーションがとれることも実感して、暮らしの中の身近なもので何かをつくるクラフトの魅力も改めて再発見しました。

現地での生活があまりに楽しく充実していたので、どうにかして延長できないか本気で考えましたが、いくつになっても学び直すことができることも知って、“またいつか、チャンスがあったら来よう” という気持ちをこれから先のモチベーションにして、帰国しました」

 

種ひとつから生まれる、ヒンメリの美しさ

日本へ帰国後も、アイスランドやドイツなど、デンマークで知り合った友人たちに会いに、たびたび機会を見つけては欧州を訪れていた上原さん。

そんなある年のクリスマス、フィンランドの本屋さんの窓辺に飾られていたヒンメリと出会います。

上原さん:
「古い書籍などでみたことはあったのですが、実物を見たのはそのときが初めてだったんです。元来、フィンランドでは五穀豊穣の祈りを込めて、冬至に飾る縁起物として飾られてきたヒンメリ飾り。

これまでいろんな手工芸を学んできた中で、さまざまな素材に触れてきましたが、ヒンメリは、自分で植物の種ひとつから、育てて、収穫して素材をつくる楽しさがあるなぁと思って。種から生まれていずれ自然にも還っていける素材であること、佇まいの繊細さと幾何学的な美しさにとっても惹かれました」


ヒンメリに強く惹かれた上原さんは、フィンランドのヒンメリづくりの第一人者・Eija Koski(エイヤ コスキ)さんのアトリエとライ麦畑を訪れます。

上原さん:
「エイヤさんの旦那さんがオーガニックファームでライ麦をつくり、そのストローでつくる彼女の作品は、その景色を含めて息をのむ美しさでした。

ヒンメリは装飾だけの目的ではなく、なにか神秘的な力を秘めていることを、あらためて感じて。わたしも、自らの手で育てるところから始めようと、畑を借りて、栽培を始めたんです」

ちょうどそのころ、結婚、第1子の出産や子育てを機に、東京から長野御代田へ移住していた上原さん。

ライ麦栽培、自身の作品制作、そして「手仕事を通じて人びとが集う場をつくりたい」という想いからヒンメリづくりを教えるワークショップなどを精力的に行い、上原さんの活動は地元の新聞でも取り上げられて、御代田町の人びとに知られるようになっていきました。

 

今できることを、少しずつ

グラフィックデザインの仕事に邁進した20代を経て、手工芸が好きという自分の興味関心を再発見し、デンマークへの社会人留学。そして、ヒンメリと出会い、その素材を自分で種からつくって、ワークショップでその魅力も伝えて。

夢中になれるライフワークをみつけ、まっすぐ邁進し続けていて、すごいなぁ……と思っていると、「でも、いまは子育てでいっぱいいっぱいなんです」と上原さんがつぶやきました。

第2子の出産を経て、ここ1、2年は子育てと自分のライフワークと両立に悩み、バランスを調整していたところなのだそう。

上原さん:
「子育てそのものは充実しているけれど、自分自身の好奇心をだいぶ抑えている感覚があって。なんだか性格まで変わってしまったような気もするし、あんなことをしてみたい、こんなことをしてみたいと妄想は膨らんでも、自分のために使える時間はどうしても限られてしまうので、実現できないもののほうが多くて。そのもどかしさと戦っている最中かもしれません。

でも、そんなときに思い出すのは、北欧で出会ったおばちゃんたちのこと。自分が好きなもの、大切にしてきたものを絶やさず、いまできることを少しずつでも続けていけば、子育てをひと段落をしたときに、花が開くように楽しめる。だから今できることを少しずつ。そんな姿が心の支えになっています」

 

ほんの少し、肩の荷をおろしてみたら

少しだけ肩の荷をおろして、「自分ひとりで抱え込まないようにした」という上原さん。その中で、うれしい循環も生まれていきました。

上原さん:
「ありがたいことに、御代田町の人々にも、ライ麦畑のことを知ってもらい輪が広がっていきました。想いに共感してくれた地元の農家さんが声をかけてくれて、ライ麦の栽培を委託できることになったり、収穫後の茎を天日干ししてカットして綺麗にする作業をその農家さんのお母様が通われている福祉施設の方が協力してくれることになったり。

ライ麦の茎を、自分のヒンメリ作品の素材にするだけでなく、太くてしっかりした部分を飲み物用のストローとして活用するプロジェクトも地元の方たちと協働ではじまりました」


▲地元の福祉施設の方と一緒に商品化が実現した「麦わらストロー」。麦の茎の内部が空洞になっている特徴を活かして、昔ながらの知恵でストローとして使われてきた。プラスティックとはまた違った優しい口あたりで、使い終わったら土にも還せる

上原さん:
「自分ひとりで抱え込むよりも、いろんな人に教わったり協力してもらったり、その分いまの私ができることでお返ししたりすることで、点と点が繋がって、新しいものが生まれて。

公共性のある、そしてそれぞれが無理なく継続できる形が見つかって、自分の作品づくりやクラフトの探究も、周りの方の協力や、この社会があってこそなんだとも実感しました」

 

ライフワークは、自分を保つための方法

ライフワークという言葉について、上原さんがどう感じているか、改めて聞いてみました。すると、「それはお金を儲けるための仕事とは違った、自分を保つための方法のようなものなのかもしれない」と話します。

上原さん:
「針と糸で麦わらを通していくシンプルなヒンメリづくりの工程には、どんなときも、自然と心が落ち着かせる作用があるなと感じます。手を動かし、立体を築いていくことは、私自身が自分に向き合う瞑想のようなひとときでもあって」

上原さん:
「でも、本を読む、歩く、唄う、踊る……どんな方法でもいいと思うんです。なにかひとつ、心穏やかに過ごす方法を、自分の中に持っておければ、あの北欧で出会ったおばちゃん達のように、強くしなやかに楽しく人生を歩める気がします。

わたしはヒンメリづくりを通して、そんなことを伝えられる場をつくっていきたい。そのことが誰かの役に立てたら、とても幸せだなと思います」

ライフワーク。それは、労力と時間を注ぎ込んでこそ見つかる、すごく特別なもの。上原さんのお話を伺う前、実はそんなふうに思っていた節がありました。

もちろん、思い切った行動力や実行力だって何かを叶えるには、必要になることもあるかもしれません。でも、その力は常に発揮しなくてもきっと大丈夫。

上原さんのおっしゃるように、心穏やかに過ごす方法をひとつでも持っておけば、それがいつか花を開いて、点と点が繋がるように、いつか自然と形としてみえてくる。だから焦らず、まずは自分の気持ちにゆっくり耳を傾けてみることが、自分だけのライフワークをみつける第一歩なのかもしれません。

さて、明日の最終話では、上原さんにヒンメリの作り方を伺います。はじめての方にも簡単に作れる基本を教えていただきましたよ。お楽しみに。

 

【写真】市原慶子(3、12、13枚目以外)
【撮影協力】ルーラルファーム


もくじ

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上原かなえ

ペーパークラフトをはじめ北欧につたわる手工芸を研究し、身近な素材で作品をつくるクラフト作家。ライフワークとしてフィンランドの伝統装飾ヒンメリを材料のライ麦から栽培し作品制作をしている。そのライ麦の茎を飲み物用ストローとして加工する「MIYOTAライ麦ストロープロジェクト」を主宰。地元の農家と福祉施設と連携し就労支援につなげる活動している。近著に「上原かなえのペーパークラフト」(ブティック社)他。長野県御代田町在住。御代田産の麦わらは、通販でも購入可能。詳細はこちら→https://ryestraw.base.shop/
Instagram:@kanaeuehara

 


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