【自分のための家づくり】04:住まいに息づくのはこれまでの人生。今の暮らしと、これからと。

ライター 嶌陽子

子どもたちの独立後、古い家にコツコツと手を加えて作り上げた一人暮らしの住まい。

手仕事作家・ライアー奏者の山下りかさんが2年前から暮らす、そんな家を訪ねています。

第1話では、現在の家との出合いや改装のエピソード、第2話ではキッチン、第3話ではダイニングとリビングを紹介しました。

最終話の今回は、山下さんがこれまで歩んできた道のりを伺いつつ、それがどう今の住まいに影響しているのかを拝見。現在の暮らしや気持ちについても伺います。

第1話から読む

 

アメリカ暮らしでの経験も今の家に息づいて

山下さんは現在57歳。1980年代半ばから雑誌『オリーブ』のスタイリストとして在籍していました。

山下さん:
「(料理スタイリストの)堀井和子さんの連載を担当していたので、定期的に会っていたんです。

堀井さんは1980年代半ばにアメリカに住んでいて、その話をよく聞いていました。海外でしばらく暮らしたいと思った時アメリカを選んだのも、堀井さんの影響があるかもしれませんね」

1990年にニューヨークへ渡った山下さん。途中、サンフランシスコに移り住み、1998年に帰国するまで合計8年ほど暮らしました。

山下さん:
「アメリカで住んだ家は、どれも素敵でした。向こうでは築100年くらいの古い建物の中をきれいにして住む、というのが一般的なんですよね。

何軒目かで住んだマンハッタンのトライベッカ地区のアパートメントは、昔工場だった建物で、天井が身長の3倍くらいあるんです。部屋のところどころに鋳鉄製の柱がばーんとあって、すごくかっこよかったですね。

今のこの家とは全然違うけれど、天井にファンをつけたりしたのも、なんとなくあの時のイメージがあるのかなって。だから何らかの影響は受けているのかもしれませんね」

▲カーテンを下からすくい上げ、フックにひっかけるやり方はアメリカ時代、友人と訪れたマルティニークの宿で見たもの。「いつかやってみたいなと思っていたんです」

 

自分はどうしたい? 今も揺らいでいる途中です

▲玄関横のスペースには、庭仕事用の道具を置いている

アメリカで出会った人と結婚し、2人の子どもを授かった山下さん。子育てをする中でシュタイナー教育に出合いました。

子どもたちはもちろん、山下さん自身も教員養成のコースに通い、現在はシュタイナー教育で取り入れられている手仕事やライアーの講師として活動するなど、深く関わるように。

▲アメリカで買ったりんご収穫用のかごは「子どもたちが現地のシュタイナー幼稚園に通っていた時、中にお弁当を入れて毎日持っていっていました」。今はスリッパ入れなどに使っている

帰国後にパートナーとは別れ、以来子どもたちが通うシュタイナー学校の近くに住むなど、ずっと子どもの成長に合わせて暮らしてきました。2年前、数十年ぶりに訪れた「自分だけの生活」。気持ちに変化はあったのでしょうか。

山下さん:
「いつか子どもと一緒に住まなくなる、というのは漠然とイメージしていましたが、実際に一人になってみると、どうしたらいいの?と思うくらい、最初は戸惑いがありました。

24時間、自分のために使っていいなんて嘘みたいって。一人でごはんを食べるのも久しぶりで、最初は寂しかったですね。

これまでずっと子ども中心にしてきた暮らしを、一から変えないといけない。じゃあ、自分はどうしたいんだろうって。今もまだああでもない、こうでもないって揺らいでいると思います」

山下さん:
「食事も、それまでずっと子どもたちの体のことを考えて、和食中心の健康的なものをと意識していたけれど、一人になって今までと違う食生活をしてみたんです。そうしたら体調が悪くなってしまって。やっぱり食生活は一人になっても前と同じスタイルを続けよう、と思い直しました。

そうやっていろいろ試したりしながら、自分の中で何を大事にするかをあらためて考えています」

 

『こねこのぴっち』のおばあさんのように

取材した日は庭の畑のきゅうりが立派に育っていました。季節の野菜や花を育てるほか、自生するさまざまな野草も食卓に欠かせない存在です。

山下さん:
「ここでの暮らしは、庭と台所が直結しています。大地に生えてくるものを食べている、という実感が持てるんです。それってすごいことだなあと思って」

毎日庭仕事をしたり、去年の春から薪ストーブを設置したので、薪割りもしなくちゃいけなくて。50代でチェーンソーデビューもしました(笑)。

都心に比べて不便なこともあるけれど、その分自分で動くので、体力がすごくつきました。改装時のレンガ運びのおかげもあるのか、筋肉もついたんです。人生の中で今がいちばん健康ですね」

▲あけびの蔓で編んだかご。中には「今年初めて収穫できた」スペルト小麦が

▲洗面所には、庭で採れたびわの葉やどくだみ、よもぎ、バラの花などをお酒に漬けた瓶が並ぶ。スキンケアや虫除けなどに使っている

山下さん:
「絵本の『こねこのぴっち』に出てくるおばあさんや、アメリカの画家のターシャ・テューダーさん。思えば、昔から素敵だなって憧れてきた女性たちは、みんな自分の力で暮らしを切り盛りしながら生きているんですよね。

ここに住むようになって、そういう女性たちにほんの少しだけ近づけたような気がしています」

 

何事も「やってみればチャーミング」

▲左側に映っているのはお手製の垣根。薪割りの際に余った細い枝を積み重ねている

終始、柔らかな声と物腰で話してくださった山下さん。でもその芯には、何にでも挑戦してみようと思う気持ちと、こうと決めたらやり抜く強さがあるのだと思いました。

山下さん:
「スタイリストをしていた頃、『オリーブ』に “やってみればチャーミング” っていうページがあったんです。何人かのスタイリストが持ち回りで担当していて、手作りやメイク、ファッションなど、いろんなジャンルで “こんなことをしてみない?” という提案をしていました。

今でも時々『そうだ、やってみればチャーミングだ』って思い出すんです。

これからの生活はどうなるか分からないけれど、何をするにしてもチャーミングにすることはきっとできる、そう思っています」

全4回にわたって、山下りかさんの住まいをお届けしました。

祖父母の家の土間から着想を得たレンガの床。学生時代に大切にしていた洋書からの収納アイデア。アメリカでの体験に影響を受けたインテリア。そして、たくさんの友人たちの手によって生まれた心地よい空間。

これまで見聞きしたもの、体験したもの、人とのつながりが織りなす家は、まるで山下さんの人生そのもののようです。

人生後半に、もしも自分のためだけの住まいを作れるとしたら、それまで受け取ってきた数々の恵みが息づく豊かな空間がいい。そのためにも、これからの日々をいっそう大切に重ねていこうと思いました。

 

(おわり)

【写真】上原朋也

 

もくじ


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山下りか

ライアー奏者、手仕事作家。雑誌『オリーブ』でスタイリストとして活躍したのち、渡米。出産後、子育てを通じてシュタイナー教育に出合う。 1998年に帰国後、現在は手仕事や竪琴の一種「ライアー」の講座、演奏活動などを行なっている。著書に『季節の手づくり 夏と秋』、『季節の手づくり 冬と春』(ともに精巧堂出版)がある。CD「septime stimmung」も販売中。https://rikayamashita.com/


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