【力を抜きたい日の食卓へ】第二回:旬を手軽に美味しく。そんな事ばかり、冷蔵庫の前で考えている

麻生 要一郎

秋になると、食べたくなるもの。

昔、祖母がさつま芋をおやつに蒸してくれていた事もあり、この季節になると新物が出回るさつま芋が食べたくなる。今はたくさんの品種があるけれど、ポクポクとした素朴な食感の、紅あずまが好き。そう綴りながら、焼き芋屋さんが「いーしやーきいもー」と、家の側を通った時にお小遣いを握りしめて、少し遠くへ行ってしまったトラックを「おいも屋さん、待ってー」と、走って追いかけた事を思い出した。自分の記憶の中で、子供の頃、全力で走った思い出はそれだけである。

もう一つ小さな頃から好きだった、秋の味覚は栗。

子供の頃は随分と偏食で、ショーケースを前に、今はどれにしようかなあと悩んでしまうケーキも、モンブラン一択。当時のモンブランと言えば、スポンジに生クリーム、栗のクリームが絞られ、艶々とした栗の甘露煮が頂上に輝かしくのっているのが定番。今では、形も味わいもお店によって本当に様々なバリエーションがある。繊細な造形の美しいモンブランにも惹かれるけれど、ちょっと疲れたなあという時に、恋しくなるのは、昭和のモンブラン。お正月のおせちも、当然ながら栗金団が好きで、全部自分のものだと言わんばかりに食べる割に、何に遠慮があったのか、大人になったら栗金団をたくさん食べると心に決めていたのもおかしな話。

栗が店先に並ぶと、僕は必ず「栗が食べたい」と母にねだった。食べ方は至って簡単、茹でたものを半分に切って、スプーンでほじって食べる。思い返すと、栗を渡せば一人でほじって食べる、焼き魚を供せば骨一本残し食べられる部分は全て食べ尽くす、偏食の割に食べる世話のかからぬ子供だった。

1袋購入したって、子供が食べる量はほんの少し。余った栗は、母がスプーンで実をほじって、後日、ポタージュにして食卓に並べてくれた。栗の味わいが口いっぱいに広がって、美味しかった事を今でも記憶している。テーブルの上に新聞紙を広げ、その作業をする傍ら、今の美味しそうだからちょうだいと摘み食いをしたのも、今となっては良い思い出。我が家では、栗ご飯よりも、栗のポタージュが、栗を使った料理の定番だった。

外食する時には、母も美味しそうに栗ご飯を食べていたので、きっと栗を剥くのが面倒だったのだと思う。それは僕も同感。

今では、同郷の友人が自宅の栗畑から、良い栗を見繕って、送ってくれるのが秋の楽しみ。几帳面な彼女は、生の栗の他に、綺麗に皮を剥いた栗も詰めてくれる。時折、割れていて出荷できない栗もどさっと送ってくれるのだけれど、それはせっせと茹でて、中身をほじって冷凍したので、いつでも利用可能な状態で出番を待っている。

栗のポタージュ(2人分)
・栗 15個(正味200g)
・玉ねぎ 1/4個
・水 100cc
・牛乳 200cc
・生クリーム 100cc
・顆粒コンソメ 小さじ1
・塩 少々
・黒胡椒 少々
・オリーブ油 大さじ1
・バター 20g

※栗が少ない時はさつま芋を足しても良い。

作り方
1. 栗は茹でてから、半分に切って、スプーンで実をほじっておく。(形は気にしなくて大丈夫)玉ねぎは、みじん切りにする。
2. 鍋にバターを入れて、玉ねぎも入れて透き通るまでよく炒める。栗も加えて、オリーブオイルを大さじ1加えて、全体を馴染ませ水と顆粒コンソメを入れる。沸いたら、牛乳と生クリームを加え、弱火で煮立たったら、バーミックス又はミキサーで、かくはん。塩で味を整える。
3. 仕上げに、オリーブ油(分量外)と、黒胡椒をふる。

***

一緒に暮らしているパートナーは、青森出身という事もあり、鮭には格別の思い入れがある。一緒に買い物へ出かけると、鮭にまつわる何かが買い物籠に入ってくる。鮭のカマ、鮭のあら、筋子。僕のような関東生まれが食べたくなる、塩鮭の切り身やいくらとはちょっと違って、通好みな選び方をする。

秋になると、たくさん並ぶ、秋鮭のコーナー。生の筋子から、自家製のいくらをつけるのも楽しいし、生鮭の食感も好きである。筋子はパートナーと出会っていなければ、きっと手に取る事はなかったと思う。今では美味しそうな筋子を見つけると、食卓に並べようとつい手が伸びる。僕は、おにぎりに入れて食べるのが好き。いくらと違い、ぎゅっとした旨味がある、そんな感じが魅力なのかと思いながら食べている。

先日、自宅の近くにある寿司居酒屋に行った時「太刀魚のホイル焼き」と言うメニューを見つけて、オーダーした。その後、自宅で鮭と野菜を入れてホイルで包んで、焼き上げるととても簡単で美味しい。フライパンでもグリルでも簡単に調理でき、味付けも素材の重なりで美味しく仕上がり、しっかり包んで調理すれば汚れ物も出ない、家庭で作るお魚料理の中では最も手軽な感じがした。魚が苦手なお子さんにも、きっと食べやすい。

味付けをしっかり決めなくたって、柑橘や、ポン酢、醤油、好みの味に仕上げられる。風味を効かせて、バターを入れるなんているのも美味しいし、大人は香菜に少しナンプラーを垂らすのも良い。

秋鮭のホイル焼き(2人分)
・生鮭 2切
・玉ねぎ 1/4個
・しめじ 1/2株
・ミニトマト 2個
・ピーマン 1個
・酒 大さじ2
・オリーブオイル 大さじ1
・塩 少々
・黒胡椒 少々

※この通りに買い揃えなくても、冷蔵庫の余っているものを上手に活用してみて。

作り方
1. 生鮭は塩を振りかけて、半分に切っておく。玉ねぎは薄切りにして、しめじは石づきを取り、ピーマンは輪切りにしておく。
2. アルミホイルを用意して、玉ねぎ、鮭、しめじ、ピーマンと重ねて、両端にミニトマトを置いて、酒、オリーブオイルをかけて、塩、黒胡椒をかけて、アルミホイルを包む。
3. フライパンにのせ、弱火で加熱して、蓋をして弱火で15分ほど加熱したら完成。火傷しないようにそっと器にのせ、レモンを添えて食卓へ。

***

栗のポタージュは、少し手間かも知れないけれど、週末にたくさん作って冷凍しておくのも良いし、ちょっとしたおもてなしにも喜ばれる。

ホイル焼きにハマっているこの頃は、野菜の端っこでもじゅうぶんに存在感が出るから、中途半端な野菜を入れておくコーナーを冷蔵庫内に設けた。大袈裟に言っているが、ただの小さな保存袋の話である。

そして、かつての僕のような食わず嫌いのお子様に頭を悩ませている方もいらっしゃるかも知れない。生野菜は胡瓜しか食べられず、殆どの野菜が好きじゃないとしても、餃子も刺身も食べなくて周りを困らせて、牛乳を飲むのが嫌いでも、ちゃんと育ち、そして大人になる過程で、少しずつ嫌いなものを克服して、食べる事を楽しんで生きている。居酒屋で自ら“冷やしトマト”を注文して食べるたび「今は何でも食べられるようになったよ」と、天国の両親に感謝している。

旬を捉えながら、手軽に、美味しく、そんな事ばかり、冷蔵庫の前で考えている。

 

家庭的な味わいのお弁当が評判となり口コミで広がる。雑誌への料理・レシピ提供、食や暮らしについてのエッセイなどの執筆を経て、初の単行本『僕の献立 本日もお疲れ様でした』(光文社刊)を発行。2022年1月には第2弾『僕のいたわり飯』(光文社刊)も。

Instagram:@yoichiro_aso

 

フォトグラファー。1974年3月東京生まれ。雑誌、単行本で主に暮らしまわりを撮影。 好きな被写体は人物と料理。著書に、17組の人とその人の作った料理を撮り、文章を綴った『人と料理』(アノニマスタジオ刊)がある。他に『まよいながら、ゆれながら』(文・中川ちえ)など。

Instagram:@wakanababa

 

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