【暮らしのみずうみ – 松本便り】第12話:ついつい、忘れてしまうこと。
ライター 桒原さやか
毎日のお風呂で困っていることがあります。
それは、シャンプーの無駄使い。
我が家の子供たちは今、2歳と4歳。一緒にお風呂に入っていると、私がふと目を離した隙に、シャンプーを勢いよく2、3プッシュして、ヌルヌルの感触を楽しんだり、泡だらけにして遊んだりするのです。
もちろん何度も何度も、口酸っぱく言っています。
「シャンプーは頭を洗うものだからね。遊ばないようにしようね」
「これはオモチャじゃないからね、大事にしようね?」と。
それでも、次の日になるとすっかり忘れているのか、楽しさを優先してしまうのか、毎日お風呂場は泡だらけになっているのでした。
ところが先日、そんなお風呂のお悩みがひょんなきっかけで解決することに。はじまりは、スウェーデンに住む義理の母が送ってくれた、子ども用シャンプーでした。届いたのは、BAMSE(バムセ)という、あちらではドラえもんのような存在のキャラクターのもの。
いくつか送ってくれた中で、娘はピンクのパッケージ、息子はブルーのものが気に入ったよう。せっかくなので、それぞれ自分用のマイシャンプーを使わせてみることにしました。
すると、びっくり! 自分のシャンプーがなくなるのはイヤなようで、その日使う分だけ、手のひらにそーっと慎重に絞り出して使うようになったのです。あれだけ無駄遣いしていたのが嘘みたい。それ以来、大人用のシャンプーもぴたりと使わなくなったのでした。
こんなふうに、子どもと過ごしていると、ある日突然ヒュンと風のように悩みが解決して、次のステップに踏み出すタイミングがくるのです。
子どもたちはシャンプー遊びを、なんで止められたんだろう。
ここから、私は何を学ぶことができるんだろうか……。しばらく、うーんと考えていました。
そんなときに、ふっと浮かんだのは、ある夏の日の出来事。
我が家の子どもたちはお味噌汁やスープなどの煮た野菜は食べますが、生野菜はあまり好きじゃありません。お皿によそっても、端の方にちょこんと残ったままになっています。
ところが、ある日を境にほとんど残さずに食べるように。それは、苗からいっしょに育てたきゅうりが大きな実をつけた日でした。子どもたちは立派なきゅうりを見つけて、目を丸くしています。
食べてみる!と言うので、自分で収穫してもらうことに。すると、そのまま何もつけずに、むしゃむしゃ丸かじりし始めたのです。おいしい!おいしい!と言いながら、ふたりは顔を見合わせてなぜか大笑い。その日以来、野菜がお皿に残る回数も減ったのでした。
どんなに説明しても、何度話しても、わかってもらえなかったのになぁ。
自分の目で見て、手を動かして、体験する。やってみる。これ以上に学べることはない、ということなのかもしれません。
シャンプーだって、いくら言葉で伝えても、なんで大事なのかがわからない。野菜だって、実になる過程を自分の目で見たからこそ、食べてみたいと思ったんだろうな。「それは知っているから」と、実際に体を動かすことからすっかり遠ざかっていた自分に気がつきます。
目の前のことにただただ夢中で、まっすぐな子どもたちと過ごしていると、ついつい忘れていた大事なことを思い出させてくれるのです。
次はどんな発見が待っているんでしょうか。教える側のつもりが、日々、多くのことを子どもたちから受け取っています。
ライター・エッセイスト。岐阜県出身。『北欧、暮らしの道具店』で、お客さま係として6年間働いていたスタッフ。退職後、ノルウェーにある北極圏の街、トロムソに住んでいた。現在は長野県松本市でスウェーデン人の夫と2歳と4歳の子どもの4人暮らし。
著書は2023年4月に発売の「北欧の日常、自分の暮らし- 居心地のいい場所は自分でつくる -」(ワニブックス)。その他、「北欧で見つけた気持ちが軽くなる暮らし」(ワニブックス)、「家族が笑顔になる北欧流の暮らし方」(オレンジページ)がある。
instagram:@kuwabarasayaka
撮影:清水美由紀
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