【過去の点をつなぐ】前編:できることをやるしかなかった、39歳はじめての就職(ドムドムハンバーガー 藤崎忍さん)

ライター 花沢亜衣

人生は決断することの連続。迷うこともあれば、これでよかったのかと不安に思うことも……。人生の岐路に立ったとき、なにをもって決断し、そしてそこからどのように行動するのか。

今回は、そのヒントを探るべくドムドムハンバーガーの社長・藤崎忍(ふじさき しのぶ)さんにお話を聞いてきました。39歳ではじめて働きに出て、渋谷109の店長、新橋の居酒屋、そしてドムドムハンバーガーの社長とユニークな経歴を歩いてきた藤崎さん。人生の岐路においてどんなことを考え、決断してきたのか。前後編でお届けします。

 

政治家の妻から39歳での初就職

2017年にドムドムハンバーガーに入社し、その9ヶ月後に社長に就任した藤崎忍さん。「手作り厚焼きたまごバーガー」「丸ごと!!カニバーガー」などのヒット商品を生み出し、アパレルブランドFRAPBOISやBEAMSとのコラボレーションなど新しい施策を打ち出し、ドムドムハンバーガーを急成長させました。

「お嫁さんになることが夢だった」と語る藤崎さん。初めての就職は39歳の時でした。

藤崎さん:
「私の夢はずっと、お嫁さんになることでした。祖父、父と地方政治に関わる家庭だったこともあり、誰かを支えながら家庭を守るような生き方をしたいと思っていました。短大を卒業後、すぐに地方議員を目指す夫と結婚して、彼と家族の暮らしを支えることに専念してきました。

だけど、あるとき夫が選挙に落選し、その後、病に倒れてしまったんです。政治家の妻として生きていくんだと思っていたので、この先どうなるんだろうと思うこともあったけど、そんなことも言っていられない状況でした。食べていかないといけないし、子どももいたので、働かざるを得ない状況になってしまったんです。39歳ではじめて働きに出るというのは、決断というか、もう必然だったんです」

 

渋谷109で出会った彼女たちが価値観を変えてくれた

はじめての就職先は、渋谷109のアパレルショップ。ヤングカジュアル全盛期の時代です。友人のお母さんが経営しているショップで店長として、娘ほど年齢の離れた若いスタッフと共に一緒に働きはじめました。

藤崎さん:
「私は小学校から私立の一貫校に通い短大卒業後すぐに結婚したので、渋谷109で出会った彼女達は、これまで出会ったことのないお嬢さんたちばかり。だけど、彼女たちの自分をかわいく見せる技術やファッションへの情熱に触れ、素直にすごいなと思いましたし、一生懸命な姿がとてもキラキラして見えました。109で働く以上、彼女たちは私にとっては先生とも言える存在。カラコンって何?エクステって何?ドレッドヘアって何?という疑問の答えを全部彼女たちが教えてくれるので、リスペクトしていました。

若い子たちと働くのって大変でしょうとか、どんな風に話したんですかってよく聞かれるんですけど、そういうことはあんまり問題ではありませんでした。

人生初の就職なので、何をしたらいいかもわかんないんですよね。だから、店内は綺麗にしておいた方がいいよねとか、この時間帯はこんなにスタッフ必要ないよなとか、先入観なく疑問点や改善点が見えてきて、それをひとつずつ実行していく感じでした」

 

目の前の小さなハードルを一つひとつ登っていった

とはいえ、立場としては藤崎さんが店長。誰かに迷惑をかけることや彼女たち自身のためにならないと思ったことには毅然と叱り、向き合ってきました。

藤崎さん:
「怒ったことはたくさんありますよ。今振り返ると厳しいと言われることもあるかもしれません(笑)。でも、今もみんな仲良しですよ。

そういえば、こんなことがありました。109の初売りって元旦の朝早くからはじまるんですね。その朝、お店についたら奥でスタッフの1人が寝ていて。どうやら大晦日に遊んでいたけど、遅刻はできないってことで、お店で寝ていたみたいなんです。

遅刻したり、サボったりしたら怒りますけど、そのときは、『しっかり遊んで、仕事もちゃんとするって、すごく偉いじゃん!』と褒めました。ダメなものはダメと言うけど、『いいじゃん!』と思ったら褒める。そんな距離感で、彼女たちと関わっていたので、今でも相談をもらったり、ごはんを食べに行ったり仲良くしています。

初めての就職だとか、年が違う人と一緒に働くとか、懸念になりそうなことはあるかもしれませんが、正直ネガティブに考えている暇もなく、この子たちと仲良くなろうとか、どうやったらお店がもっとよくなるかとか考えると、やらなければいけないことがあって。それに向き合うことの方が大事でしたね。目の前の小さなハードルを一つひとつ登っていくという感じでした」

 

突然の解雇。5年間の経験が支えとなった

“普通”の考えだと、「それはダメ」となりそうなことも、一対一の関係の中でスタッフと向き合ってきた藤崎さん。その後、5年で売上を倍増させるものの、会社の方針の変更により、藤崎さんは突如辞めることになります。

藤崎さん:
「すごく悲しかったですね。スタッフのみんなもすごく悲しがってくれて……。その少し前に夫が2回目の脳梗塞で倒れたこともあり……。人生で一番苦しかった時期です。

でも、いろいろありましたが、感謝もしています。109で店長をやらせていただいたから、お店の経営について知ることができたし、売り上げも伸ばすことができたし、かわいい仲間に出会って価値観も変われましたから。109での経験は本当に貴重なものでした。

何もできなかった私も5年間でいろいろなことができるようになった。その経験と自信が、苦しい時期の支えになったように思います」

 

居酒屋アルバイトから、居酒屋の起業へ

後ろ髪を引かれながらも109を離れることになった藤崎さん。その胸の中には、「いつか109で自分のお店を起業する」という夢が生まれていました。しかし、まずは生活していくためのお金を稼ぐ必要がありました。新橋の居酒屋で働きはじめます。

藤崎さん:
「当時、45歳。エクセルもできない、英会話もできない、なんのスキルもない状態でしたので、就職は難しいだろうということはわかっていたので、だったら自分で起業しよう!と考えていました。当時は、いつか109でお店を出したいと思っていたんです。とはいえ、食いつなぐ必要があったので、得意な料理を活かせるだろうと居酒屋でアルバイトをはじめました。

そしたら、ありがたいことに徐々に常連さんがついてくれるようになったんです。なんでも一生懸命になれちゃう性格なので、時給以上に一生懸命やっている姿を常連さんも見てくれていたんでしょうね。

2ヶ月半くらいした時に、『そこのお店が空くから自分のお店開いたら?』ってお客さんに言われて。最初こそ『109で起業を考えているので』と断っていたんですけど、よく考えたら、当時の109は出店待ちの行列ができていたので、先に飲食で起業しようと思ったんです」

 

私たちは不安だからがんばれる

そこから起業に向け動き出します。事業計画書をつくり、起業資金を借り入れ、お店づくりをスタートさせます。渋谷109を辞めたのが9月。その翌年の5月の25日に新橋に『そらき』というお店をオープンさせました。そのとき一緒にお店をやろうと声かけたのは、渋谷109時代に一緒に働いていたスタッフたちでした。

偶然にも取材の日は、『そらき』12周年の日。オープン当時から手伝い、現在店長を引き継いでいるスタッフの“のりちゃん”から「昨日ちょうど夜メールが来たんですよ」と、そのやりとりを教えてくれました。

藤崎さん:
「彼女からこんなメールが来たんです。

“明日でまる12周年です。明日、死んでも後悔なく生きています。ありがたいことに毎日忙しいです。忙しすぎて顔に出てしまう日もあり、反省の日々です。それだけではないし、たくさん改善したいこともあるんですが、毎日楽しいです。『そらき』を一緒にやろうと誘っていただき、感謝しております。まだまだがんばります。”

そこに私がこんな感じで返して。

“昔、2人で夜な夜な話したことだけど、私たちは不安だからがんばれる。でも、どこかに自信もある。最近、いろんなところで講演をしているけど、その話もよくしている。不安だからより一層がんばる。だけど、自分が大好きで、自分を愛しているから、自分を大切にもできると。体は酷使するけど、自分の良さを知っているから、心を大切にできる。そんなふうに育ててくれて、頑張れるようになった両親に感謝しましょう。”

19歳で出会った彼女も、もう30歳を過ぎて。『お店やりたいんだけど、一緒にやらない?』って言ったときについてきてくれてね。109の時、楽しかったからついてきてくれたのかな。うれしいことですね」

 

ひとつひとつ目の前の仕事に向き合うことの大切さ

お話をしているなかで、何度か藤崎さんの目がうるむような瞬間がありました。渋谷109を去ることになったときのこと、そしてのりちゃんからのメールを読み上げるときでした。

「考える暇もなかった」「必然だった」と言いつつも、そのときどきで決断し、行動してきた藤崎さん。ひとつひとつ目の前の仕事に向き合う姿勢から気付かされることがたくさんありました。

続く後編は、ドムドムハンバーガーへ入社し、社長になるお話。藤崎さんが働く上で大切にしている考え方についてお聞きします。

(つづく)

 

写真:濱津和貴


もくじ

 

藤崎 忍

1966年生まれ。専業主婦から39歳で渋谷109のアパレルショップに人生で初めての就職をし、店長として働き始める。その後、居酒屋の経営などを経て、2017年11月にドムドムフードサービスに入社。9か月後の18年8月に代表取締役社長に就任。著書に『ドムドムの逆襲 39歳まで主婦だった私の「思いやり」経営戦略』(ダイヤモンド社)などがある。

 


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