【やめてみたふたり】後編:「仕事用の自分」から、もっと等身大に。ぜんぜん攻略できないから、面白いんです(筒井 × 小針)
ふだんはせわしなく、仕事と向き合うクラシコムのスタッフたち。ゆっくり、じっくりと、お互いのこれまでを振り返って話す時間は......実はそれほど多くありません。
でも、あらためて話してみると、人となりがもっとわかったり、新鮮な発見が得られたりするもの。そこで、スタッフ同士でインタビュー(というより、おしゃべり?)してみる機会を持ってみることにしました。
今回は、人事企画室で組織作りに携わる筒井と、ストア編集グループで商品ページを作る小針が登場。筒井は2016年、一人目の人事としてクラシコムに入社。小針は2021年入社で、長年の愛読者から「つくる側」になった一人です。
会社のこと、お店のことをそれぞれに見ていたふたりは、これまでどんな試行錯誤を重ねてきたのでしょうか。後編は主に筒井が聞き役となって、小針に色々と質問してみました。
前編を読む「教材を作る人になりたい」という目標ができて
筒井:
小針さんも、活発だった子どもから、中学校から勉強に打ち込むようになったと話していましたね。
小針:
そうなんです。覚えているのは、当時通っていた塾で、「今日こんな参考書を買ってきたんです」と先生に見せたら、「良いものを選んできたね」って褒められたことです。それから、自分がまとめたノートを友達から「貸してほしい」と言われることもあって。
そういった嬉しさが頭に残っていたので、将来は「私も教材を作る人になりたいな」と、大学では教材研究やテスト作成が学べる教育学部に進みました。英語も好きだから、英語教育にまつわる教材を作ろうと。
ただ、当時は就活で自分をアピールすることも苦手で、狭き門の出版社や教科書会社は縁がなく…印刷会社に入りました。そこは税理士試験などの士業向け試験の教材を作る部門もあったんです。
そのタイミングで初めて一人暮らしをすることになり、自分で暮らしを作ることの楽しさを知りました。同時期に「北欧、暮らしの道具店」と出会って、お昼休みに訪れるのが癒しの時間になっていました。読みものから得たヒントを実生活で試すのも楽しくて。
デンマークへ、ワーキングホリデーに。仕事や生活の新しい視点
筒井:
「元お客さま」としての歴史はその頃から始まってるんですね。でも、せっかく教材づくりに関われたのに、そこから転職することにしたのは、どうしてですか?
小針:
もともと作ってみたかった教材とは方針が違っていましたし、残業や飲み会も多くあって。徐々に「これが私のやりたいことなのか? したい生活なのか?」と、もやもやしていたんですね。
友達に相談すると「海外にでも行ってみたら?」って勧められて。すぐ転職してもきっとうまくいかないし、一回リセットして少し羽を伸ばしながら考えてみてもいいかもなと思いました。それで3年目の年に会社を辞めて、デンマークへワーキングホリデーに行ったんです。
向こうで印象的だったのは働き方の違いです。仕事先のゲストハウスのオーナーさんは16時でスパッと仕事を終えて、その後は森へ散歩に行ったり、ピクニックをしたり。働く時はしっかり働くけれど、それ以外の時間は自分の好きなことをして過ごそう、といったメリハリがあって。
素敵な家具や落ち着いた照明の中で同僚とおしゃべりしたり、ゆったり過ごす時間も好きで。空間が、気持ちや心地よさに大きく影響することを実感したのも、デンマークですね。
筒井:
そういうワーキングホリデーから戻ってきたら、仕事選びの目線も変わりそうです。
小針:
そうですね。帰国後はインテリアコーディネートの会社に入りました。
お客様の叶えたい暮らしを一緒につくる楽しさがあり、やりがいも覚えたのですが……「インテリアのプロ」として先生的な立場で的確なアドバイスを求められることが多かったり、実際の自分とはライフスタイルや生活水準が異なるお客様たちを接客したりするなかで、だんだんと「仕事用の自分」という鎧みたいなものをかぶって仕事をしている感覚になったんです。
毎日新しい人を接客して、コーディネートした家具を納品して……という短いサイクルも少し寂しく思えてきて。そんなとき、Instagramで自分の暮らしを発信したら、どんどん楽しくなりました。
筒井:
そこには「仕事用の自分」ではない自分がいたのでしょうか。
小針:
そうですね。筒井さんの日記じゃないですけど、そこで自分の好きなものや内面の弱い部分も含めはきだすことで、自分を保っていた部分があったかもしれません。
その間も「北欧、暮らしの道具店」は変わらず10年近く見続けていて、本当にいつも生活の隣にあったというか……良いアイテムと出会う場所でしたし、YouTubeやポッドキャストなどのコンテンツを楽しむのも生活の一部だったんです。
そんなお付き合いがずっと続いてきてたから、今度は私も、少しでも「等身大な自分」として、そうやって長く関係性が続く仕事がしたいと思うようになりました。
先輩社員がトライする姿に「私もやってみたい!」と背中を押されます
筒井:
実際にお客さま側から「つくる側」になってみて、びっくりしたこととかありました?
小針:
入社して一番驚いたのは、新商品の発売ギリギリまで、みんながバタバタしていることでした(笑)。外から見ていた時は「残業することを前提としない働き方が基本なら、きっとスケジュールもゆったりと組んでいて、全て万全できちんとしてるんだろうな」と思っていたんですけど、本当に当日の朝までテキストを直したり写真を差し替えたりしていて。
筒井:
クラシコム的にはよくある光景でしたけど、やっぱりびっくりしました??(笑)
小針:
しました! でも、仕事を覚えるうちに、みんなが2ヶ月前から商品を担当して、一つひとつと向き合って考える時間を長く設けて、魅力をわかって撮影して…この繰り返しで商品ページが作られているからなんだと納得したんです。
もう一つ気づいたのは、スタッフそれぞれが、いつもトライしていること。私はてっきり、社内ミーティングで「今年はこういう見せ方をして行こう」みたいな方針転換があって、それでみんなが動いていると思っていました。
もちろんそういうケースもありますが、メンバーそれぞれが「このアイテムでは、こういうアプローチをしてみようかな?」と考え続けながら、手を動かしているんです。お客さまとして見ていた頃に、「北欧、暮らしの道具店」の商品や見せ方にはいつも新鮮みがあるなぁ、と感じていた理由の答え合わせができました。
先輩社員も率先してトライしているから、そういう姿を見ると、「私もやってみたい!」という気持ちになります。
ぜんぜん「攻略させてもらえない」から面白いです
筒井:
クラシコムで働くなかで、小針さん自身も感じている変化って、ありますか?
小針:
クラシコムでは4年経って一度も「慣れた」って思ったことがなくて。なんというか、ぜんぜん「攻略させてもらえない」感じです(笑)。
常に新しい商品があって、その開発担当や仕入れ担当者の想いもそれぞれで。これらを自分なりに解釈して、どういう写真で、どういう構成やテキストで紹介していくかを毎回考える。それがすごく面白いんです。
筒井:
でもそれって、厳しいことでもありますよね。等身大だからこそ、自分の感覚がダイレクトに問われるわけじゃないですか。
小針:
そうですね。最初の頃は「このスタイリングで本当に良いのかな?」って夜中にぐるぐる考えてしまって、眠れなかったりもしました。「大好きなお店を台無しにしてはいけない」という気持ちが大きくて……。
でも、アウトプットとフィードバックをもらうなかで、だんだんと「クラシコムとしてのOKライン」みたいなものが掴めてきたかな、とも思うんです。その後も世の中のトレンドやお店自体も変わり続けてますし、みんなもそれぞれにトライしているので、その「OKライン」はずっと更新され続けてますね。
そういうふうに商品担当者の想いを汲みとったり、お店としての良いアウトプットを模索する一方で、「自分」が率直に感じた気持ちも大事にしています。
筒井:
たとえば、どんなふうに進めるんですか?
小針:
「せいろ」のページを担当した時のことが印象に残っていて。実は私、せいろを使ったことがなく……料理も得意というわけじゃないんです。
特に自分とは距離があるアイテムのときは、まずはプライベートで使ってみます。チーム内でも「担当商品と仲良くなることから始めよう」と言ってるのですが、毎日のように使うとレパートリーも増えてきて、こんなに簡単で色々使える道具なんだと実感したんです。
自分が初めて使った時に感じたことや、使い続けるなかで困ったことは、きっとお客さまも同じ思いをするはず。仕入れ担当からも「初めての人にこそおすすめしたい」と聞いていたので、その視点を商品ページにも反映させて、まず使い方から紹介するような構成にしたんです。
筒井:
色々伝えたい要素がある中で、それをどう組み立てて伝えるのかは、インテリアコーディネーターの接客経験も活きていそうですね。
小針:
確かにそうかもしれません!「お部屋を広く見せたい人」なら空間に抜けを作ることが大事なので家具のサイズ感の話から始めたり、「小さなお子さんやペットがいる人」ならお手入れのしやすさなどの機能面をまず伝えたり。
今も同じで、「このアイテムを届けたい人ってどんな人だろう?」と想像して、その人に伝わるように組み立てる。そういった構成を作るのは好きなところですね。振り返ると、学生の頃に「教材を作りたい」となったのも、学習者のレベルに合わせてわかりやすく伝えることの大切さや面白みに触れていたからなんだろうなぁ、と思いました。
等身大だけど、役割にも変化が出てきたところです
筒井:
今後、小針さん自身がやってみたいことはありますか?
小針:
年次が上がって、関わる人が増える案件も任されるようになりました。そういう時に、リーダーシップを発揮するのは正直まだ苦手です。現場で自分が判断しないと進まないこともあるんですけど、そういうのが苦しくて…。
筒井:
自分が眠れないくらい一生懸命に考えて、良いページを作るという役割から少しずつ変化しているのかもしれませんね。
小針:
それもまだまだやりたいです(笑)。でも同時に、自分ひとりだと出なかったアウトプットが生まれる現場もあって、それを楽しめるくらいに成長したいなって思います。ただどんな案件でも軸がしっかりしてないと判断もブレブレになっちゃうので、じっくり考えるような時間も大事にしていきたいですね。攻略させてもらえないクラシコムの面白さを、もっと楽しんでいきたいです。
(おわり)
【写真】川村恵理
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