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【暮らしのみずうみ – 松本便り】第20話：「どうやるか」よりも大事なこと。

ライター　桒原さやか

子どもにはのびのび自由に育ってほしい。

そう思いながら、子どもたちと日々過ごしています。

でも、ある日、ふと思ったんです。

「のびのび自由に育つ」って、どういうことなんだろう …… と。一度考えはじめたら、どうも答えが出てきません。

そもそも、これを考えるきっかけは、自分に迷いがあったから。子どもに対して、どこで怒ったらいいのか、何を教えてあげたらいいのか、一歩踏み出す前にためらいがあることに気がついたのです。

どうしたものかなぁと、しばらく心の中でぐるぐると転がしていました。すると先日、庭の草むしりをしていたときに、これだ！というものがスッと降りてきたんです。

それは、「のびのび自由」というのは、私にとっては「自分で決める」ということなんじゃないかと。

え、どういうこと？と思う方もいるかもしれません。でも、これがわかった瞬間、いろんなことが腑に落ちて、子どもに教えてあげたいことも、自分がすべきこともはっきりと見えてきたんです。

例えば、自分で決めるには、まずは自分で考える力が必要だよね、とか。それに、考えたことを言葉にして相手に伝える練習もしなくちゃね、とか。また、自分で決められるように、できるだけ子どもたちには選択肢を増やしてあげたいなぁ、とか。

今までふわふわ漠然としていたものが、急にカタチを成して、目の前にドンッ！と現れたような気持ちです。

わかっている気でいたけれど、「その言葉の意味を自分がどう捉えているのか」、それがわかっていなかったのかもしれません。自分のものにしていないという感じでしょうか。

子育てにも「真ん中の軸みたいなもの」が必要で、私の場合、それがないと迷ってしまうものなんだなぁと痛感する出来事でした。でもこれって、子育てに限らず、仕事にも、家事にも、もしかしたら人生にも通じることのような気がします。

そういえば、夫が以前働いていたデザイン事務所に、ベテランのデザイナーの方がいました。

彼は作業に取り掛かる前に、数日かけてデザインの方向性を考えるのだとか。ときには、1週間から2週間かかることもあるのだそう。そして、方向性が決まったら、実際に作業するのは、ものの2〜3時間くらい。これで大体のところは完成してしまうらしいのです。つまり、大事なのは、その作業よりも、「道筋がはっきりとわかっていること」なのかなと思います。

これこそ、プロの仕事だわ〜と感心しつつも、プロだってそれくらい時間をかけて考えてからしか、作業の手を進めないんだと思うと、背筋がスッと伸びるのでした。

何かがうまくいかないと、なんとか早くこの状況から抜け出したくて、その場でジタバタもがいてしまいます。でも、これからは、何かうまくいかなかったり、迷うことがあったら、エイッ！と勇気をふり絞って出発点まで立ち戻ってみよう。ちょっと堅苦しいですが、自分はどこに向かいたいのか？　これをする目的は何なのか？　一から考えてみよう。

遠回りをしているようで、そのほうが近道だということも、最近ようやくわかってきたところなのです。

桒原さやか

ライター・エッセイスト。岐阜県出身。『北欧、暮らしの道具店』で、お客さま係として6年間働いていたスタッフ。退職後、ノルウェーにある北極圏の街、トロムソに住んでいた。現在は長野県松本市でスウェーデン人の夫と2歳と4歳の子どもの4人暮らし。
著書は2023年4月に発売の「北欧の日常、自分の暮らし- 居心地のいい場所は自分でつくる -」（ワニブックス）。その他、「北欧で見つけた気持ちが軽くなる暮らし」（ワニブックス）、「家族が笑顔になる北欧流の暮らし方」（オレンジページ）がある。
instagram：@kuwabarasayaka

撮影：清水美由紀

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