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【暮らしのみずうみ – 松本便り】第24話:いつもの大晦日。
ライター 桒原さやか
祖母は商店街にある小さな化粧品店を営んでいました。
家の一部が店舗になっていて、店の奥の小上がりを進むと、祖父母の暮らす台所と居間へとつづくのです。
祖父の定位置は、居間のすみっこに鎮座する、肩たたきマシーン。そこにずっと座っていて、みんなでおしゃべりしていると、いつの間にかうつらうつら……舟漕ぎをはじめます。
誰からともなく「おじいちゃん寝ちゃってるー」と言うと、「おじいさん! おじいさん!」とすぐさま祖母が叩き起こすのも、桒原家ではお馴染みの風景。
ちゃきちゃき働き者の祖母と、物静かでのんびり屋の祖父。
孫ながら、いいコンビだなぁといつも思っていました。
小さなころからずっと、年末年始は祖父母の家に向かうのがお決まりでした。
食事の支度をしているうちに、私と姉はちょっとお店に出て、口紅を試してみたり、クリームを顔に塗ってみたり。そうこうしているうちに、ご馳走がテーブルにずらりと並びます。
必ず登場するのは、手巻き寿司。
商店街のスーパーにある魚屋さんで働いていた祖父は、おめでたい日にちょっといいまぐろやサーモンのお刺身を用意してくれます。普段はのんびりしているのに、包丁を握ったとたん、背筋がシュッと伸びて、職人の顔になるのを見るのが好きでした。祖父の手は大きくて、ガサガサしていて、いつもちょっと魚の匂いがするのです。
また、お雑煮も楽しみのひとつ。
岐阜の実家の方では削りたての鰹節が欠かせません。鰹節を削るのは子どもたちの仕事で、私と姉はいつも競うように、必死にくるくる削っていました。
具は餅菜と呼ばれる小松菜に似た葉野菜と、角餅だけ。その上から見えなくなるくらい、たっぷりの削りたての鰹節をのせたら出来あがり。鰹出汁のい〜い匂いがして、あの香りを嗅ぐとお正月だなあと、しみじみ感じます。
そして、数あるご馳走の中でも、いちばんの人気は田作り。え、田作り?と、びっくりした方もいるでしょうか。
ふつうは小鉢くらいの大きさで十分なはずが、「おいしいおいしい!」と何度も言っているうちに、お重2個分、めいっぱいの田作りを祖母が作ってくれるようになりました。甘じょっぱくて、ほんのり感じる苦味もまた良く、またひとつ、もうひとつと手が伸びて。
今思うと、祖父母が作ってくれたごはんは、どれもこれも、私たちの好物ばかりだったんだなと思います。
お正月といえば、スウェーデンにある夫の実家で過ごしたことがありました。
あちらでは、年越しの瞬間に、それぞれの家から花火をバンバン打ち上げるのが恒例です。
夫にはいつもの正月の風景ですが、私にとってはお祭りのような感じもして、なんだか不思議な気分。年を越した実感がちっとも湧かず、ふわふわした気持ちで年末年始を過ごしていたことを覚えています。
いつも変わらないあの味があるから、一年を振り返ることができて、次の新しい年を迎える心持ちにさせてくれていたんだな。子どものころは考えもしなかったけれど、今ならよくわかります。
さあ、今年もまた、大晦日が近づいてきました。
最近ではお重めいっぱいの田作りを母が仕込んでくれるようになり、娘たちもまた、母特製の田作りが好きなようです。
桒原さやか
ライター・エッセイスト。岐阜県出身。『北欧、暮らしの道具店』で、お客さま係として6年間働いていたスタッフ。退職後、ノルウェーにある北極圏の街、トロムソに住んでいた。現在は長野県松本市でスウェーデン人の夫と2歳と4歳の子どもの4人暮らし。
著書は2023年4月に発売の「北欧の日常、自分の暮らし- 居心地のいい場所は自分でつくる -」(ワニブックス)。その他、「北欧で見つけた気持ちが軽くなる暮らし」(ワニブックス)、「家族が笑顔になる北欧流の暮らし方」(オレンジページ)がある。
instagram:@kuwabarasayaka
撮影:清水美由紀
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